カバー画像:神戸市立博物館外観写真 photo by © cinefil
鮮やかな色彩と豊かな表現力で世界中の人々を魅了し、後期印象派を代表する画家として知られるようになったフィンセント・ファン・ゴッホ(1853–90)。
今や天才画家として知られるゴッホですが、生前はほとんど評価されず、名作の誕生までには様々な苦悩がありました。
ゴッホは、壮絶な人生を生き、儚くも37歳で自らこの世を去ったのです。
僅か10年ほどの画業で、自然派の農民を描く作風から、印象派の影響を受けて、光溢れる色鮮やかな風景を描くようになったゴッホ。
「耳切り事件」を起こすなどドラマティックな人生でしたが、療養しながらも多くの作品を描き続け、最後には、自然の持つ強さと美しさを、優れた描写力により描き出し、人々を感動させる、生命力に満ちた独自の世界を築きあげました。
このたび、ゴッホの生涯と数々の名作を2期に分けて紹介する大規模展が開催されることになり、神戸市立博物館では、第1期「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」が2026年2月1日まで絶賛開催中です。
本展では、ゴッホが無名であった頃からいち早く着目し、収集したヘレネ―が創始者で、世界的なゴッホコレクションで知られるクレラー=ミュラー美術館が所蔵するコレクションから、《夜のカフェテラス》をはじめとする約60点の作品と、印象派の巨匠・モネやルノワールなど、同時代の画家の作品、ゴッホが影響を受けたバルビゾン派のミレーの作品などが展示されています。
阪神・淡路大震災から30 年の2025 年に開催される第1期では、オランダ時代からパリ時代を経てアルルに至る画業前半が紹介され、誰もが知るファン・ゴッホになるまでを辿ります。2027年に開催される第2期では、《アルルの跳ね橋》などが来日し、アルルから晩年までの画業後半が紹介されます。両期を合わせると、その作品数は約100点にのぼる大規模展覧会です。
本展は、震災から30年の神戸で開幕し、東日本大震災から15年を迎える福島、そして東京へと巡回します。波乱に満ちたゴッホの生涯とその画業を辿り、感動的なゴッホの作品と新しい芸術の創出への情熱を感じてください。
神戸市立博物館外観写真 photo by © cinefil
オランダ時代
ゴッホは1881年11月下旬に義理の従兄であるハーグ派の画家アントン・マウフェに絵画を学ぶため、何度かハーグを訪れました。本作はゴッホが初めて描いた油彩絵のひとつです。ハーグ派らしい暗い色調で、木製テーブルの上の帽子やパイプ、陶器、白い布切れなど、さまざまな質感のモティーフが描かれています。
ゴッホは1884年8月上旬、金細工職人でアマチュア画家のアントーン・ハーマンス(1822-1897)を訪ねました。彼は《最後の晩餐》のような宗教主題の絵画を食堂に飾りたいと願っていましたが、ゴッホは農民主題の絵画を描きました。
農作業に勤しむ農民の姿や、織機に向かう職人の姿など労働者の日常を描きました。
色彩はパリ時代や、アルル時代に比べるとかなり暗い色調です。
パリ時代
パリに出て、印象派の影響を受け、色彩が明るくなりました。パリではジャポニズムが流行していたためか、ゴッホも日本の浮世絵に興味を持ち、コレクションをしました。 繊細な浮世絵の影響で、草を一本、一本、細かく描きました。後のゴッホの作品の特徴である細かな筆致が見られます。
ゴッホは生涯で約40点の自画像を描いていますがその多くはパリ時代に描かれたもの。グリーンやグレー、ライトブルーなどの淡い色調で、筆致は短いストロークで躍動するようになってきています。
レストランの内部を描いた本作は、ゴッホがシニャックの影響を受けていることを最も顕著に表しています。点描の筆遣いと補色の効果が見事な作品です。
ゴッホの作品の総目録の編集者フルカーはこのモティーフの組み合わせを「謎めいていて、シュルレアリスム的ですらある」と表現しました。
アルル時代
ゴッホは麦畑や草地など、アルルの自然の美しさに感動し、描き続けました。
本作は、アルルに移って、3月頃に描かれた作品。夕暮れ時の日差しを受けて輝く柳が、様々な階層の黄色と青色の対比で鮮やかに描かれています。
南仏アルルのフォルム広場にあるカフェテラスを描いたゴッホの傑作。約20年ぶりの来日。ゴッホが初めて星空を描いた作品です。鮮やかな陽の光を受けて輝く黄色い麦畑と青空や、春の光を受けて輝く緑色の瑞々しい草地など、明るい昼間の印象が強いゴッホ作品ですが、「夜のカフェ」にも熱心に取り組みました。
ガス灯に照らされて、鮮やかに輝くカフェの黄色と夜空の深い青色との色の対比が見事で、勢いのある筆致の石畳にも黄色と青色が生かされています。
大ゴッホ展 アルルの跳ね橋(2027年-2028年)
この作品は「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」には出展されません。2027年開催予定の第2期での展示になります。
本作は、2027年に約70年ぶりの来日になります。 第2期の「大ゴッホ展 アルルの跳ね橋」も今から楽しみです。乞うご期待ください。
神戸市立博物館 2027年2月6日(土) - 5月30日(日)
福島県立美術館 2027年6月19日(土) - 9月26日(日)
上野の森美術館 2027年10月 - 2028年1月
展覧会概要
展覧会名 阪神・淡路大震災30年 大ゴッホ展 夜のカフェテラス
会場 神戸市立博物館
会期 2025年9月20日(土) ~ 2026年2月1日(日)
土日祝は予約優先制
開館時間 9:30~17:30 金曜と土曜は20:00まで
展示室への入場は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、12月30日(火)~1月1日(木・祝)
月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館。
入場料 一般 2,500円、大学生 1,250円、高校生以下無料
※詳細は下記展覧会公式サイトに触れて頂きますとご覧いただけます。