アジアの俊英監督から選ばれた作品10本!
アジア映画の発展を支援する目的で設けられた賞です。
長編映画2本目までのアジア新鋭監督の作品の中から、“アジアの未来 作品賞審査委員会”により、1作品に作品賞が贈られます。また、同部門で国際交流基金アジアセンター特別賞も選ばれます。

アジアの未来部門
作品賞『バードショット』

『バードショット』 監督:ミカイル・レッド

©PelikulaRED, TBA Productions

【アジアの未来(Asian Future)】『バードショット(Birdshot)』

youtu.be

農場の娘マヤは森林保護区に迷い込み、誤って絶滅危惧種のフィリピンワシを撃ち殺してしまう。死骸を見つけた警察が捜査を開始するが、さらに恐ろしい事件が明らかになっていく…。デビュー作『レコーダー 目撃者』(TIFF2013出品)で注目されたミカイル・レッドの第2作は、複数の事件による謎が謎を呼ぶ“森のミステリー”ともいうべきスリリングな一編。フィリピンワシは全長1メートルと現在生存している最大のワシだが、開発で生息地が破壊され、剥製用に乱獲されるなどにより、野生の個体数が200羽以下といわれている。

【監督メッセージ】
この広い世界を歩み抜けようとすると、道に迷うことがあるかもしれません。でも、いずれ元に戻る道を見つけ、落ち着くことでしょう。時には、自分たちは「希望を追求する者」の最後の生き残りだと感じることがあるかもしれません。でも、フィリピンワシと同じように、何とか生き延びるのです。絶滅危機にはあるけれど、決して消滅することのない真実を求めながら。

国際交流基金アジアセンター特別賞
『ブルカの中の口紅』 監督:アランクリター・シュリーワースタウ

©m-appeal

ブルカを被った女子大学生はポップシンガーになる夢を抱いて葛藤している。若い美容師の女性はふたりの男と付き合いながら、小さな町の閉塞空間から脱出したいと思っている。3人の子持ちの主婦はセールスウーマンとしてもうひとつの人生を送っている。55歳の未亡人は電話によるロマンスで性的欲望がよみがえる…。抑圧された4人の女性たちに寄り添いながら彼女たちの自立への葛藤を見据えた、女性監督アランクリター・シュリーワースタウの第2作。シリン役のコーンクナー・セーン・シャルマー(『チャンスをつかめ!』TIFF2009出品)をはじめ女優陣が堅実な演技を披露している。

【監督メッセージ】
私はブルカを着けたことがありません。小さな町にも住んでいません。私の自由を阻害しようとする人もいません。かなりリベラルな中産階級に生まれ、大都市に暮らしています。でも、私の内面には葛藤が常にあり、後ろに引き戻そうとする鎖のようなものを感じるのです。完全に自由だと、感じたことは一度もありません。おそらく自由を夢見る田舎町の女性と、何ら変わらないのだと思います。その女性が秘かに行う反抗は、私の行為でもあります。外からの縛りであろうが、内からの縛りであろうが、鎖は鎖です。

<アジアの未来部門>受賞のコメント

橋口亮輔審査委員のコメント

「私たち審査委員は一作品毎に白熱した議論を交わしました。出品作品すべてが私たちを刺激してくれました。若々しい作品、 熟練した作品、様々なものがありましたが、この部門名にふさわしい一本を選びました。アジアは大きな変革の時を迎えている。こう いうときは素晴らしい作品、才能が現れるもの。来年、再来年、そのすばらしい作り手がまた東京国際映画祭に集まって繋がって いくことになればどんなに素晴らしいだろうかと思いました。出品 10 作品は私たち審査委員にそう思わせてくれる作品でした。」

「アジアの未来」作品賞 ミカイル・レッド監督

「私だけでなく、私のようにいろいろ苦労しながら作品を作っている、みんなにいただいた賞だと思います。そしてフィリピンという国にも いただいた賞だと思います。ありがとうございます。」

国際交流基金アジアセンター特別賞 受賞のコメント

審査委員松本正道さん講評

「コメディと厳粛なドラマ、夢と現実、真実と挑戦、これらの要素が大胆に融合されているこれらの二重構造が、登場人物の女性 が強いられている二重生活に、この映画を見ながら私たちは痛みを楽しみ、喜びを苦しむことを求められた。」

国際交流基金アジアセンター特別賞 アランクリター・シュリーワースタウ監督コメント

「東京国際映画祭に大きな感謝を申し上げます。プロデューサーはこの作品のテーマを信じてくれた。この作品を通してアジアのス ピリッツを伝えることができると思いますし、これがアジアの平和につながっていけばと強く感じています。そしてアジアの女性が一丸と なって平和の光を灯せるようになっていけばいいと思います。」
「アジアの未来」作品賞 ミカイル・レッド監督:
「私だけでなく、私のようにいろいろ苦労しながら作品を作っている、みんなにいただいた賞だと思います。そしてフィリピンという国にも いただいた賞だと思います。ありがとうございます。」

アジアの未来部門 上映作品

『ケチュンばあちゃん』監督:チャン

『エヴァ』監督:ハイム・タバックマン

『I America』監督:アイヴァン・アンドリュー・パヤワル

『底辺から走り出せ』 監督:シエ・シャオドン

『サラワク』監督:プリタギタ・アリアヌガラ

『四十年』 監督:ホウ・チーラン

『八月』監督:チャン・ダーレイ

『雨にゆれる女』 監督:半野喜弘