対談企画「いま気になる映画人」では、映画製作・プロデューサーの飯塚冬酒が「いま気になる」映画人に逢い、対談する企画です。
今回は『雪子a.k.a.(ゆきこエーケーエー)』や『スーパーミキンコリニスタ』など次々に素敵な作品を発表している草場尚也監督にお話を伺いました。

大学で映画サークルを立ち上げる

飯塚「よろしくお願いいたします」

草場「よろしくお願いいたします」

飯塚「お忙しそうですね」

草場「昨年に撮影した映画の仕上げとか、テレビドラマとか・・・」

飯塚「テレビドラマも?映像のお仕事増えていますね」

草場「ありがたいことに」

飯塚「早速、本題に入ります。草場さんは、どのような経緯で映画監督になられたんですか?・・・まずは直球に(笑)」

草場「もともとは大分大学の教育学部出身で、教員になろうと思っていました。
映画にはとても興味があったので、大学生の時に映画サークルを立ち上げて・・・といっても学生がよくバンドやろうぜ、見たいなノリで立ちあげて映画創りをはじめました」

飯塚「映画サークルの立ち上げから?」

草場「そうなんです。東京や大阪の大学と違って大学に映画サークルもなく、立ち上げから。映画つくりを教えていただける環境もない中で手探りでした」

飯塚「すごいですね」

草場「学生時代は、映画サークルで映画をつくったり、大分市のシネマ5というミニシアターに通ったり湯布院映画祭にスタッフとして携わったりと、映画三昧の日々でした。なかでもシネマ5の支配人の田井肇さんと知り合いになって、いろいろとお話を伺えたことが僕のその後の映画人生に大きく影響しました」

映画にのめりこんだ大学時代

草場「話が少し前後してしまうのですが・・・
僕は小さいときから剣道をしていて、高校はスポーツ推薦だったんです。でも高校で剣道ではうまく成績を残せず、周囲から置いていかれて。高校時代は逃げるように音楽や映画にのめりこみました。心のよりどころになっていたのかもしれません」

飯塚「そのころ観ていた映画は?」

草場「『ショーシャンクの空へ』『グリーンマイル』とか泣ける系の映画が多かったような気がします」

飯塚「フランク・ダラボン監督。『ミスト』とかも?」

草場「そうです。でもその頃は監督もあまり知らず、作品を選んで観ていました。大学時代から、先ほどお話させていただいたシネマ5の支配人にいろいろとをお話を伺うことがきっかけで映画監督で作品を観るようになりました」

飯塚「ちなみに今までに影響を受けた作品はありますか」

草場「2作品あります」

飯塚「2作品とも教えてください」

草場「1作品めは『桐島、部活やめるってよ』です。
シネマ5の上映の時に『桐島~』の監督の吉田大八さんがご来館して上映の後にお話を伺う機会がありました。
僕はその頃、教員になるか映画の道に進むか、悩んでいた時だったんですが吉田監督に
“人にやめろと言われてやめるくらいなら諦めた方がいいよ”
と言われて、自分のやりたい道が『映画』だとはっきりと自覚したことがありました」

飯塚「なるほど」

草場「もう1作はグザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』です。
はじめて感じた映画体験で・・・脚本はもちろん美術や音楽など細部へのこだわりに感動しました。
映画を観終わったあとに客席からしばらく立てなかったですね」

飯塚「大学を卒業してからはすぐに東京にいらしたんですか」

草場「はい、決心して大学卒業して大分から東京に飛び出しました」

飯塚「教員免許もあるんですよね。ご両親は?」

草場「もちろん大反対でした(笑)」

映像制作会社の激務の中で書き上げた脚本

飯塚「東京に来てからは?」

草場「渋谷の映画美学校に通いました。映画監督を目指して主に脚本の書き方について学びました」

飯塚「卒業してからは?」

草場「卒業したからといって、すぐに映画監督になれるはずもなく、お金もコネも全くないので、まずはテレビ系の映像制作会社に就職しました。」

飯塚「映像制作会社は激務ですよね」

草場「映画も制作する会社ときいて就職したのですが、僕の配属された部署がテレビのバラエティを制作する部署で・・・」

飯塚「厳しそう・・・」

草場「月に1回くらい休みがあればいいかな、という感じでした(笑)。その休みも映画館で映画を観ていたので、自分の作品の脚本に取りかかる時間もあまりなかったです。このままじゃだめだと思って、1ヶ月ほど休職をさせていただきその期間に脚本を仕上げました」

飯塚「わずか1ヶ月で?」

草場「もともと映画美学校時代からアイデアの基礎はあって月1回の休みに映画館通いの合間に少しずつは書いていたんですけれど、なかなか進まなかったんですね。そこで思い切って1ヶ月で仕上げて」

飯塚「なるほど」

草場「脚本が仕上がったので、また会社に1ヶ月の休職をお願いして、撮影したのが『スーパーミキンコリニスタ』という作品です」

飯塚「拝見しました。それがデビュー作ですね」

映画『スーパーミキンコリニスタ』予告

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スクリーンからあふれ出る優しさ

飯塚「製作費などはご自身で?」

草場「自分でお金を捻出して足りない部分を両親に借りました」

飯塚「つくった作品は?」

草場「映画祭に出品しました。目標にしていた『ぴあフィルムフェスティバル』で賞をいただいたのが嬉しかったです」

飯塚「第41回の『エンターテイメント賞』と『ジェムストーン賞』」のW受賞でしたね。その後、劇場公開へとつながっていったんですね」

草場「つくっているときは自分の作品が劇場公開されるなんて思ってもいなかったです。いろいろなことが重なって・・・」

飯塚「拝見したときにファーストカットからしびれました。途中のワンカットやお母さんからの餞別や、草場さんの映画や人に対する想いがひしひしと伝わってきて・・・。
『雪子a.k.a.』もそうですが、草場さんの作品はスクリーンからあふれ出た優しさが、観た人に伝わり拡がっていきますよね」

主人公に投影する自分

飯塚「映画つくりで大切にしていることはありますか?」

草場「映画つくりそのものに意味があるようにしたいと思っています。完成した作品はもちろんお客さんに観て頂き、その結果は興行収入や評価に繋がると思いますが、そこだけで終わってしまうような映画つくりはしたくないと思っています。

私のこれまでの作品は自分のある部分が主人公に投影されているので、自分の悩みや葛藤が主人公を通じて昇華される、映画つくりを通じて一緒に成長する、ということが大切だと思っています。

映画つくりを通して自分が満たされる、という感じです。

主役の方にもその想いを共有してもらえたらと思ってキャスティングしています。

主人公ファースト、というか私の映画は主人公のキャラクター造形と役者さんが重なる部分を探しながら、作品の中で役者さんなのかキャラクターなのかわからなくなる瞬間を撮影できることが理想です」

飯塚「今までの作品でしたら?」

草場「例えば『雪子a.k.a.』では”本音を言えない“という部分や”他人の眼を気にする“とか自分が肯定しにくい部分を主人公に投影しています」

飯塚「作品の中では自己否定も含めて自分、その先のほんの希望、で終わっているような気がしました。草場さんの大切にしている部分がよくわかりました」

予告編解禁「雪子 a.k.a.」 2025年1月公開

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今後

飯塚「今後の展開を教えていただけますか」

草場「そろそろ発表できる作品があります。今まで2作品の主人公は女性だったのですが今回は男性です。悩みを抱えて生きている部分では共通していますが初の男性主人公なので、撮影に入る前からとても楽しみだった作品です。ストリートダンスをモチーフとした漫画原作の実写化です」

飯塚「公開が楽しみですね」

草場「企画しているのは、平和を舞台にした作品です。自分がもともとは長崎出身ということもあるので平和をテーマにした作品を作ってみたいと思っています。
この作品は海外との共同製作を目指しています」

飯塚「バイタリティがありますね。これからも楽しみにしています。本日はありがとうございました」

草場「ありがとうございました」