対談企画「いま気になる映画人」では、映画製作・プロデューサーの飯塚冬酒が「いま気になる」映画人に逢い、対談する企画です。
高校生の時から知っている笠松さん、楽しくお話をさせていただきました。
10年前、出会った頃はまだ高校生
飯塚「本日は宜しくお願いします」
笠松「よろしくお願いします」
飯塚「長いですよね、芸歴」
笠松「そうですね、もう10年」
飯塚「長いですね。10年。出会った頃が高校生でしたよね。その後、色々な作品に出演、ご活躍は拝見しています。出演する作品はどんな基準で?」
笠松「監督が信用できるか・・・っていうか」
飯塚「信用?」
笠松「難しいですけど・・・その人の過去作やメールのやり取り、SNSだったり」
飯塚「なるほど・・・現場、辛かったことありますか?」
笠松「(笑)。沢山ありますよ。自分の力不足が悔しいところ・・・現場でできないことがあると辛いですよね。もちろんスケジュールとか物理的につらい、ってありますけど。これは仕事だから辛いうちに入るのかな・・・あと・・・現場で自分ではどうしようもできないこと・・・スタッフさん同士が仲悪かったりとか」
飯塚「大変ですよね。僕は役者さん目線で現場を見たことがないから、想像するしかないけれど・・・ちなみに僕の製作作品にも出ていただいた時とか・・・現場、辛かった?すみません」
笠松「いえ!楽しかったです!」
飯塚「役者さん、って一言でまとめちゃいがちだけど・・・笠松さんの役者さんとしての立脚点はどこですか?」
笠松「映画館で上映される映画に関わっていたいという想いは根底にありますけど・・・テレビや舞台、映画、いまだとYouTubeもありますけど・・・一番の理想は、自分の信頼できる人達と作品つくりができればメディアはどこでもいいのかな、って。でも、このお仕事で食べていこうと思うとそうばかりも言っていられないので」
飯塚「信用できる人達と映画をつくっていく、というのが理想?」
笠松「はい。あと自分を飾らない、かっこつけない人。自分の中でダサいところを共有できる人と仕事できたらいいですよね・・・飯塚さんも、かっこつけないですけど」
飯塚「僕、かっこつけてない?っていうか・・・かっこ悪い感じ?(笑)」
善と悪は見る立場の違い
飯塚「好きな映画はありますか」
笠松「ティム・バートンとウェス・アンダーソン好きです!」
飯塚「いいよね『シザーハンズ』」
笠松「私『シザーハンズ』観ると感情がこみあげてきて、お話に入っていけないです。悲しすぎて」
飯塚「そういえば、Netflixでティム・バートン監督の『ウェンズデー』の配信ありますよね。観ました?」
笠松「観ました。『アダムスファミリー』の女の子ウェンズデーのお話ですよね。『アダムスファミリー』も大好きな映画です」
飯塚「どんなところが?」
笠松「ファッションも好きですけど・・・一般の社会だったら、変わり者でくくられる家族のお話なんですね。その一家のこどものウェンズデーっていう女の子がサマーキャンプに行くエピソードで、他の参加者となじめなくて、いろんなことがあるんですけど・・・。
サマーキャンプの大勢のこどもからすると、ウェンズデーが『悪』かもしれないんですけど、
アダムズ・ファミリー側から描いているので、『悪』は大勢の人々だったり」
飯塚「善と悪は見る立場の違いですよね」
笠松「そう思います。でも一番はずっとわくわくしながら観ていられるのが楽しいです」
これからのこと
飯塚「これから、どんな役をしてみたい?」
笠松「・・・・悩んじゃうんです」
飯塚「(笑)大丈夫、大丈夫。正直が一番」
笠松「・・・実際にいた人の役をやってみたいな、って思うことはあります。創作された脚本ではあるんでしょうけど、実際に生きてきた人とか」
飯塚「演じることによって、その人を傷つけるとか、周りの人を傷つけることもあるかもしれないですよね。ドキュメンタリーつくっていると、被写体とどのくらいの距離感でいたりとか、お互いに嫌な思いをしたりとかあるので。つくりものであっても実際の人を扱う怖さってありますよね」
笠松「そうかもしれませんね。現代の人でなくてもよくて。昔の人とか・・・」
飯塚「卑弥呼とかね」
笠松「卑弥呼は・・・(笑)」
笠松「俳優10年続けてきて、今までやったことのないことをいくつかやってみようと思っていて」
飯塚「それは何?」
笠松「エッセイを始めたんです」
飯塚「エッセイ?」
笠松「そうなんです。ほかにもいくつか企画しているものがあって」
飯塚「楽しみですね」
笠松「記事が掲載されるころには発表できていたらいいんですどね」
インタビュー:飯塚不冬酒 / 撮影:岩川雪依
笠松七海 プロフィール
『わたしの王子』(2014)でデビュー。主演作『かべづたいのこ』 (2015)での演技により、福岡インディペンデント映画祭2016 俳優賞を受賞。
その後も話題の若手映画監督の作品に出演が続き、主演作『おろかもの』(2020)が第13回田辺・弁慶映画祭にてグランプリ、俳優賞を含む5冠を受賞。
他の出演作に『空(カラ)の味』(2016)『次は何に生まれましょうか』(2019)『誰かの花』(2021)、舞台『さらば箱舟』(2023)など。