11月25日(土)に公開される映画『ほかげ』。
『鉄男』(89)でのセンセーショナルな劇場デビュー以後、世界中に熱狂的ファンを持ち、多くのクリエイターに影響を与えてきた塚本晋也。戦場の極限状況で変貌する人間を描いた『野火』(14)、太平の世が揺らぎ始めた幕末を舞台に生と暴力の本質に迫った『斬、』(18)、本作ではその流れを汲み、戦争を民衆の目線で描き、戦争に近づく現代の世相に問う。主演は、2023年後期のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインに抜擢され、今最も活躍が期待されている俳優、趣里。孤独と喪失を纏いながらも、期せずして出会った戦争孤児との関係にほのかな光を見出す様を繊細かつ大胆に演じ、戦争に翻弄されたひとりの女を見事に表現した。片腕が動かない謎の男を演じるのは、映像、舞台、ダンスとジャンルにとらわれない表現者である森山未來。そして、映画監督、俳優としても活躍する利重剛、大森立嗣が脇を固める。本作は、第80回ヴェネチア国際映画祭 オリゾンティ部門に出品され、同映画祭では日本人初のNETPAC賞(最優秀アジア映賞)を受賞。
また、第48回トロント国際映画祭 センターピース部門にも出品される等、国内外から熱い視線を集めている。

10月25日(水)に、第36回東京国際映画祭ガラ・セレクションで『ほかげ』の公式上映、舞台挨拶が行なわれ、アジアン・プレミアを迎えた。上映後の舞台挨拶には、塚本晋也監督と物語の狂言回しとなる戦争孤児を演じた塚尾桜雄、趣里演じる居酒屋の女のもとにやって来る復員兵役の河野宏紀が登壇。観客から惜しみない拍手が送られた。

<第36回東京国際映画祭 ガラ・セレクション『ほかげ』舞台挨拶>

■日程:10月25日(水)19:15~19:45 ※本編上映後の舞台挨拶 
■会場:TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12 (千代田区有楽町1丁目1−3 東京宝塚ビル B1階)
■登壇者: 塚尾桜雅、河野宏紀、塚本晋也監督(敬称略)

©2023 TIFF

塚本監督は「今日が日本で初めての上映です。お越しくださってありがとうございます。世界がきな臭くなっている今、どうしても描かねばと思って作りました」と挨拶し、観客に感謝の気持ちを述べた。続いて、挨拶を求められた塚尾は満員の客席に圧倒された様子で黙ってしまう一幕も。場内からは「がんばれー!」と声援が送られ、塚本監督も「緊張してる?」と声を掛け、助け舟を出すと、塚尾は「嬉しいです」と笑顔を見せた。また、今作では初の舞台挨拶登壇となった河野は、「日本を代表する映画祭に参加できてとても光栄です」と緊張した面持ちで挨拶を行った。

塚本晋也監督
©2023 TIFF

撮影時の思い出を尋ねられた塚尾は、「監督や趣里さん、森山さんや河野さんとたくさんお話ししながら撮影しました。夏だったのですごく暑かったんだけど、みんなでアイスを食べながら撮影したのがすごく楽しかったです」と一生懸命に話し、その様子に会場全体が温かな空気に包まれた。塚本監督は、「塚尾くんが撮影現場をいつも明るくしてくれたのが救いでしたね。ほっとしながら撮影できました」と振り返った。

塚尾桜雅さん
©2023 TIFF

自身で監督も務める河野は、「塚本監督はわんぱくな作品を撮られている方なのでとても緊張していたのですが、実際はすごく優しくて暖かくて、撮影中も集中しやすい環境を作ってくれたり、すごく気遣ってくれました」と塚本監督に感謝を述べ、「僕も映画監督として、今後もチャレンジしていきたいので、現場で色々吸収しようと思っていたんですが、そんな余裕はなかったです。でも、塚本監督を見ていると、とても細部にこだわっていらっしゃって。照明ひとつにしてもすごく時間を掛けていて、そのこだわりが素晴らしい映画を作り続けられる理由の一つなんだろうなと思いました」と塚本監督の現場での様子に感銘を受けたと語った。

河野宏紀さん
©2023 TIFF

河野を抜擢した理由を尋ねられた塚本監督が、「復員兵の役には500人以上の応募が来たんです。時節柄かなり絞り込んでオーディションしたのですが、河野くんは芝居が自然で、ウソを感じない。役に挑む姿勢のまっすぐな感じ、そして佇まいですね、大事なところですが、それが抜群に素晴らしかったんです」と称賛すると、河野は嬉しそうに微笑んだ。

最後に塚本監督は、「今日という最初の上映に来ていただいたことが、今、嚙み締めるように嬉しく思います。祈りの映画ですので、なんとか少しでも多くの方に届けたいです」と観客へ思いを託した。

©2023 TIFF

映画「ほかげ」予告編

映画「ほかげ」予告編

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【あらすじ】
女は、半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしている。体を売ることを斡旋され、戦争の絶望から抗うこともできずにその日を過ごしていた。空襲で家族をなくした子供がいる。闇市で食べ物を盗んで暮らしていたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にしてそこに入り浸るようになり・・・。

出演:趣里/塚尾桜雅 河野宏紀/利重剛 大森立嗣/森山未來
監督/脚本/撮影/編集:塚本晋也
助監督:林啓史 音楽:石川忠 音響演出:北田雅也

製作:海獣シアター 配給:新日本映画社
2023年/日本/95分/ビスタ/5.1ch/カラー

©2023 SHINYATSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

公式X:@hokage_movie  #ほかげ

2023年11月25日(土)ユーロスペースほか全国順次公開!