PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が、2019年に創設した映画賞「大島渚賞」の第4回受賞者が、山﨑樹一郎(やまさき・じゅいちろう)監督に決定しました。岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら作品に向き合うという、独自のスタイルで映画製作を続ける唯一無二の監督です。
対象作品となった、2022年公開作の『やまぶき』は監督の長編第3作にあたり、日本映画史上初めてカンヌ映画祭のACID部門に選出されたほか、14の海外映画祭で話題をさらった注目作です。
「このもやもやした生きづらさに一撃を!」のキャッチフレーズのもと、クラウドファンディングで資金を集め、16ミリフィルムで撮影に挑んだほか、主演に韓国人俳優を起用し、フランスの製作会社と共同製作を行うという国際色豊かな一面をもつ本作に対して、「段違いの大きなスケールをもった映画である」と審査員の意見が一致し、授賞が決定しました。
3月14日(火)に実施する授賞式で、審査員の黒沢清監督らから審査講評が発表されますので、ぜひご注目ください。また翌15日(水)には、一般向けに記念上映会を開催いたします。『やまぶき』の上映、山﨑樹一郎監督らゲストによるトークショーに加え、今年も大島渚監督作品の上映を行います。上映作品やゲストなどのイベント詳細は、2月末に発表予定です。
山﨑樹一郎(やまさき・じゅいちろう)
1978年、大阪府生まれ。京都文教大学で文化人類学を学ぶ傍ら、京都国際学生映画祭の企画運営や自主映画製作を始める。2006年に岡山県真庭市の山間に移住し、農業に携わりながら映画製作を始める。初長編作品『ひかりのおと』(2011)は岡山県内51カ所で巡回上映を行う一方、東京国際映画祭やロッテルダム国際映画祭ブライト・フューチャー部門にも招待される。また、ドイツのニッポンコネクション映画祭にてニッポン・ヴィジョンズ・アワードを受賞。第2作『新しき民』(2014)はニューヨーク・ジャパンカッツ映画祭にてクロージング上映され、ニューヨーク・タイムス紙でも高く評価された。さらに、高崎映画祭新進監督グランプリを受賞。映画制作と並行して、フランスのメソッドをモデルにした映画鑑賞教育を真庭市内の学校などで実践している。
監督・脚本:山﨑樹一郎
出演:カン・ユンス、祷キララ、川瀬陽太、和田光沙、三浦誠己、
青木崇高、桜まゆみ、松浦祐也、黒住尚生
STORY
かつて韓国の乗馬競技のホープだったチャンスは、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。岡山県真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める―。
■大島渚賞とは?
「大島渚賞」は、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られる賞です。かつて、大島渚監督が高い志を持って世界に挑戦していったように、それに続く次世代の監督を、期待と称賛を込めて顕彰します。
<過去の受賞者>
第1回:小田香監督 『セノーテ』 / 第2回:該当者なし / 第3回:藤元明緒監督 『海辺の彼女たち』
<審査員>
審査員長:坂本龍一氏(音楽家) 審査員:黒沢清氏(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)※坂本龍一氏は療養中のため、今回の審査には参加されておりません。
<対象となる監督>
・日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度まで)
・原則として前年に発表された作品がある
※大島渚監督作品を知る世界各国の映画人より推薦を募り、審査員が授賞者を決定します。
■「第4回大島渚賞 記念上映会」
日時:3月15日(水)
会場:丸ビルホール
上映作品:『やまぶき』+大島渚監督作品
※山﨑樹一郎監督らによるトークショーあり