六本木の森美術館において、森美術館開館20周年記念展「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」が3月31日(日)まで開催されています。
現在、世界共通の課題である環境危機に対して、現代アートがどのように向き合い、私たちの問題としていかに意識が喚起されるのか。世界16カ国、34人のアーティストが作品に込めたコンセプトや隠喩、素材、制作プロセスなどを読み解き、ともに未来の可能性を考えるものとなっています。

展示風景:ニナ・カネル《マッスル・メモリー(5トン)》 2023年
photo©︎saitomoichi

本展覧会の特徴の一つは、「環境に配慮した展示デザイン」です。前回の「ワールド・クラスルーム」展の展示壁および壁パネルの一部を再利用し、塗装仕上げを省くことで環境に配慮した展示デザインとしています。また、世界初の100%リサイクル可能な石膏ボードを採用するほか、再生素材を活用した建材の使用、資材の再利用による廃棄物の削減など省資源化に取り組んでいるとのことです。

展示は4章構成です。

「第1章 全ては繋がっている」

本展覧会では「エコロジー」を「環境」だけではなく拡張した言葉として使っています。第1章では、この地球上の生物、非生物を含む森羅万象は、何らかの循環の一部であり、その循環をとおしてこの地球に存在する全てのモノ、コトは繋がっている、そのような循環や繋がりのプロセスを様々な形で表現する現代アーティストたちの作品を紹介しています。
社会や経済のシステムと、動植物などの生態系とをつなぐ視点で制作しているハンス・ハーケの作品や、貝殻という有機物が建材に変換されるプロセスを来場者自身に追体験させる、ニナ・カネルの大規模なインスタレーションがあります。この貝殻は来場者に踏まれて粉砕され、会期終了後にセメントの原材料として再利用される予定です。

展示風景:セシリア・ヴィクーニャ《キープ・ギロク》 2021年
photo©︎saitomoichi

展示風景:エミリヤ・シュカルヌリーテ《時の矢》 2023年 (ビデオ・インスタレーションのスチール)
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展示風景:アピチャッポン・ウィーラセタクン《ナイト・コロニー》 2021年 (ビデオのスチール)
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「第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」

第2章はゲスト・キューレーターのカリフォルニア大学アーバイン校美術史学科教授バート・ウィンザー=タマキが企画・監修しています。日本も他の国同様に戦後の高度経済成長期において、自然災害や工業汚染、放射能汚染などに起因する深刻な環境問題に見舞われました。ここでは、日本のアーティストがこれらの環境問題にどのように向き合ってきたか、50年代、60年代、70年代、80年代と時系列に考察しながら、各時代の代表的な表現方法の変遷を辿っています。

展示風景:第2章の始まりにある年表
photo©︎saitomoichi

展示風景:ドキュメンタリー写真の展示
photo©︎saitomoichi

「第3章 大いなる加速」

第3章では、産業革命以降、加速度的に発展した科学技術や産業社会がもたらした短期間での地球環境の変化に対して、警鐘を鳴らすような作品が並びます。モニラ・アルカディリの養殖真珠を主題とした新作では、ブルーの壁と床の空間に青白い球体が浮かぶ中で、「侵入」「搾取」「干渉」「劣化」「変貌」をテーマとするテキストを読み上げる声が響き、自然の生態系に深く介入する人間の欲望と夢が表現されています。また、保良雄は、新作《fruiting body》(2023)において、長い時間をかけて自然に形成された大理石と産業廃棄物を高温溶解させてできるスラグを並べることで、異なる時間軸を表現しました。

展示風景:モニラ・アルカディリ《恨み言》 2023年
photo©︎saitomoichi

展示風景:保良雄《fruiting body》 2023年
photo©︎saitomoichi

展示風景:ダニエル・ターナー《気圧計ワニス》 2023年
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展示風景:アリ・シェリ 《人と神と泥について》 2022年
photo©︎saitomoichi

「第4章 未来は私たちの中にある」

最後の第4章では、私たち自身が招いた「環境危機」に対して、私たちにはどのような選択肢が残されているのかを考察し、最先端のテクノロジーと古来の技術の双方の考察をとおして、新たな未来の可能性を描いています。1960年代から一貫して、エコロジーを題材とした作品を発表してきたアグネス・デネスの《小麦畑ー対決:バッテリー・パーク埋立地、ダウンタウン・マンハッタン》(1982)は、ニューヨークのバッテリー・パークの埋立地から産業廃棄物を撤去して小麦を植えるという試みです。ニュージーランド出身のケイト・ニュービーは、森美術館と銀座メゾンエルメスの間のビジネス街で採集したテラゾと青梅市で藍染めされた布地で《ファイヤー!!!!!!!》(2023)を制作しました。

展示風景:アグネス・デネスの展示エリア
photo©︎saitomoichi

展示風景:ケイト・ニュービー《ファイヤー!!!!!!!》 2023年
photo©︎saitomoichi

展示風景:西條 茜《果樹園》 2022年
photo©︎saitomoichi

展示風景:シェロワナウィ・ハキヒウィの展示エリア
photo©︎saitomoichi

展示風景:松澤宥《私の死(時間の中にのみ存在する絵画)》 1970年
photo©︎saitomoichi

最後の展示室には、ニューヨーク出身のアーティスト、アサド・ラザによる新作インスタレーション《木漏れ日》(2023)があります。これは、この場所の天窓の故障したロールスクリーンを修理する過程を作品化したものです。檜で木製の足場を組み上げ、宮司による神事も行われました。太古の森に改めて、エコロジーを語る上でなくてはならない「太陽光」が降り注ぐ様子を思い起こさせます。

展示風景:アサド・ラザ《木漏れ日》 2023年
photo©︎saitomoichi

すでに「環境問題」が語られるようになってから長い年月が経っていますが、今日では喫緊の最重要課題となってしまいました。今展覧会は、これらの課題に人間中心主義的な視点ではない多様な視点で考えることを提案し、多様な生態系が存在する地球を見つめ直すことを促します。そして、この美術館自体がその解決の対話を生む場になることも示唆されます。
ぜひ、この場に身を置いて、地球という惑星を生きるために何が必要か、何が出来るか、考えてみましょう。

概要

森美術館開館20周年記念展
私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
環境危機に現代アートはどう向き合うのか?

会期:開催中~2024年3月31日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~22:00(火のみ~17:00、ただし3月19日は〜22:00、10月26日は〜16:00)
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2000円 / 高校・大学生 1400円 / 4歳~中学生 800円 / 65歳以上 1700円
[土・日・休日]一般 2200円 / 高校・大学生 1500円 / 4歳~中学生 900円 / 65歳以上 1900円
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「森美術館開館20周年記念展 私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2024年2月4日 日曜日 24:00
記載内容
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