倉俣史朗(くらまた しろう)(1934–1991)は、1960年代以降の日本を代表するインテリアデザイナーで、従来用いられなかったアクリル、ガラス、建材用のアルミなどの工業素材を用い、独自の美の世界を創造しました。
          
当時まだインテリアデザイナーという職種が認識されていなかった頃、透明なアクリルを使用して、まるで商品が浮いているようにみえる棚、光そのものに形を与えたかのようなショーケースなど、倉俣の創造する新しい世界は、注目を集め、イタリアのデザイン運動「メンフィス」に参加すると、一躍、国際的な評価を高めました。                              デザイナーとして独立の後、遊び心を感じさせる変型の引出し、板硝子を貼り合わせ最小限の構造を突き詰めた椅子、造花のバラが浮遊するアクリルブロックの椅子など、倉俣の美学に基づいて生み出された作品は、今も人々に新鮮な驚きと感動を与えます。

このたび、京都国立近代美術館にて2024年6月11日~8月18日まで、「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」が開催されます。
「倉俣史朗の世界」展が1999年に開催されてから25年を経て、再び京都に倉俣史朗の代表作が帰ってきます。東京・富山を巡回した本展は、京都会場で幕を閉じます。

本展では、倉俣自身の言葉を辿りながら、創作の源泉ともいえる夢日記などの資料とともに、デザイナーとして独立する以前の20代の頃から、56才という若さで突然、この世を去るまでにデザインした家具やインテリアが時代順に紹介されています。
倉俣が「言葉で語れない部分を形で言おう」とした家具たちは、大切に保管されて受け継がれ、今もその魅力を発揮しています。

プロローグ 浮遊への手がかり

倉俣は、銀座のランドマークとなる商業施設「三愛ドリームセンター」の店内設計の仕事を機に、都市の商業空間のインテリアデザインを志しました。                      本章では、独立前の仕事を収めた「スクラップブック」などが展示されています。

第1章 視覚より少し奥へ1965–1968

1965年にはクラマタデザイン事務所を設立して独立します。商業施設のインテリアデザインを行う一方で、商品化を前提とせず、自主的に制作した家具を発表していきます。           この章では、《引出しの家具》、《ピラミッドの家具》などが展示されています。

第2章 引出しのなか1969–1975

倉俣史朗《変型の家具Side 1》 1970年青島商店エムプラス蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

白い化粧板と黒のポリウレタン塗装からなる《変型の家具 Side 1》は、18の引出をもつS字カーブが美しい曲線の家具。

倉俣史朗《ランプ(オバQ)[小]》1972年個人蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

《ランプ(オバQ)[小]》は、アクリルを熱で変形させた照明器具。
光もまた、素材として倉俣の作品を形成しているようです。

第3章 引力と無重力1976–1987

倉俣史朗《硝子の椅子》 1976年京都国立近代美術館蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

京都国立近代美術館の本展メインヴィジュアルとなっている《硝子の椅子》は、1976年にデザインされた倉俣史朗の代表作で、最小限の構造によって成り立っています。
ガラス同士を接着できるフォトボンドを三保谷硝子が持ち込むと、倉俣は30分後に椅子の図面を引き、翌日には試作品が完成したといわれています。2001年宇宙の旅」に登場する、宇宙ステーションのインテリアをイメージしたとも、言われています。
石板ガラスを接着したのみで、素材の性質を生かした最小限の構造の家具。緊張感のある美しさです。

倉俣史朗《トウキョウ》 1983年株式会社イシマル蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

倉俣は自らのイメージに合う新たな素材を職人とともに試行錯誤しながら実用化し、作品に取り入れています。

倉俣史朗《椅子の椅子》 1984年富山県美術館蔵
撮影:柳原良平© Kuramata Design Office

倉俣史朗《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》 1986年富山県美術館蔵
撮影:柳原良平© Kuramata Design Office

《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》は、エキスパンドメタルによって外形を表現し、中は空洞となっています。」

第4章 かろやかな音色1988–1991

倉俣史朗《ミス・ブランチ》 1988年石橋財団アーティゾン美術館蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

「美もまた機能である。」生前の倉俣史朗はたびたび、そう口にしたといいます。
今も人々を魅了する《ミス・ブランチ》は、倉俣の美学に彩られた数多くの作品の中でも際立っていて、発表から35年を迎えた今も、私たちに新鮮な驚きと感動を与えてくれます。
1988年に発表、その後、製品化された《ミス・ブランチ》は、バラの造花を封入したアクリル製の背、座、アームからなり、紫に染色されたアルミアルマイトの脚部が付いたもの。当初の生産数は56脚で、倉俣の享年と同数。後に18脚が追加生産されました。倉俣の最高傑作と言われています。

倉俣史朗《アクリルサイドテーブル#2》 1989年株式会社イシマル蔵
撮影:渞忠之© Kuramata Design Office

《硝子の椅子》を経て、倉俣の作品には曲線や淡い色使いが用いられるようになります。80年代にかけて、いわゆるポストモダンへと作風が転換する時期の作品としても重要です。

エピローグ 未現像の風景

田中信太郎宛書簡、イメージスケッチ「夢日記」などが展示されています。

倉俣のインテリアや家具は、当時の雑誌でも、その時々の言葉と共に毎月のように紹介され、デザインと一見関係のなさそうな幼少期の思い出や、夢に見たことなどが添えられていました。                                               本展では、倉俣自身の言葉を辿りながら、若き日の作品から《硝子の椅子》、《ミス・ブランチ》などの代表作、スケッチ、初公開資料などあわせて200点を超える作品が展示されています。
いまなお、人々を魅了する倉俣が創造した究極の美の世界を是非、ご堪能ください。

展覧会概要

展覧会名:「倉俣史朗のデザイン─記憶のなかの小宇宙」
会期:2024年6月11日(火)~8月18日(日)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで。
休館日:月曜日(ただし7月15日(月・祝)、8月12日(月・祝)は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
観覧料 一般1,700円(1,500円)、大学生1,100円(900円)、高校生600円(400円)
※本料金でコレクション展もご覧頂けます。※()内は前売および20名以上の団体料金。
※中学生以下無料。心身に障がいのある方と付添者1名は無料。母子・父子家庭の世帯員の方は無料。入館の際に証明できるものをご提示ください。
【お問合せ】 075-761-4111
[美術館公式HP] https://www.momak.go.jp/

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「倉俣史朗のデザイン─記憶のなかの小宇宙」@京都国立近代美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上2組4名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2024年6月24日 月曜日 24:00
記載内容
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