京都国立近代美術館において、2026年3月8日(日)まで 、「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」が開催されています。 本展では、20名の国内作家により、1990 年代から2025年現在までの美術表現を中心に、インスタレーションなど新しい芸術作品が紹介されていて、美術展といえば、絵画や彫刻、といった既成概念を良い意味で覆す新しい創造の世界となっています。
出品作家が同時代として共有する1990年頃から2020年代は、まさに日本社会が「失われた30年」と称される時期で、不景気や震災、国際紛争、コロナ禍など、混沌とした時代です。アーティストが生み出す作品には、こうした時代背景が反映されています。 アーティストは芸術という手段を通して、私たちが生きる上で日々直面するさまざまな問題や、世界の根源的・普遍的な真理について気づかせてくれるでしょう。
本展では、現代社会を生きるアーティストそれぞれの思考や実践のアウトプットとしての作品を、「アイデンティティ」「身体」「歴史」「グローバル化社会」といったキーワードを手がかりに読み解いていきます。航海上の潮流やうねり、未知の島との遭遇といった経験を記録した「海図」のような物語として描かれている「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」をご覧いただき、芸術の新しい風を感じてください。
出品作家(50音順)
青山悟、石原友明、AKI INOMATA、小谷元彦、笠原恵実子、風間サチコ、西條茜、
志村信裕、高嶺格、竹村京、田中功起、手塚愛子、原田裕規、藤本由紀夫、古橋悌二、
松井智惠、宮島達男、毛利悠子、森村泰昌、やなぎみわ
アーティストの視点でとらえた、現代の世界の「コトワリ」とは?
古来より人間は、世界がどのような法則や真理にもとづいて成り立っているのかを考え続けてきました。美術もまた、アーティストの視点を通して、世界について思索し理解するための手段といえます。
本展のタイトル「セカイノコトワリ」は、外来語や新しい概念をカタカナで表記するように、未知のものに対して解釈や意味づけを保留しつつ、自らの思考を更新していく態度を示しています。本展は、戦争や、地震、災害、コロナ禍といった混沌とした世の中を生きる私たちにとって、それぞれの「セカイノコトワリ」を見つける良い機会となるでしょう。
毛利悠子《パレード》2011-17年 京都国立近代美術館 2025年12月19日「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
本展は、「海図」のような物語として描かれ、「一つの島から次の島へ渡る」ように構成されています。その船出を見送るのは毛利悠子の《パレード》です。本作はテーブルクロスの図案を譜面としてコンピューターに読み込ませて電流に変換することで、アコーディオンやドラム、風船、日用品などが楽器として自動演奏されるインスタレーションです。
AKI INOMATA《やどかりに「やど」をわたしてみる–Border–(ラ・リューシュ、パリ)》2024年 京都国立近代美術館蔵 ©AKI INOMATA 撮影:若林勇人
本作は、都市をかたどった透明な「やど」を3D プリンターで出力してヤドカリに渡すというユニークなもの。他にも、アンモナイトの化石をその近縁種であり進化の過程で貝殻を捨てたとされるタコと出会わせる《進化への考察》などがあります。
藤本由紀夫《SUGAR I》1995 年 西宮市大谷記念美術館蔵 ©Yukio Fujimoto
藤本由紀夫《SUGAR I》(1995年)は、1995年の阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という日本社会を揺るがす出来事を契機に着想され、ガラス管の中で少しずつ崩れてゆく角砂糖が、日常の脆さや壊れやすさ、そして日常の異変はシームレスに起こりうることを伝えています。
松井智惠《LABOUR -4》 1993 年 国立国際美術館蔵 ©Chie Matsui 撮影:石原友明
1990 年代以降、現代美術の主流となったのが、多様な素材で空間を構成するインスタレーションや、写真・映像メディアを用いた表現でした。今回の展覧会では、これまで展示の機会が限られていたインスタレーションの重要作品が紹介されています
寓意的なインスタレーションを手がけた先駆的存在として知られる松井智惠による、オリジナルが完全な形で現存する稀少な作例の一つ《LABOUR》シリーズ(1993年)は、言葉や鏡、辞書、衣装、オブジェを組み合わせて空間に配置した作品で、アーティストの労働や苦痛といった身体的経験が可視化されています。
石原友明《世界。》1996 年 作家蔵©Tomoaki Ishihara
石原友明《世界。》(1996年)は、点字が刻まれた金属板の床を、人工的な太陽としてのシャンデリアが照らし出すインスタレーション作品。鑑賞者の触覚と視覚が交互に誘発される装置として構想された本作は、2004年の個展以来、21年ぶりの展示となります。
竹村京《修復された地球儀の貯金箱》2002–2021 年 京都国立近代美術館蔵 ©Kei Takemura 撮影:守屋友樹
竹村京の〈修復シリーズ〉は壊れた日用品をオーガンジーで包み、傷の部分に詩集を施しています。出来事の瞬間をとどめた作品が示すのは、壊れたものを再生しようとする意志であり、過去と未来をつなぐ人間の営みです。
田中功起 《taggame》 2024年 Commissioned by “The Air We Share” at the Deutsches
Hygiene-Museum Dresden (2024–2025) ©Koki Tanaka
田中功起は、2015年の「PARASOPHIA」で発表した《一時的なスタディ:ワークショップ#1「1946年–52年占領期と1970年人間と物質」》を京都で再展示。当時ワークショップに参加した高校生を10年ぶりに再び集め、各自の立場からこの10年間を語る新作映像《10年間(仮)》も発表します。歴史を現在に重ね合わせ、日本社会の現状を問う意欲的な試みとなります。
森村泰昌《星男(平安神宮にて)》1990/2004 年 京都国立近代美術館蔵 ©Yasumasa Morimura Courtesy of the artist and Yoshiko Isshiki Office, Tokyo
自ら変装してフィクションの世界に入り込む森村泰昌の〈星男〉はデュシャンに扮する森村が京都の観光名所を訪れる様子を撮影したものです。作家を媒体として、現実と虚構を行き来する「見世物」が路上で繰り広げられています。
本展は現代美術の作品の収集を強化した京都国立近代美術館ならではの新しいアートの形が結実した展覧会です。メルコ(三菱電機)グループの協力支援のもとに実現しました。
目まぐるしく変化する社会の中で、アーティストたちが何を感じ、何を訴えたかったのでしょうか?社会や生活上の変化を目の当たりにして、コロナ禍でのマスクまでが作品のモチーフとして使われ、芸術作品になっていました。
「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」で私たちがあらためて気づかされるものがきっとあるはずです。
展覧会風景 京都国立近代美術館 2025年12月19日「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」内覧会にて撮影 photo by © cinefil
展覧会概要
会場:京都国立近代美術館(京都市左京区岡崎円勝寺町)
会期:2025年12月20日(土)〜2026年3月8日(日)
開館時間:10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、12月30日(火)〜1月3日(土)、1月13日(火)、2月24日(火)
※1月12日(月・祝)、2月23日(月・祝)は開館
お問い合わせ:075-761-4111(京都国立近代美術館)
料金など詳細は、京都国立近代美術館公式サイトをご覧ください。
シネフィルチケットプレゼント
下記の必要事項、をご記入の上、「セカイノコトワリ」@京都国立近代美術館シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に無料鑑賞券をお送り致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年1月12日(月)
記載内容
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