(カバー画像)「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil   
                                             

堂本印象は、円山応挙や竹内栖鳳、上村松園など錚々たる画家たちが所属していた京都画壇に属し、帝展で入賞を重ね、京都画壇のみならず、全国的に名を馳せた画家です。
繊細で優美な女性像を描く日本画家でしたが、本人が自分のことを『美の巡礼者』と表現しているように、中国や西洋を巡った後は抽象的な作風へと移行し、晩年には、躍動感のある筆のストロークで表現した抽象画を完成させました。
                       
このたび、「没後50年 堂本印象 自在なる創造」が、京都国立近代美術館にて、2025年10月7日から11月24日まで開催されています。                             本展は、帝展出品作をはじめ、堂本印象の代表作が一堂に会する大回顧展です。
印象は、帝展に出品した《深草》で初入賞を果たし、第3回帝展では《調鞠図》で特選、第6回帝展では《華厳》で帝国美術院賞を受賞するなど官展を中心に活躍しました。
              
本展では、その大きさのため、所蔵している東大寺においても公開される機会がほとんど無かった第6回帝展で帝国美術院賞を受賞した《華厳》や、裁判所が所蔵していて、一般公開されていない第7回日展出品の《ガラス》もご覧いただけます。
そして、絵画作品だけでなく、印象が手がけた陶芸や、木彫、デザインを含め、作家の創作の全貌が紹介されます。本年、国の登録有形文化財に登録された印象が京都府立堂本印美術館のために描いた貴重な装飾図案も、是非ご覧ください。
それでは、展覧会構成に従って代表作品を観ていきましょう。

展覧会風景 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

1章 研鑽の日々

堂本印象(1891~1975)は、大正7年(1918)に京都市立絵画専門学校に入学し、大正9年(1920)には西山翠嶂が設立した画塾「青甲社」に入門して研鑽を積みました。

堂本印象《仁和寺の塔》1907年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

初期の印象は、身近な古都の風景や日常の風俗を描いていました。

2章 画壇デビュー

印象は、京都市立絵画専門学校へ入学した翌年には、第1回帝展に《深草》を初出品し、入選を果たします。第3回帝展では、《調鞠図》で特選を受賞。翌年の第4回帝展に出品した《訶梨帝母》によって帝展無鑑査の資格を得ます。画壇を勢いよく駆け上がった印象は、さらに、第6回帝展出品の《華厳》で、帝展美術院賞を受賞し、画家としての地位を確立しました。

堂本印象《深草》1919年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

印象が初めて公募展に出品し、初入選を果たした作品。京都郊外の晩秋の静かな風景が描かれています。線だけでなく色の濃淡による立体表現を用いた大正期の日本画の特徴が見られます。

堂本印象《調鞠図》1921年 永青文庫 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil

中国の唐の時代のような衣装を身に着けた2人が、優雅に蹴鞠(けまり)をしています。

堂本印象《訶梨帝母》1922年 京都国立近代美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil

印象は、歴史や神話、宗教をテーマにした作品を数多く残しています。1922年の第4回帝展に出品された、印象の初期の代表作の一つ《訶梨帝母》は、鬼子母神(きしもじん)としても知られる仏教の女神です。

堂本印象《華厳》1925年 東大寺 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

善財童子が53人の善知識を歴訪し、やがて悟りを開くという仏教説話が、大画面に曼荼羅風に描かれています。圧巻のスケール!

第3章 円熟の時代

画壇で確固たる地位を築いたのちも印象は精力的に制作を続け、寺社を中心として数多くの制作依頼が寄せられました。また、母校の京都市立美術工芸学校の教諭や京都市立絵画専門学校の教授を務め、昭和8年(1933)には画塾「東丘社」を創設するなど後進の育成にも尽力しました。

堂本印象《木華開耶媛》1929年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

木華開耶媛(このはなさくやひめ)は、『古事記』に登場する、木の華(はな)のように麗しい女神のこと。安産の神、美しく花を咲かせる春の女神として愛されていました。春の桜が満開の野に、純白の衣を纏(まと)って座った木華開耶媛の姿が叙情的に繊細に描かれています。黒髪に添えられたぶどうの葉は、豊穣を象徴するものです。

4章 世界に触れて

戦後は当時の美術潮流を敏感に察知しながら画風を変化させています。60歳を過ぎてヨーロッパ各国を遊歴し、帰国後は具象から抽象へと画風を移行し、世界の美術に触れながら新たな画風に挑戦しています。

堂本印象《ガラス》1951年 福島地方裁判所 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

戦前の具象的画風から離れ、抽象画へと向かう助走の頃。

5章 アンフォルメルとの出会い

抽象表現へと向かっていた印象の画風は、フランスの美術評論家ミシェル・タピエとの出会いによってアンフォルメル(未定形の表現)に接近しました。

堂本印象《風神》1961年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil

1961年のイタリア統一百年祭の記念行事で、印象は、トリノの芸術クラブで、個展を開催しました。本作は、ミシェル・タビエによって、4年かけて準備された作品。地元紙に絶賛されました。

特集 多彩な創作

印象は若い頃から茶の湯に親しみ、茶室に掛ける掛軸や、茶碗、水指、茶釡の図案にいたるまで茶道具の制作に携わっています。陶芸に関しては、図案だけでなく茶碗や皿などを自らの手で作陶しています。本展では特集展示として画業以外の多彩な創作に焦点が当てられ、陶芸作品や茶道具、堂本美術館(現・京都府立堂本印象美術館)として開館した美術館の装飾図案などが紹介されています。

堂本印象《果の集積(堂本美術館 柱図案)》1966年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil 

堂本印象《郊外》1968年 京都府立堂本印象美術館 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影  photo by © cinefil  

堂本印象 京菓子司 笹谷守栄 包装紙、紙袋 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil  

堂本印象《双鶴欣舞》京菓子司 笹谷守栄 1969年 「没後50年 堂本印象 自在なる創造」京都国立近代美術館 報道内覧会にて撮影 photo by © cinefil  

美を求めて新しい芸術に挑戦し続けた堂本印象。彼の「自在なる創造」の軌跡を辿り、その芸術の変遷をご覧ください。

展覧会概要

展覧会名:「没後50年 堂本印象 自在なる創造」
会  期:2025年10月7日(火)~11月24日(月・休)
会  場:京都国立近代美術館(〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町)
開館時間:午前10時~午後6時、金曜日は午後8時まで開館
*入館は閉館の30分前まで
休 館 日 :月曜日(ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)
公式サイト:

https://www.momak.go.jp

観覧料など詳細は公式サイトに触れて頂きますとご覧いただけます。

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢@大阪市立美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上2組4名様に無料鑑賞券をお送り致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2025年10月20日 月曜日 24:00
記載内容
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
4、ご連絡先メールアドレス
5、記事を読んでみたい映画監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
ご記入下さい(複数回答可)
8、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
9、シネフィルのこの記事または別の記事でもSNSでのシェアしていただくことと、シネフィルのサイトのフォローを必ずお願い致します。
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・