東京駅直結の東京ステーションギャラリーにおいて、イギリスの生活文化に大きな変化をもたらし、デザインブームの火付け役にもなったコンランの人物像に迫る日本で初めての展覧会、「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が2025年1月5日まで開催中です。

戦後まもなくテキスタイルや食器のパターン・デザイナーとして活動を始めたコンランは、1960年代、ホームスタイリングを提案する画期的なショップ「ハビタ」をチェーン化して成功を収め、起業家としての手腕を発揮しました。さらに1970年代から展開した「ザ・コンランショップ」におけるセレクトショップの概念は、日本を含む世界のデザイン市場を激変させました。

展覧会は8章構成で、最初の1章「デザイナー、コンランのはじまり」ではテキスタイルを学び、デザインや家具製造に力を入れていった若きコンラン氏の活動が紹介されています。

1章「デザイナー、コンランのはじまり」展示風景
photo©︎moichisaito

2章「起業の志──ハビタとザ・コンランショップ」では1964年に立ち上げたライフスタイルの提案をテーマに小売店「ハビタ(habitat)」と、ハビタが国際的に成功した1973年にオープンした「ザ・コンランショップ」の様子が展示されています。

2章「起業の志──ハビタとザ・コンランショップ」展示風景:この写真にあるのは、60年代のハビタの店内をイメージした展示空間
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2章「起業の志──ハビタとザ・コンランショップ」展示風景
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コンランは、1970年代後半にバークシャー州キントベリーに建つ18世紀後半の赤レンガの邸宅「バートン・コート」を購入して、自邸としました。ここで晩年までの長い時間を過ごしましたが、ガーデニングを楽しむなどのほか、レストランのレシピ開発から雑誌の撮影や、隣の家具工房ベンチマークのための作業も行われていました。4章「バートン・コート自邸」の展示は、東京駅の赤煉瓦を残したギャラリー空間とも馴染んで、自邸の雰囲気を伝えるものとなっています。

4章「バートン・コート自邸」展示風景
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4章「バートン・コート自邸」展示風景:バートンコートのオフィスの再現
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章ごとに、それに関係する周縁人物のインタビュー映像が流されており、6章「再生プロダクトと建築/インテリア」ではミシュランハウスの写真や模型に並んで、現代の英国を代表する建築家の一人、トーマス・ヘザウィックの映像がありました。

6章「再生プロジェクトと建築/インテリア」展示風景
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1989年にコンランはロンドンのバトラーズ・ワーフ再開発エリアに、世界初の産業デザインに特化した「デザイン・ミュージアム」を設立しました。27年間の活動を経て、「コンラン財団」の寄付によりミュージアムはケンジントンに移転し、3倍の広さとより充実した内容で再オープンしました。私財を投じて実現させた「デザイン・ミュージアム」プロジェクトの背景には、「デザインは世界をより良くするための前向きな活動である」というコンランの信念がありました。それは実際に私たちの生活を豊かにするためにデザインが不可欠であることを、よく示しています。

充実した展示を堪能した後には、会場の東京ステーションギャラリーから程近い新丸の内ビルにあるザ・コンランショップ 丸の内店に足を運んでみるのもよいでしょう。

8章「未来にむけて」展示風景:
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概要

展覧会名:テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする

会期:開催中〜2025年1月5日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1  
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館30分前まで 
休館日:月(ただし12月23日は開館)、12月29日~1月1日 
料金:一般 1500円 / 高校・大学生 1300円 / 中学生以下無料

*2025年4月19日〜6月8日、福岡市美術館へ巡回