『アルプススタンドのはしの方』(城定秀夫監督)『神田川のふたり』(いまおかしんじ監督)などの話題作にご出演する平井亜門さんインタビュー。
主演最新作の『MOON and GOLDFISH』(飯塚冬酒 監督)をはじめ、いろいろなお話を伺ってきました。

平井亜門について

僕のこと・・・僕は・・・社交的で割と誰とでも仲良くなれるタイプだと思います。どんな現場でも楽しむようにしていますね。でもときどき頑固者になると思います。あと・・・嘘つくの嫌いかもしれないです。すぐ顔に出ちゃうかもしれないです。
僕、今、27歳なんです。
まだ20代前半って許されることでも、もうできないですよね。27歳ってもう大人としてしっかり見られるけど、もうこどものふりはできないですよね。
でも自分では、まだ大人になりきれないし、こどもの心はもったままでいたいなあ、って思います。
俳優の仕事、大好きです。この仕事、続けていきたいですね。

声優・歌手・俳優、すべてがつながる

今、俳優の他にも歌手や声優の仕事もさせていただいています。
全てがつながっていく感じがします。
声優の仕事って初めてだったんですけれど、最初は声だけで演じる部分が難しかったです。
俳優の場合はマイクつけていただいて、しっかり声を拾っていただけるので、多少声のトーンを落としてぼそぼそっとしたしゃべりでも成立すると思うんですけど、声優させていただいて気づいたことが言葉の粒が立っていないと伝わりにくいなあ、というところです。
自分で今まで意識していなかったところですけど、俳優の現場でリアリズムを追求するような普通のしゃべりでも言葉粒を立たせてしっかりと言葉を伝えるようなことができれば、自分の演技の幅が広がるのかな、と勉強になりました。
俳優だけでは気づけなかった欠点、なのかな・・・まざまざと気づくことができました。
他にも歌とトークのイベント(平井亜門 ヒライ・ア・モンパルナス)をさせていただいたり、モデルをさせていただいたり、自分で歌をつくったり、色々とチャレンジさせていただいていることはとても楽しいです。

影響を受けた映画

いろいろと好きな映画ありますけど・・・ジョン・カーニー監督の『シング・ストリート 未来へのうた』です。少年がバンド組んで、っていう映画なんですけど。お兄さんとの関係・・・お兄さんの葛藤もわかるんですけど、十代の弟に心をぶつけていくシーンに言葉の暴力を感じてしまったり、少年の眼から見た両親の関係など、終始ヒリヒリを感じる映画だと思います。ただヒリヒリだけではなくて音楽パートはキラキラしていて、よくできた音楽映画だと思います。その映画からジョン・カーニー監督が好きで、『once ダブリンの街角で』や『はじまりのうた』もみました
Amazonプライムのドラマシリーズ『モダン・ラブ』も手掛けられていて30分ちょっとのドラマなんですが1本が映画1本くらいの厚みがあって大好きな監督の一人です。

『MOON and GOLDFISH』撮影現場スチール

役へのアプローチ

わからないことをそのままで現場に行くことはしないようにしています。
自分の人生とは違う人を演じるわけですから、台本読んでわからない部分はできる限りなくしていくということをします。
あとは・・・がちがちに役を決めていく、ということはあまりしないです。僕の場合、そのアプローチだとなんか自分自身、嘘っぽくなっちゃう気がして・・・役の中にある自分の持っている要素を大切にしてあとは現場で素直に反応していく・・・というように思っています。
他の役者さんの台詞をきく、その空気を感じながらそれに反応していく、ということを大切にしています。自分がただただ台本通りの台詞を言うことだけでなく、その場の空気などを感じながら反応しながら演じていくことを心がけています。
相手の役者さんを活かせる俳優さんをみるといいなあ、とも思います。自分が目立つ、ということよりも全体をみながら演じていきたいです。
あとは、空間認識・・・現場での小物や立ち位置、実際の生活に根差した空間は気にしがちかな、と思います。

MOON and GOLDFISHのこと

監督には「恰好悪い平井亜門を撮りたい」(笑)って言われたんですね。
工場勤務で作業着、私服もださいし、爪も汚されて。
今まであまり演じたことのないナード(内向的)な役ですし・・・
恰好悪くなりましたかね(笑)。
撮影は・・・かなり忙しい時期で・・・。
他の現場と行き来をしていたのを覚えています。暑かったし。
今回の現場を一言でいうと・・・サイケデリック・・・混沌、カオスですかね。(笑

『MOON and GOLDFISH』撮影現場スチール

『MOON and GOLDFISH』は、『埃っぽい世界感』で描かれていて、お話としては複雑な難しい物語ではなく比較的ストレートなお話だと思います。
ただその中に、監督のちょっとした仕掛け・・・みたいなものがあってそこをどうとらえるか、ということは観る人が感じとる部分だと思います。
僕の役は・・・思い通りにならない世界に生きていながらもほんの少しだけ地味な一歩を踏み出す男の子だと思います。変えられない今の環境に抗うことなく、自分を変えていく、という役柄です。
モノクロ―ムですが、そこには生きている人の色が象徴的な映画です。

今のこと、これからのこと

一期一会っていうか、現場で人と会うことが楽しいですね。
いろんな人と出会えるし、一生合わないんだろうな、という人もなかにはいらっしゃると思うけど、奇跡的に仲良くなる人もいて・・・
比較的、若く見られることが多いので、この雰囲気もあり、お仕事たくさんさせていただけるのかな、と思いますけど・・・この先、歳とったらどんなところが自分の魅力になるのかな、ということを考えていないと怖い世界かな、と思います。
最近の仕事では『階段の先には踊り場がある』(木村聡志 監督)で会話劇、とくに8分の会話の長回しは自分の自信になりました。
こういう自信をひとつずつ身につけて、先に進んでいきたいと思います。

MOON and GOLDFISH(監督:飯塚冬酒)
2022年|日本|63分|5.1ch|スタンダードサイズ
製作・配給:GACHINKO Film
http://g-film.net/moon/
6月24日(土)~新宿K's cinema
7月8日(土)~横浜シネマ・ジャック&ベティ

撮影現場スチール:塩出太志 / インタビュー写真:岩川雪依 / ヘアメイク:ayadonald