18世紀の京都では、多くの絵師たちが手腕をふるいましたが、なかでも、独創的で大胆な絵画表現で天才絵師ともいわれた伊藤若冲(1716~1800)と、写生を重視し、伝統的な日本画「円山派」の開祖である円山応挙(1733 ~95)は、今なお、人々を魅了する人気の絵師です。

若冲は、琳派絵画に見られる四季折々の植物の美しさを細密に描き、鶏や鶴、犬、虎、昆虫などを大胆奇抜に用いました。独特の画面構成、絵画技法を駆使した、斬新な「若冲ワールド」は、まさに「超絶技巧」。見る人すべてを惹きつけ、感動させます。
また、応挙は、常に懐中に写生帖を忍ばせ、写生を重視していたことが特徴で、写生の技術を基礎とし、日本絵画の伝統的な画題を繊細に装飾性豊かに描き出しました。

このたび京都・相国寺承天閣美術館では、Ⅰ期 2023年9月10日(日)〜2023年11月12日(日)Ⅱ期 2023年11月19日(日)〜2024年1月28日(日)の期間、「若冲と応挙」が開催されます。

本展では、相国寺と伊藤若冲の関係を軸に、相国寺と相国寺塔頭所蔵の作品が公開されます。
また、Ⅰ期は円山応挙の傑作、重要文化財《七難七福図巻》全三巻と画稿、下絵を、Ⅱ期は伊藤若冲の傑作、重要文化財の《鹿苑寺大書院障壁画》五十面が一挙公開されます。
今までの色彩豊かな彩色画とは対照的に、墨を用いて創り出したモノトーンの水墨画の世界は、究極の美学、まさに日本画の「粋」が感じられます。
是非、日本情緒あふれる秋の京都で「若冲と応挙」をご堪能ください。
それではシネフィルでも展覧会構成に従って、主な作品を観ていきましょう。

第1章 相国寺と若冲

明和2年(1765)9月29日、50歳の伊藤若冲は相国寺へ《釈迦三尊像》と動植物を精緻に描いた花鳥画《動植綵絵》(全30幅)を寄進しました。

釈迦三尊像 三幅のうち 釈迦如来像 伊藤若冲筆 江戸時代 相国寺蔵(通期)

釈迦三尊像は、中国の宋のものを若冲が模写しましたが、色鮮やかで精緻に描かれ、荘厳な雰囲気はオリジナルを超えていると言われています。

釈迦三尊像 三幅のうち 普賢菩薩像 伊藤若冲筆 江戸時代 相国寺蔵(通期)

釈迦三尊像 三幅のうち 文殊菩薩像 伊藤若冲筆 江戸時代 相国寺蔵(通期)

展覧会風景 photo by ©cinefil

展覧会風景 photo by © cinefil

展覧会風景 photo by © cinefil

第2章 若冲の画技

Ⅱ期では、若冲の重要文化財《鹿苑寺大書院障壁画》五十面が一挙公開されます。
宝暦9年(1759)若冲は若干44歳にして、色鮮やかな「動植綵絵」の連作と同時に、北山の鹿苑寺(金閣)大書院障壁画も手がけました。
今までの彩色画から墨を用いて斬新な水墨画の世界を創り出したのです。

重要文化財 松鶴図襖絵 伊藤若冲筆 鹿苑寺大書院障壁画五十面のうち八面 
江戸時代 鹿苑寺蔵(Ⅱ期)

重要文化財 竹図襖絵 伊藤若冲筆 鹿苑寺大書院障壁画五十面のうち四面 
江戸時代 鹿苑寺蔵(Ⅱ期)

第3章 応挙の画技

Ⅰ期では、応挙の重要文化財《七難七福図巻》が一挙公開されます。
応挙は、慈照寺銀閣へ仏画を奉納するなど、その交流が伺えます。
円山応挙の才能を早くから見抜いて庇護していたのは、滋賀の円満院の祐常法親王(1723〜73)でした。現在相国寺に所蔵されている重要文化財、七難七福図は、祐常の指示のもと、制作された傑作です。『仁王経』という経典に説かれた災いと福を描き出したものです。3年の歳月をかけて、36歳の応挙が完成させました。
円満院門主祐常親王は、応挙の主要なパトロンで、代表作の『七難七福図』、『牡丹孔雀図』などは第二次大戦後まで三井寺円満院に伝来したものです。

重要文化財 七難七福図巻 福寿巻(部分) 円山応挙筆 江戸時代 相国寺蔵(Ⅰ期)

重要文化財 七難七福図巻 天災巻(地震部分) 円山応挙筆 江戸時代 相国寺蔵(Ⅰ期)

今回は、依頼者の祐常によって描かれた下絵、それを受けた応挙の画稿、そして完成した大作絵巻を第Ⅰ期に展示いたします。ぜひ、実際の作品からその制作意図をたどってください。

七難七福図巻 天災巻 下絵(地震部分) 祐常筆 江戸時代 相国寺蔵(Ⅰ期)

七難七福図巻 天災巻 画稿(地震部分) 円山応挙筆 江戸時代 相国寺蔵(Ⅰ期)

若冲がその生涯をかけて、相国寺の大典禅師に捧げた《釈迦三尊像》と《動植綵絵》は、色彩豊かで、精緻に描かれ、まさに「圧巻」の芸術作品です。
《動植綵絵》は、四季折々の花鳥風月を鮮やかな色彩で細密に描き、若冲独特の「生きとし生けるものを愛する」精神で、ユーモアセンス溢れる奇想天外な世界を見せてくれます。
これとは対照的に、《鹿苑寺大書院障壁画》はシックなモノトーンの水墨画で、まさに日本画の「粋」が感じられる作品です。
「古いけれど新しい」、「伝統的だけれど斬新」。
それが、私たちが若冲に惹かれてやまない理由でしょう。
時空を超え、遥か江戸時代に思いを馳せ、相国寺で、若冲と応挙の作品をご堪能ください。

京都・相国寺承天閣美術館 外観写真

展覧会概要

展覧会名「若冲と応挙」
美術館名 相国寺承天閣美術館
会期 Ⅰ期 2023年9月10日(日)〜2023年11月12日(日)
Ⅱ期 2023年11月19日(日)〜2024年1月28日(日)
休館日 2023年11月13日(月)~2023年11月18日(土)
2023年12月27日(水)~2024年1月5日(金)
時間 10:00~17:00 (入館は16:30まで)
拝観料 一般 800円  65歳以上・大学生 600円
中高生 300円  小学生 200円
※一般の方に限り、20名様以上は団体割引で各700円
主催 相国寺承天閣美術館 京都新聞
協賛 一般財団法人 萬年会 鹿苑寺 慈照寺

関連イベント

★記念講演会
Ⅰ期 2023年10月14日(土)14:00~15:30二階講堂
講師 大阪国際大学 村田隆志先生
Ⅱ期2024年1月13日(土)14:00~15:30二階講堂
講師 皇居三の丸尚蔵館 上嶋悟史先生
※各回定員先着80名様

★ギャラリートーク
I期 10月7日(土)/11月4日(土)
II期 12月2日(土)/1月6日(土)
いずれも14:00~14:30 展示室
担当 承天閣美術館学芸員 本多潤子
※各イベントには当日の拝観券が必要です

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「若冲と応挙」@京都・相国寺承天閣美術館 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年9月25日 月曜日 24:00
記載内容
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