対談企画「いま気になる映画人」では、映画製作・プロデューサーの飯塚冬酒が「いま気になる」映画人に逢い、対談する企画です。
今回は映画監督の野本梢さんとお話をさせていただきました。楽しい野本さんのお話をお楽しみください。

映画監督になるきっかけ

飯塚「ご無沙汰しています」

野本「こちらこそご無沙汰しております」

飯塚「早速ですが本題に入ります。まずは、映画監督になるきっかけを教えてください」

野本「昔からミュージックビデオが大好きだったのが映像に興味を持ったきっかけだと思います。大学生の時にミュージックビデオをつくる会社で制作の仕事を手伝うようになったのですが、根本から作品を創りたくなって脚本に興味を持ちました」

飯塚「なるほど」

野本「『映画24区』というところで脚本を勉強していたのですが、その時の先生に自分で作品を撮ってみては、と言われたのがきっかけです。映画を創るという発想は自分にはなかったのですが、映画の撮り方を学ぼうと思って『ニューシネマワークショップ』に入って映画創りを学びました」

飯塚「ニューシネマワークショップはいかがでした?」

野本「みんなで映画を創る楽しさを学びました。ひとりで脚本を書くよりもみんなで映画を創ることが面白くてそこから映画監督として活動をはじめました」

飯塚「映画監督になりたい!と強く願って監督になったわけではないんですね」

野本「何となくの流れなんです(笑)」

飯塚「今は他にどんなお仕事をしていらっしゃいますか?」

野本「塾の講師をしています。この仕事も最初は事務の仕事で入ったのですが、講師が足りない、ということで流れで講師もすることになって(笑)」

飯塚「流れ(笑)」

映画監督:野本梢

野本「ニューシネマワークショップの実習で選ばれて映画監督をすることになったときに、映画創りに憧れて、強い思いを持っていてもその時に選ばれなかった人もいらっしゃったんです。その後はその人たちのためにも映画を続けなきゃ、と思って映画を撮り続けていました」

飯塚「その頃に撮った映画は何ですか?」

野本「『あたしがパンツをあげたなら』という短編です。映画24区の時に書いていた脚本で・・・」

飯塚「あ、僕、それ観ました」

野本「ありがとうございます。あと『猫癖』」

飯塚「観ました(笑)。そこからは?」

野本「ニューシネマワークショップに卒業生対象に支援制度があったので卒業後に応募して『私は渦の底から』という映画を撮りました」

飯塚「それも観ている(笑)。野本さんの映画、かなり観てますね、僕(笑)」

野本「(笑)ありがとうございます。その映画が各地の映画祭で上映していただいて各地にこんな映画祭があるんだと知りました」

飯塚「普通は映画祭をたくさん調べて、そこを目指して応募したりするんですけどね」

野本「何となく、流れですかね(笑)。その映画祭では他の監督さんたちは長編を上映していたりして、私も今度は長編を、なんて考えました」

飯塚「面白いですね。夢を諦める人が多いなか、きらきら光る夢を追いかけるのではなく、流れに乗って映画監督として順風満帆に進んでいくのは稀有な監督ですね」

マイノリティの悩みを描く

飯塚「ご自身が映画を創る原動力は何ですか?」

野本「昔は、映画祭をきっかけとして・・・特集上映のお話をいただくことも多く、それに併せて新しい作品を創ったりしていたんです。
そんな中で、マイノリティの悩みを描いた作品を創ったことがきっかけで、いろいろとお声をかけていただくことも多くなりました」

飯塚「マイノリティの悩み?」

野本 「人それぞれに悩みがあると思うんですが、他人には言いづらかったり、多くの人が気に留めないような悩みもありますよね。
そういう悩みを世に広めたい、少しでも多くの人に知ってもらいたいと、私に伝えてくださる方がよくいらっしゃいます。
多くの人が気づかないことを見聞きして、それを形にしていく、というのが今、私が映画を創る原動力なのかもしれません」

映画『藍反射』予告編

youtu.be

脚本について

飯塚「野本さんの作品に登場する人物は女性が多いですね」

野本「私が女性ということもあるのかもしれませんが、題材として女性特有の感じ方や悩みなどを描く、ということもあるのかもしれません」

飯塚「なるほど。野本さんの作品を拝見していると野本さんの視点でないと書けないなあ、といつも思っているんです。どんな風に脚本を考えているんですか?」

野本「伝えたいことをまずベースに考えて、プロットを組み立てていきます。どうドラマにしていくか、を考えて。最新作の『藍反射』は医学的なことが物語に関わってくるので、その部分の取材や医学的に問題ないか、など時間がかかりました」

飯塚「1作品、どのくらいの時間で脚本を仕上げていくんですか?」

野本「『藍反射』は企画から3年後にスタートし、プロット2~3ヶ月、脚本3ヶ月くらいで書いています。今取り掛かっている長編映画はプロットだけで1年以上経過しています……」

飯塚「1年・・・作品を生み出すってやはり大変ですよね」

俳優さんのこと

飯塚「俳優さんとご一緒するときに大切にしていることは何ですか?」

野本「俳優さんが、作品を創るときにその題材にどう向き合ってくれているか、というところを大切にしています

オーデションの際にはいつも『一言』自由に書いていただく欄を設けているのですが、そこに作品の題材に対してご自身の想いを書いていただいてる方とご一緒したいな、とは思っています」

飯塚「やりやすい、やりにくい、などはありますか」

野本「難しいですね(笑)・・・がちがちに固めていらっしゃるよりは現場での柔軟性を持って現場に来ていただける方がやりやすいですね。

お相手との芝居もありますし、現場では柔軟性があるほうがいいのかな、と思います」

飯塚「現場で、これは違うと思ったときは?」

野本「あまり、強くは言いません。話合う、というスタンスです」

飯塚「すぐに答えを欲しがる俳優さんもいらっしゃるのでは?」

野本「はい、いらっしゃいますね。でも私は話ながら進めていくほうがやりやすいのかな、と思います」

飯塚「リハーサルも大切ですよね」

野本「そう思います。以前、ある映画でリハーサル不要と判断して現場に臨んだシーンがあったんですけれど、そのシーンが意外と時間がかかってしまって・・・。小さなシーンであってもしっかりとリハやすり合わせをしておかないといけないんだな、と感じたことがあってからはリハはしっかりと行うようにしています」

飯塚「しっかりとリハをするんですか?」

野本「そうですね、3~4日くらい」

飯塚「結構、しっかりとしていますね」

今後の作品

飯塚「今後はどんな作品を創っていきたいと思っていますか?」

野本「まだ具体的には進んではいないのですが、パーソナリティ障害に焦点をあてて、本人もそうなんですけど、周囲の人々のこと・・・カサンドラ症候群といって近しい人にそういう人がいることによって起こる心身の不調で悩む人、あまり目を向けられることのない人を描いてみたいと思っています。

飯塚「今後の作品も楽しみです。本日はありがとうございました」

野本「ありがとうございました」

カメラ:岩川雪依