深まりゆく京都。秋の鹿ケ谷で「木島櫻谷 四季の金屏風」に酔いしれる

京都市左京区、大文字山の西麓にある鹿ケ谷はすっかり秋めいて落ち葉がカサコソと音を立て始めてました。その鹿ケ谷にある泉屋博古館では、9月11日から2021 年秋季企画展「木島櫻谷 四季の金屏風 ~京都画壇とともに~」が開催されています。もう間もなく会期が終了となりますが、この秋に鑑賞しておきたい企画展を大急ぎでご紹介しましょう。

日本画家 木島櫻谷(このしま おうこく)

木島櫻谷(1877-1938)は、明治から昭和にかけて京都画壇の重鎮 として全国的に活躍した近年再評価されている日本画家です。京都は三条室町の商家に生まれ育ち、円山四条派を中心とする伝統的な写生派の画技、また叙情性を加えた動物画や人物画を数多く残しています。一時は竹内栖鳳と京都画壇の人気を分けましたが、孤高の気質の櫻谷は昭和8年の帝展を最後に以後展覧会に出品せず、晩年は詩書に親しむ隠棲的な生活を送ったと言われています。

木島櫻谷《秋の孤鹿》大正七年(1918)
木島櫻谷《月下遊狸》大正七年(1918)
木島櫻谷《葡萄栗鼠》大正時代(令和3年度寄贈品)
Ⓒ椿シャタル

「びいと啼く尻声悲し夜の鹿」おもわず松尾芭蕉の俳句を思い出しました。今にも鳴きだしそうな櫻谷の描く「秋の孤鹿」をはじめ、月の下で遊ぶ狸。葡萄の実を頬張るリス。この季節ならではの心憎い演出の作品展示です。またこの愛くるしい作品「葡萄栗鼠」は新所蔵のニューフェイス。

新所蔵 20代、青年期のダイナミックな作品

入口を入って力強く迎え入れてくれる大作《猛鷲波濤図屏風》(明治36年)は20代で早くも京都で名を馳せた時期の作で、大胆で素早い筆裁きで大鷲を捉えたダイナミックな1点です。迫力あるこの作品では、櫻谷は立ったままで筆を走らせ描いたといわれています。

木島櫻谷《猛鷲波濤図屏風》 明治 36 年(1903)Ⓒ椿シャタル

くらしやもてなしの空間における屏風の美

櫻谷が最も充実していた大正時代の半ば、住友家からの依頼で、大阪天王寺の壮麗な近代和風の新本邸を飾るため制作したのが、四双の金屏風です。柳桜、燕子花、菊花、紅梅と四季それぞれの花が彩るその連作は、古典を踏まえつつも、若い頃から研鑽した写生の技、そして優れたデザイン感覚が発揮されています。文展では上位入選の常連で若くして審査員に列せられた櫻谷ですが、展覧会出品作とはまた別趣の、抑制されたなかに典雅で洗練された近代的美意識を感じさせます。一挙に展示された屏風から、京都の中心地室町に生まれ育ち、美術工芸が暮らしに溶け込む上質な生活文化を知り尽くした彼のもうひとつの本領をみることができます。

木島櫻谷《菊花図》大正6年(1917)Ⓒ椿シャタル

木島櫻谷《燕子花図》大正6年(1917)Ⓒ椿シャタル

木島櫻谷《雪中梅花》大正7年(1918)Ⓒ椿シャタル

木島櫻谷《柳櫻図》大正6年(1917)Ⓒ椿シャタル

京都の画家の作品も

この屏風に囲まれた場所にいると花々が香り立つ気配がして贅沢な時間を過ごすことができます。加えて櫻谷と彼を育んだ江戸から近代に続く京都の画家の作品も住友コレクションのなかから紹介されています。会期終了が近づいております。哲学の道にもほど近い場所にある泉屋博古館。秋めいた鹿ケ谷の散策とともに木島櫻谷と出会ってみるのは如何でしょうか。

木島櫻谷《椿図》 大正時代 ©️椿シャタル

展覧会概要

展覧会名: 木島櫻谷 四季の金屏風 - 京都画壇とともに -
会期:2021年9月11日(土)~ 10月24日(日)
会場:泉屋博古館(京都・鹿ヶ谷)
開館時間:午前10時 ~ 午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:一般800円 高大生600円 中学生以下無料
(本展覧会の入場料で青銅器館もご覧いただけます)
20名以上は団体割引20%、障がい者手帳ご呈示の方は無料

主催:公益財団法人泉屋博古館、京都新聞
後援:京都市、京都市教育委員会、京都市内博物館施設連絡協議会、公益社団法人京都市観光協会、NHK京都放送局

泉屋博古館

606-8431 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
TEL:075-771-6411
FAX:075-771-6099
https://sen-oku.or.jp/program/20210911_konoshimaoukoku/