現在開催中の釜山国際映画祭で、Wide Angle部門でワールドプレミア上映される坪田義史監督の最新作『だってしょうがないじゃない』。
「シェル・コレクター」の坪田義史監督が、発達障害を抱える叔父との3年間にわたる交流を記録した監督自身、初の長編ドキュメンタリー作品となる。

メインビジュアルは篠田太郎(現代美術家)作
『Untitled (月面反射通信技術のプランドローイング)

精神に不調をきたした映画監督/坪田義史が精神科で問診を受けたところ発達障害のグループの一つである「ADHD/注意欠如多動性障害」に適合すると診断を受ける。
診断後、坪田が親族に相談したところ、親類に広汎性発達障害を持ちながら一人暮らしをする叔父さん(まことさん)がいることを聞き、発達障害に興味関心を持ち始めていた坪田は衝動的にカメラを持って会いにいく。まことさんは40年 間母子家庭で、8年前に母親の辰子さんを亡くしてからは成年後見人となった叔母の支援のもと、現在は障害基礎年金を受給しながら一人暮らしをしていた。 坪田はまことさんとの時間を過ごしていく中で、まことさん特有の所作や思考に惹かれていくのと同時に「親亡き後の障害者の自立の困難さ」や「知的障害者の自己決定や意思決定の尊重」「8050問題に伴う住居課題」などの難しい問題に直面していく。本作は、障害を抱える当事者同士の友情と葛藤を描いた三年間にわたる交流の記録であり、人と人との寄り添い方を学び合いながら理解を深めていくバ ディムービーです。

《 監督の言葉 》

発達障害とは生まれつきの脳機能の障害で、症状は人それぞれ違います。 40歳を過ぎて診断された自分が捉えるべき「発達障害」とは何なのか? 自分の不注意や失敗の原因をADHDに求めてよいのか?ただ自堕落なだけなのかもしれないと思い悩んでいた頃に、僕の親戚の叔父さんである大原 信さん(以下、まことさん)と出会いました。以降、まことさんの純粋な感性に触れ、「ありのまま」の姿に惹かれた僕は、まことさんの見つめる世界をもっと知りたくなり、交流を深め、撮影をさせていただきました。 約三年間の撮影の中で、親亡き後に障害を抱えながら自立した生活をしていくことの困難さや、高齢化社会における人間の本質的不安と現実に直面することになりました。本作『だってしょうがないじゃない』は、今後の上映活動を通して、見た目では分かりづらい発達障害の「社会的受容性」 への契機にしていきたいと考えています。 僕は、また、まことさんに会いに行きます!
ー監督 坪田義史