世界15大映画祭のひとつ「タリン・ブラックナイト映画祭」に初長編作が出品され話題をあつめた、真田宗仁郎監督『岡本万太』。この度、ベルリン国際映画祭に次ぐドイツ第2 の国際映画祭、夏のヨーロッパ最大級映画イベントと言われている第42 回ミュンヘン映画祭(Filmfest München)において、国際コンペ部門で「CineRebels Award」を受賞。この賞は型破りで実験的な作品に贈られる賞で、日本人監督による同賞受賞は初の快挙となる。
ミュンヘン映画祭は、アートハウスとエンタメを融合した独自の位置を占めており、ルカ・グァダニーノ、トッド・ヘインズ、ソフィア・コッポラ、フランソワ・オゾンなど世界的評価を確立した多くの監督を輩出した映画祭として知られている。
過去に日本映画としては、1954年の衣笠貞之助監督「地獄門」、1980年の黒澤明監督「影武者」、1983年の今村昌平監督「楢山節考」、1997年の今村昌平監督「うなぎ」、近年では是枝裕和監督の「万引き家族」(2018)が、同じく「ベイビー・ブローカー」(2022)で最高賞となる、アリ・オスラム賞を受賞などがある。
その映画祭の中で、CineRebels Award は2022 年に創設された比較的新しい部門。既存の映画の文法や物語構造にとらわれず、「革新的で挑戦的な作品」を讃えることを目的としている部門で、商業性より作家性を重視する独自の視点から次世代の才能を発掘する重要な場として機能している。
今作の受賞理由として「数千ものアイデアが次々と爆発する、唯一無二のDNA を持つ作品。弱く見えて実は強い主人公が暴力に満ちた世界を“脆さ”で打ち破る様は深く人間的で、私たちを虜にした。」と審査員コメント。さらに「クラシックな暴力映画を独自に解体し、笑えて、悲しく、美しく、シュールでリアルな作品。芸術や愛における『脆さという名の反逆』こそが真の勇気だ」と最大級の賛辞を贈られている。
CineRebels Award はまだ創設から4 年目だが、これまでの受賞作家はその後ベルリン、カンヌなど世界三大映画祭で受賞、選出など国際的に評価を高めていることからも、今回の真田監督も、この流れを受け次作や他国映画祭での展開が大きく期待されている。
すでに、今作はアート系批評サイト DMovies などでも取り上げられ、「冒頭の大胆さは非常に印象的で、物語があえて進展を拒むスタイルは挑戦的」と評されている。
真田監督より、受賞コメントがシネフィルに到着しました。
ミュンヘンの街は美しく、歴史、自然、アートミュージアム、教養、全てがありました。我々filmakerにとっては晴れ舞台であり、同時に最高の戦場でもありました。メインのCINEREBELS competitionにノミネートされている日本作品は『OKAMOTO(岡本万太)』だけだったので日本代表であり、本コンペは15作品の中から1作品がグランプリとして選ばれます。
心のどこかで背負っている日の丸の誇りと映画祭の方々への感謝を忘れずに、ミュンヘンの日々を送りました。コミュニーケーションは当然全て英語になりますし、Helloだけじゃなくて、世界中の監督と芸術の深い話を英語でする機会を逃してもなりません。映画祭中は規律正しく、でもフランクに、そしてパーティーで思いっきり楽しむ心を維持する必要がありました。
2週間ほどいたのですが、忙し過ぎてほとんど寝ていませんでした。それでも、寝る時間がもったいないくらい美しい時間が流れていました。
授賞式で岡本万太の名前が呼ばれた時は、えもいえない高揚感がありました。別に選ばれなくても、自分の作品の凄さは自分でわかっているのでどちらでもよかったのですが、総勢15人のスタッフが万太の晴れ舞台を見に、自腹でミュンヘンにきてくれた事へのお礼が、グランプリ受賞という形になったこと。42年続くミュンヘン映画祭の歴史に自分の名を刻めた事をとても誇らしく思います。最後に、海外映画祭にて日本映画の地位向上に貢献できたことを嬉しく思います。
真田宗仁郎
真田宗仁郎(Ssanada Soujirou)
兵庫県姫路市出身、日本の映画監督、哲学研究者。神戸大学大学院博士課程前期修了。専門分野は批判的思考、時代精神分析。中学高等学校、一般社団法人などで哲学教員を務める。また、ドイツの思想家オズワルド・シュペングラーの日本で唯一の研究者である。
2020年3月中編映画『もっとも純粋なQ』の監督/脚本を務め、2021年、渋谷イメージフォーラムにて8月にイベント上映。また同年、俳優佐藤浩市氏のボーカルアルバムより短編映画MV「life is too short」の脚本/監督を務める。2024年度、脚本と監督を務めた初の長編映画『岡本万太』が世界15大映画祭の一角であるタリンブラックナイト映画祭(エストニア)にて「大義ある反抗部門」に初長編作品ながらノミネートされる。
また2012年~2020年バンド「響心SoundsorChestA」のボーカルとギターを務める。
全ての曲の作詞作曲を行い、企業への楽曲提供も行う。
また過去作品のMV計6本は全て自身が演出、監督をしている。過去にはCOUNT DOWN JAPANなどフェスにも多数出演、現在に至るまで計80曲以上の楽曲をリリースしている。
公式X @okamotomanta
インスタグラム okamoto_manta