現在公開中の『戦場のメリークリスマス4K 修復版』坂本龍一さん追悼ロードショーにつきまして、5/31(水)にゲストを迎えたトークイベントを行いました。以下、レポートをお送りいたします。
映画 『戦場のメリークリスマス4K 修復版』トークショー
日時：5月31日（水）
登壇者：ピエール瀧(電気グルーヴ)／吉村栄一(ライター／編集者)
このたび、電気グルーヴのピエール瀧さんと、ライターで編集者の吉村栄一さんをゲストに迎えたトークショーを開催。本作を改めて鑑賞して感じた、演技や音楽についての話のほか、坂本龍一さんとの思い出などを語っていただきました。
2021年４月１６日～2023年３月31日をもって、弊社アンプラグドの配給上映権が終了を迎えた『戦場のメリークリスマス4K 修復版』だが、2023年3月28日に本作のメインキャストであり、音楽を担当された坂本龍一さんが71歳でこの世を去ったことで、全国の映画館やお客様から追悼上映を希望する問合せが殺到。急遽特別に大島渚プロダクションの依頼と坂本龍一さんの事務所の協力により、追悼ロードショーとしてヒューマントラストシネマ有楽町ほか公開中。
大きな拍手に包まれて、ピエール瀧さんと吉村さんが登場。ピエール瀧さんは、YMOのファンであると同時に、ビートたけしさんが当時出演していた「オールナイトニッポン」も好きで、４０年前の初公開当時は、劇場に脚を運んで本作を鑑賞したそうだ。
その当時、高校生だったピエール瀧さんは、映画の感想としては「よく分からなかった」と率直な感想を述べながらも、「ただ、曲の良さは分かった」と絶賛。生まれて始めて購入したサウンドトラックが「戦メリ」であったことを明かした。その後、吉村さんから「撮影の舞台となったラロトンガ島は、今では観光地になっているんですよ」と聞かされたピエール瀧さんは、すかさず客席に向かって「行かれたことある方いますか？」と問うが手を挙げる人はおらず。「そこまでの連中じゃなかったか。肩の荷が降りました」と、笑顔を見せると、会場はどっと笑いに包まれ、終始和やかなムードでトークは繰り広げられた。
今回のトークショーに合わせて、久しぶりに本作を観返し、「今回、坂本さんの追悼でやっているイベントですけど、たけしさんの映画ですよね」とピエール瀧さん。「たけしさん演じるハラ軍曹がヨノイ（坂本龍一さん）に噛みつくんじゃないかとハラハラしました。“ハラ”だけに」と笑いを交えて、とくに印象的だったというビートたけしさんの演技を表現し、会場の笑いを誘った。
本作を高校生の時に初めて観て、その後、音楽の道を歩み、俳優業もこなすピエール瀧さんに「坂本龍一さんの後を継いでいるという感じですね」と吉村さんが切り出すと、ピエール瀧さんは「なんちゅう高いところに上げるんですか」とツッコみを入れる場面も。坂本龍一さんとの思い出として、自身の出演作でもある『アウトレイジ 最終章』の監督を務めるビートたけしさんの花束プレゼンターとして２０１８年の第２７回東京スポーツ映画賞の授賞式に参加した際、坂本龍一さんとビートたけしさんという‘まさに戦メリ’なお二人と円卓を囲んだ経験があると話し、坂本さんから「まぁまぁまぁ」とビールを継いでもらったことがとても嬉しかったと振り返った。「一緒の空間にいるだけでもすごいのに、注いでくださって、その一杯は味わって飲みました」と感慨深く語った。「そのグラスは持って帰ったんですか？」と吉村さんが質問するも、「ホテルのグラスなので、持って帰ったらパクっちゃうことになるじゃないですか！」と素早いツッコみでピエール瀧さんが返し、またもや観客から笑いが起こった。
続けて、ピエール瀧さんは「クラフトワークのライブに行った時、僕の隣の隣に坂本さんが座っていたんですよ！これってすごくないですか！？」と興奮気味に話し、「終演後にロビーに卓球くんがいたんで『坂本龍一がさー！』と話に行ったら、そこに坂本龍一さんがいたんですよ」と、嬉し恥ずかしなエピソードを披露した。吉村さんが、「坂本さん、実はピエール瀧さんのファンなんですよ」と明かし、続けてNHKの連続テレビ小説『あまちゃん』放送当時、坂本さんが住んでいたニューヨークでも放送しており、「ピエール瀧さんってどんなことやっているの？ってメッセージが来たよ」と驚きのエピソードを披露した。そのエピソードに、ピエール瀧さんは、「まじで！今年一番嬉しい！」と満面の笑みで喜んだ。更に、坂本龍一さんが音楽を手掛けた『怒り』（１６）に、自身も南條邦久役で出演していたピエール瀧さんだが、「“南條のテーマ”とか作れば良かったな」と坂本さんが話していたことも、吉村さんから打ち明けられた。
最後に、本作を改めて鑑賞した際、気づいたことが１つあったと話し始めたピエール瀧さん。「『戦メリ』はセリフのほとんどが何言っているか分からないんですよ。でも僕自身も俳優を始めた頃、セリフを言うスピードが思ったよりも早く、何を言っているか分からないとこがあって、最初は強弱の入れ方やコントロールの仕方が分からないんですよね」と自信の俳優経験も交えながら、坂本龍一さんとビートたけしさんの演技を解説した。
最後に、出来上がった映画本編を初号試写で観たビートたけしさんと坂本さんが、自身の演技のレベルに焦り、フィルムを燃やそうとしたという有名なエピソードは本人たちから直接聞きましたと明かし、「明日の朝まで語れる」と名残惜しそうにしながら、イベントは幕を閉じた。
左より吉村栄一(ライター／編集者)、ピエール瀧(電気グルーヴ)
出演：デヴィッド・ボウイ、トム・コンティ、坂本龍一、ビートたけし、ジャック・トンプソン、ジョニー大倉、内田裕也
監督・脚本：大島渚
脚本：ポール・マイヤーズバーグ
原作：サー・ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影の獄にて」
製作：ジェレミー・トーマス
撮影：成島東一郎 音楽：坂本龍一 美術：戸田重昌
1983年／日本=イギリス=ニュージーランド／英語・日本語／123分／ビスタサイズ／ステレオ
協力：大島渚プロダクション
配給・宣伝：アンプラグド
©大島渚プロダクション