前回、シネフィルでも情報をお伝えしたマイケル・ムーア監督の新作。
ついに、映画祭に向けての予告が解禁された。

アメリカが銃の問題(『ボウリング・フォー・コロンバイン』Bowling for Columbine, 2002)
対テロ戦争(『華氏9/11』Fahrenheit 9/11, 2004)
医療制度(『シッコ』Sicko, 2007)
経済危機(『キャピタリズム~マネーは踊る~』Capitalism: A Love Story, 2009)を取り扱い、毎回物議を醸すドキュメンタリー映画を創り続けているムーア監督。
今回のテーマも、アメリカにとってもっとも、巨大産業。そして国益がからむ「軍産複合体」をテーマにしているというだけに、、極秘裏に製作されてきたというこの作品。。
予告を見ると、ムーア監督アメリカ国旗を片手に奮闘中の姿が---
タイトルは原題『Where To Invade Next』「次はどこに侵略しにいくか」「次に攻撃するのはどこだ」と訳せばいいのだろうか?
どのように、この巨大なテーマにぶつかったのか本編が気になります!

『Where to Invade Next』プロモーション・イメージ

今作、インタビューでは

マイケル・ムーア: 誰かから「次はどんな作品なの」と聞かれたら、必ずタイトルを応えるんだ。そうすると興味深いことに、いつもでも訳知り顔や苦笑いが返ってくる。いかにもおふざけが過ぎるといいたげにね。どうしてだと思う? このタイトルがあまりにも本質をついているからさ。

ベルリンの壁が崩壊して冷戦が終わると、ようやく軍備拡大とペンタゴン(国防総省)に莫大な予算が投入されることがなくなり平和な世の中が訪れる、そう思って心から安堵したんだ。だけどそうはならなかった。別の敵が必要になったんだ。アイゼンハワーが警告していたように、国家の中核には多数の経済構造と権力構造、つまり「軍産複合体」が鎮座していた。要するに、米国民は終わりなき戦争状態へと突入しているんだ、と思ったよ。常に新たな脅威、新たなブギーマン(お化け)が現れるんだ。このタイトルにしたのは、真実、事実であるとされている物事を否定し、それを皮肉るためさ。1つの物事が終息に近付くと、間違いなくイランやその他の国が新たな脅威の対象として取り上げられる。アメリカ合衆国は人々を、特にアメリカ人をいかに簡単に恐怖に陥れることができる。そこでは、世界から孤立し、世界の文化を知らないこと、つまり「無知」が恐怖をもたらす最たる要因であり、恐怖は憎悪をもたらす最たる要因であるという等式が成り立つ。無知から恐怖や憎しみの感情が生まれ、暴力に至る。人々の無知に付け込んで、人々を無知の状態にとどめれば、次に襲い掛かってくる新たな敵はイランであると教え込むことができる。

次の選挙が終わっても、その方向性は変わらないのでしょうか。

恐怖心をかき立てて戦争を起こしたいヤツは、間違いなくその方向を目指すだろうね。しかしそこには大きな問題が立ちはだかっている。16~35歳の若い世代は、ここ10年から20年の間インターネットを使って生活してきた。だからパスポートを持っていなくても、実際に自分の目で世界を見る機会がなくても、情報にアクセスすることはできる。つまり若い世代は、その前の世代の人々ほど無知ではなく、簡単には騙されないということだ。その現実は、恐怖に基づいたプロパガンダを展開したい為政者にとって大きな障害になるだろう。だから僕は、そのようなプロパガンダを掲げて出馬し、当選するヤツはいなくなるだろうと楽観的に捉えているんだ。

Michael Moore: Where To Invade Next | official teaser trailer (2015) TIFF

youtu.be

原点に戻って、全国巡業する覚悟らしい。日本公開に期待したい---

世の中にポジティブさを注入しようとしているんですか。考え方が一変したことについてとても前向きに話していますね。

そう。率先して行動を起こすのは、若者、アフリカ系アメリカ人、あるいは女性だろう。実際すでに始まっている。それらの運動のいくつかは、数年前に経済大国の実態や経済格差の問題に対して人々が非難の声を上げたOccupy Wall Street (ウォール街を占拠せよ)の精神を引き継ぐものだ。

自由民主主義の基本である社会契約の概念が、今後5年間のうちに暴力を伴わない方法で覆えされる可能性はあるでしょうか。

2、3年のうちにそうなる気がする。

この映画をできるたけ多くのアメリカ人に観てもらい、映画の意義と自分の考えを伝えるために、何をしようとしているのですか。

『華氏911』の時は、国内60都市で42日間上映した。今回も同じようなことをしたい。すでにロックンロール(ツアー)バスの手配方法は確認してある。この映画を引っ提げて国内各地を周り、バスを停められる場所があればそこで停め、できるだけ多くの都市や町で上映するつもりだ。