森美術館の20周年記念展「ワールド・クラスルーム: 現代アートの国語・算数・理科・社会」が9月24日まで開催中です。

学校で習う教科を現代アートの入口として、見たことのない、知らなかった世界に多様な観点から出会う試みです。展覧会のセクションは「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」に分かれています。ただし、実際はそれぞれの作品は複数の科目や領域に通じています。
森美術館の企画展としては初めて、出展作品約150点の半数以上を森美術館のコレクションが占める一方、本展のための新作も披露され、54組のアーティストによる学びの場、「世界の教室」が創出されています。片岡真実(森美術館館長)や熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)をはじめ、同館のキュレーターが企画に携わる展示です。

最初は「国語」のセクションです。言葉や言語をテーマにした作品、文学や詩の要素を含む作品を紹介します。コンセプチュアル・アートの提唱者のひとりであるジョセフ・コスースや、スーザン・ヒラー、ミヤギフトシ、米田知子、ワン・チンソン(王慶松)、イー・イランの作品が並びます。

会場風景より:米田智子の「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズの作品群 森美術館(東京)蔵
photo©️moichisaito

展示風景より:《ダンシング・クイーン》 イー・イラン 2019年 ステファニー・ユエン・ティオ、ティオ・シェン・イ蔵
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次は本展で最も大きなボリュームを占める「社会」のセクションです。「社会彫刻」という概念を提唱したヨーゼフ・ボイスが来日した際に残した黒板から始まり、世界各地の歴史、政治、地理、経済、アイデンティティに関わる課題を取りあげます。東洋人男性である自分自身の身体を「異物」として西洋絵画に挿入してきた森村泰昌、植民地支配をテーマにマットにテーブルの図像を織り込んだイー・イラン、思想家・活動家でもあるアイ・ウェイウェイ(艾未未)、ベトナム戦争の従軍画家をテーマにしたディン・Q・レ、インドネシアのコレクティブ、ジャカルタ・ウェイステッド・アーティストの新たな看板制作と引き換えにさまざまな商店から譲り受けた看板で構成した作品などが連なります。

展示風景より:左:《肖像(双子)》 1989年 右:《モデルヌ・オランピア2018》 2017–2018年 いずれも森村泰昌 森美術館(東京)蔵
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会場風景より:手前:《コカ・コーラの壷》 アイ・ウェイウェイ 1997年 個人蔵、奥:《漢時代の壷を落とす》 アイ・ウェイウェイ 1995/2009年 森美術館(東京)蔵
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会場風景より:《光と信念:ベトナム戦争の日々のスケッチ》 ディン・Q・レ 2012年 森美術館(東京)蔵
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会場風景より:《グラフィック・エクスチェンジ》 ジャカルタ・ウェイステッド・アーティスト 2015年  森美術館(東京)蔵
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三つ目のセクションは「哲学」です。生きることや世界の真理、普遍性を探究する哲学の分野は、古くから美術と非常に深い関係にありました。李禹煥(リ・ウファン)の《対話》《関係項》、奈良美智の《Miss Moonlight》、宮島達男の《Innumerable Life/Buddha CCIƆƆ-01》、さらにツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)の映像作品が続きます。

会場風景より:手前:《関係項》(1968/2019)、奥:《対話》 2017年 いずれも李禹煥 森美術館(東京)蔵
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四つめのセクションは「算数」です。極めてクリエイティブな領域でもある算数あるいは数学は、「数字」や「黄金比」などの神秘性もありながら、皆が共通して持つ概念や法則と普遍性を感じさせる作品で形作られています。工業化社会への批評的な作品のマリオ・メルツや「観念の形」シリーズの杉本博司、数値を配色や構図に転換する片山真妃の作品、そして数学的概念をパフォーマンスにした笹本晃の映像作品が紹介されています。

杉本博司 展示風景 Courtesy:ギャラリー小柳(東京)
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つづく「理科」のセクションでは、生物・物理・化学などの分野と関わる実験性の高い作品が多数見られます。また、気候変動や環境問題は、アーティストたちが関心を持ちテーマに取り上げてきました。サム・フォールズの作品は、地面に置いたキャンパスの上に草花や枝などの植物と染料を一緒に配してひと晩放置して、その後植物を取り除くという過程を経て制作されています。ソピアップ・ピッチの竹、籐などの身近な植物を使った彫刻は伝統的な手仕事と自然の関わりを感じさせます。白い箱が浮かぶエリアは宮永愛子の新作《Root of Steps》です。ナフタリンを使用して、六本木にまつわる人々の靴を模した彫刻によるインスタレーションです。

展示風景より:手前:《ラージ・シード》 ソピアップ・ピッチ 2015年 森美術館(東京)蔵、奥:《無題》 サム・フォールズ 2021年 森アートコレクション(東京)蔵
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展示風景より:《Root of Steps》 宮永愛子 2023年 作家蔵 制作協力:信越化学工業株式会社 Courtesy:ミヅマアートギャラリー(東京)
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「音楽」と「体育」のセクションは、映像作品で構成されています。「音楽」では、ジョン・ケージの《4分33秒》を流用するマノン・デ・ブールの映像作品やアジズ・ハザラの詩的映像、旧ユーゴスラビアで内戦後に生まれた子供たちが「マジカル・ワールド」を歌うヨハンナ・ビリングの作品などがあります。「体育」では、バレエを通じて規範や模倣を表現するクララ・リデンや「身体の政治性」を表象するクリスチャン・ヤンコフスキーの作品などがあります。

最後のセクションは「総合」です。ここでは、ひとつの科目に収まらず、より幅広い領域を横断するような作品やプロジェクトを紹介しています。現在、世界で最も注目を集めるアーティストのひとりであるヤン・ヘギュと、デンマークを中心に世界的に活躍するヤコブ・キルケゴールの新作などがあります。

展示風景より:《永遠の雲》 ヤコブ・キルケゴール 2023年 作家蔵
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ヤン・ヘギュ 展示風景
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現代アートを扱う現代美術館はまさに未知の世界に出会う場です。54組のアーティストによる学びの場、「世界の教室」をぜひ体験しに行きましょう。

展覧会概要

会期:開催中〜2023年9月24日
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間:10:00~22:00(火~17:00 ※5月2日、8月15日を除く)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:[平日]一般 2000円(1800円) / 高校・大学生 1400円(1300円) / 4歳~中学生 800円(700円)/ 65歳以上 1700円(1500円)
[土・日・休日]一般 2200円(2000円) / 高校・大学生 1500円(1400円) / 4歳~中学生 900円(800円) / 65歳以上 1900円(1700円)
※専用オンラインサイトで購入すると( )の料金を適用
電話:050-5541-8600
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、森美術館の20周年記念展「ワールド・クラスルーム: 現代アートの国語・算数・理科・社会」シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2023年7月9日 日曜日 24:00
記載内容
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