四季折々の景観が美しい京都・嵐山の福田美術館では、この夏、福田コレクションの中でも選りすぐりの動物画 78 点が集結する展覧会「福田どうぶつえん」が開催中です。

「動物園」という言葉は、江戸時代末期の1866年に福沢諭吉(1835-1901)が発表した 『西洋事情・初編』 の「博物館」の項目で初めて使用されたと言われています。
近世以前、動物は特別な力をそなえた崇拝の対象であったり、長寿や子孫繁栄などのおめでたいものの象徴であったりして、時に意味を持つ存在として好んで描かれていました。

江戸時代以降、円山応挙や伊藤若冲など、動物をつぶさに観察して精緻に写生し、よりリアルな表現で描く画家が現れます。 本展ではそのような近世の画家から、木島櫻谷、速水御舟、加山又造まで、明治から昭和、平成時代を生きた日本画家たちが描いた動物の姿が、そこに込められた意味や生態の解説と共に紹介されています。

本展では、人々から親しまれているライオンやトラ、サルなどが、江戸時代以降に活躍した画家たちの描く「動物画」という形で紹介されています。画家それぞれの表現の違いはもちろん、鋭い観察眼、細やかな毛描き、精緻な描写、洗練された色彩も見どころです。

第1章:猛獣とはたらく動物

第1章の始まりは、今にも咆哮(ほうこう)が聞こえてきそうな猛獣たちが出迎えています。トラの絵を得意とした岐⾩県出⾝の近代画家、⼤橋万峰‧翠⽯兄弟の写実に迫る作品は、描かれた猛獣たちが今にも絵画を飛び出してきそうな⽣命⼒と迫⼒が感じられます。

はたらく動物のコーナーでは、畑を耕したり、人や物を運ぶことができる、人びとの⽣活に⽋かせない存在であるウシやウマが紹介され、後半はシカやイノシシなど⽇本の野⼭に棲む⾝近な動物たちが紹介されています。それぞれの⽣態や、画家によって描き分けられた表現の違いをご覧ください。

⼤橋翠⽯《獣王図》1925年 福田美術館 通期展示 photo by ©cinefil

百獣の王と呼ばれるライオンを描いた⼤橋翠⽯は、写実を極め、パリ万博、セントルイス万博で⾦牌を獲得するなど世界的な評価を得ていました。
ライオンの雄は立派なたてがみがあり、その強さを誇示しています。

⼤橋翠⽯《乳虎渡渓図》20世紀 福田美術館 前期展示 

母トラが乳虎を口にくわえて、渓流を渡る様子が描かれています。後ろから二頭の子トラもついて行っています。母トラの耳の裏側にある白い斑点は、「虎耳状班(こじじょうはん)」と言われ、仲間とのコミュニケーションや、子どものトラが後からついて行くときの目印にもなるものです。

与謝蕪村《猛虎飛瀑図》1767年 福田美術館 前期展示  photo by ©cinefil

与謝蕪村などによって江⼾時代に描かれたトラは、瞳孔が三⽇⽉型であったことから実物のトラを見ずに、ネコの瞳孔を参考にして描いたと⾔われていますが、大橋翠⽯のトラの瞳孔は丸く、⽣きた実物を丹念に観察していたことがわかります。

⼤橋万峰 《猛虎図屏風》20世紀 福田美術館 通期展示  photo by ©cinefil

⼤橋万峰は、翠⽯の5歳上の兄で、同じく虎の絵を得意としました。本作では、咆哮するトラと姿勢を低くして威嚇するトラが対峙している場面が描かれています。
鋭い目つきをした虎ですが、昼行性でその瞳孔は黒く丸々としています。
トラは、一日で「千里往(いっ)て、千里還(かえ)る」とされていることから、旅をする際には無事に帰ってこられるように、「寅の日」に出発するのが良いとされています。

岸駒《福禄寿図》1822年 福田美術館 前期展⽰  photo by ©cinefil

「福禄寿」とは、幸福の「福」、俸禄(ほうろく)の「禄」、長寿の「寿」を表し、本作は、吉祥画となっています。シカは、七福神の1人である道教の仙人・寿老人(じゅろうじん)に仕えることから、長寿の象徴として信仰されてきました。また、シカは中国語で、俸禄を意味する「禄」と同じ発音であることから、金運をもたらす動物としても知られています。

第2章:ツルツル、ニョロニョロ、ふわふわっ!

第2章の前半は、哺乳類のコウモリ、甲殻類のカニ、爬⾍類のヘビなどの動物画を、後半は、嵐⼭モンキーパークでもお馴染みのニホンザル、ウサギやリスなどの⼩動物を描いた作品が展⽰されています。「ツルツル」とした質感、「ニョロニョロ」と動きのある表現、「ふわふわ」とした⽑など、画家たちの細やかな描写も注⽬ポイントです。

⽯崎光瑤《裏園秋興之図》1913年 福田美術館 通期展示 

風情ある植物画の中に、細い蛇が隠れています。

森狙仙《親⼦猿図》18-19世紀 福田美術館 前期展示  photo by ©cinefil 

本作は母サルが子ザルの毛づくろいをする光景。森狙仙は猿描きの名手として大阪を中心に活躍しました。

速水御舟 《白兎図》1926年 福田美術館 通期展示  photo by ©cinefil

ウサギは多産なため、古くから子孫繁栄の象徴としても好まれた画題でした。
毛色が白く、赤い目をしたウサギは日本古来の品種で広く愛されていました。
御舟は東京都に生まれ、大和絵を学ぶ一方、従来の日本画とは異なる革新的な作品で注目を集めました。

第3章:もふもふ可愛いわんにゃんたち

イヌやネコは愛玩動物として⾝近な動物です。多くの画家たちも様々な品種のイヌやネコを丁寧に観察し、描いてきました。もふもふの仔⽝、凛とした⼤型⽝、⽑づくろいをするネコなど、その愛らしい姿に画家の創作意欲も搔き⽴てられたことでしよう。
⽑並みや表情など⾝近な動物だからこそ親近感が湧く、画家たちが捉えた「わんにゃん」の姿に注⽬です。

⼭内信⼀《春光》1931年 福田美術館 通期展⽰  photo by ©cinefil

ニワトリやイングリッシュポインター、ボンネットモンキー、ワカケホンセイインコ
などが写実的に描かれています。満開の桜の下でくつろぐ姿はふれあい動物園での一幕のようです。

円⼭応挙《⽵に狗⼦図》1779年 福田美術館 前期展⽰  photo by ©cinefil

竹とイヌを描いた作品はそれぞれの作品を組み合わせると「笑」という字に似ているため、「一笑図(いっしょうず)」と呼ばれています。応挙の描く仔犬は先端が垂れた耳や背中側に曲がる尻尾の形などから紀州犬を映したといわれています。
応挙は写生を重視した独自の画風を確立し、後に円山派の祖として活躍しました。

長沢芦雪 《猫と仔犬》 18世紀 福田美術館 後期展示

写実を極めた⼤橋万峰‧翠⽯兄弟の描いた大迫力の猛獣には驚かされますが、円⼭応挙、長沢芦雪、速水御舟、岸駒などの描く愛らしい仔犬や白兎、鹿などに心癒される至福のひとときをお過ごしください。 

嵐山の風景 photo by ©cinefil

福田美術館は、2024年10⽉で開館5周年を迎えます。渡⽉橋を望む⼤堰川(桂川)沿いの日本風情漂う美術館で、⽇本美術の名品をご堪能ください。
8月1日~8月31日までは小学生無料です。美術品を鑑賞しながら、感想をお話したり、小さなお子様連れでも気兼ねなく鑑賞していただけるように、火曜日は特別におしゃべりもOK!の日となっています。夏休みに是非、お出かけください。

展覧会概要

会期 2024年7月13日(土)~2024年10月1日(火)
前期:7月13日(土)~8月26日(月)
後期:8月28日(水)~10月1日(火)
会場 福田美術館
住所 京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
時間 10:00~17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日 8月27日(火)展示替え 9月10日(火)設備点検
観覧料 ⼀般 1,500円(1,400円)高校生 900円(800円)小・中学生 500円(400円)
障がい者と介添人1名まで各900円(800円)
嵯峨嵐山文華館 共通券 ⼀般 2,300円 高校生 1,300円 小・中学生 750円
障がい者と介添人1名まで各1,300円
※幼児無料
※( )内は20名以上の団体料金
URL

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「福田どうぶつえん」@京都 福田美術館シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、無料観覧券をお送り致します。この観覧券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
%%★応募締め切りは2024年8月12日 月曜日 24:00%%freen
記載内容
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の郵便番号、電話番号、建物名、部屋番号も明記)
4、ご連絡先メールアドレス
5、記事を読んでみたい映画監督、俳優名、アーティスト名
6、読んでみたい執筆者
7、連載で、面白いと思われるもの、通読されているものの、筆者名か連載タイトルを、
ご記入下さい(複数回答可)
8、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
9、シネフィルのこの記事または別の記事でもSNSでのシェアまたはリツイ―トをお願い致します。
☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・。☆.・