シネフィルでは、現在活躍中の監督の過去のお宝、貴重映像なども、「映画監督とCM」などの企画ものと合わせコンスタントに取り上げていますが、2019年はより一度は観ておきたい映像を探しだしてご紹介していきます。

第二弾は2019年に生誕90周年を迎え、問題作「ばるぼら」が手塚眞監督によって実写映画化される事などでも話題を呼んでいる手塚治虫氏の生前のロングインタビューです。

このインタビューはちょうど実験アニメ『ジャンピング』が発表された1984年もしくは、1985年あたりのインタビューと思われますが、自らの作品と日本のアニメ界についてや、実験アニメで世界に打って出る事の大切さなどを、熱く語っている貴重なインタビューです。

この言葉の数々は、アニメにかかわらず、映画やアーティストなど表現を志す人には強く今でも伝わるメッセージです。ご覧下さい。

EXTRA - Osamu Tezuka Talking About Experimental Animations

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*インタビューで九里さんと言っているのは、ヴェネツィア国際映画祭サンマルコ獅子賞。アヌシー国際アニメ映画祭特別書査員賞などを受賞し日本のアニメーションをいち早く世界に拡げた久里洋二さん。また、小林さんは今作を始め手塚作品の多くのアニメーションを担当した作画監督小林準治さんです。

 以下、インタビューで語られている作品『ジャンピング』と非商用アニメ作品として、最初に発表された『ある街角の物語』の抜粋映像です。

『ジャンピング 』

再度、実験アニメに挑戦して、世界でも高い評価を受けた作品

ジャンピング
(C)手塚プロダクション

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第6回ザグレブ国際アニメーション映画祭に出品
/6分20秒/カラー
手塚プロダクション/1984年6月

1984年第6回ザグレブ国際アニメーション映画祭グランプリとユネスコ賞
1985年バリャドリド国際映画祭銀穂賞

一人の少年がスキップしながら通りを歩いているうちにどんどんジャンプが大きくなって町を越え、森を飛び越え、海を越えて、どんどん、高く高く、遠くへ遠くへジャンプして行くことになり、ついには戦争中の国へ--。 ひとりの少年のジャンプがそのまま人類の行く末を見直す神のジャンプとなって行くところが面白い作品です。 全編ワンカット、動画枚数4000枚という驚きに世界が目を丸くして数々の賞に輝きました。

原案、構成、演出:手塚治虫
プロデューサー:松谷孝征
作画:小林準治
効果音:倉橋静男
アシスタント・プロデューサー:久保田稔

『ある街角の物語』

非商用アニメの第1弾として発表された作品

ある街角の物語
(C)手塚プロダクション

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第1回虫プロダクション作品発表会にて公開
/38分/カラー・ワイド 虫プロダクション/1962年11月5日

1963年第17回毎日映画コンクール・第1回大藤信朗賞
1963年第17回芸術祭奨励賞
1963年第13回ブルーリボン教育文化映画賞

街角に貼られたポスターと、クマのぬいぐるみを友達にしている女の子、さらに街灯やその光に誘われる一匹のイタズラな蛾。そんなひとつの街角に存在する生物、無生物のそれぞれのドラマを交錯させながら、そのすべてが戦火に巻き込まれて悲劇的なクライマックスを迎える、という「ストーリー」ではなく「感情」をこそ語るプライベート・アニメーションです。大手企業のための作品でフラストレーションのたまっていた手塚治虫が、自分の作りたいアニメを自分で確認するために作った、ひとつのエチュードといえるでしょう。壁に貼られたポスターにさえ、生き生きとしたドラマを演じさせる。それがアニメーションというものの魔法だと、この作品は改めて教えてくれます。

原案、構成、製作:手塚治虫
演出:山本暎一、坂本雄作
音楽:高井達雄
美術:新井亮
原画:山本暎一、坂本雄作、紺野修司、杉井儀三郎、石井元明、中村和子
動画:林重行、山本繁、桜井百合緒、野木行雄、沼本清海、三浦津菜子、光山勝治
仕上:白川成子、松本和子、渡辺千津子、進藤八枝子、大野静子、鶴田淑子、松本節子、松本双葉、大内充子
背景:半藤克美、大脇章子
撮影:広川和行、佐倉紀行
編集:山本暎一
録音:太田千里、宮本隆
進行:川畑栄一
事務:今井義章、秋山記久恵
演奏:虫プロシンフォニック・オーケストラ
効果:泉司郎

他の手塚治虫の実験アニメなどの情報は下記より