吉村界人・武田梨奈W主演、アベラヒデノブ監督による最新長編映画『ジャパニーズスタイル/Japanese Style』が、現在ユーロスペース、シネマ・ロサほか全国で公開中です。

STORY
2019年の大みそか。「巨大な絵を完成させようとする男」と、「袋とじを綺麗に開ける特技を持つ女」が空港で偶然の出会いを果たした。二人の男女は、とある事情により、トゥクトゥクに乗って横浜の街をさすらうことに。彼らはその道中で惹かれあっていくが、それと同時に互いの秘められた過去が徐々に明らかになっていく。2020年まであと数時間・・・。互いにやり残したことを抱える二人は、果たしてどんな新年を迎えるのだろうか?

この度、シネフィルでは、『ジャパニーズスタイル』の監督アベラヒデノブさんに独占インタビューをおこないました。
下記、インタビューとなります。メイキング写真と合わせご紹介いたします。

アベラヒデノブ監督 PROFILE
映画監督・脚本家・俳優。1989年ニューヨーク生まれ、大阪府出身。
監督・脚本・主演「死にたすぎるハダカ」(12)が2012年モントリオール・ファンタジア映画祭入賞。監督・脚本「めちゃくちゃなステップで」(14)SSFF & ASIA 2014 UULAアワード グランプリ他、受賞歴多数。
監督として、ドラマ「量産型リコ」(TX/22)「ムショぼけ」(ABC/21)「東京放置食堂」(TX/21)「歩くひと」(NHK/20-21)など。
脚本で 「今どきの若いモンは」(WOWOW/22)など。
12月23日より映画「ジャパニーズスタイル」が全国公開。
また、俳優としてはNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(木村慎一役)よるドラ「恋せぬふたり」(石川大輔 役)映画「ヤクザと家族」(松田翔也役)にも出演し、活躍の幅を広げている。

■「ジャパニーズスタイル」公開おめでとうございます。まず、吉村界人さんの「大晦日ならみんな空いてるだろ。映画撮ろう。」から始まった企画ということなのですが、どのようにしてこの映画の内容は決まり、特にタイトルはどうして決まっていったのでしょう?

どうせ大晦日に撮影するなら、フィクションではなくて本物の大晦日の様子を映像に収めたいなと、皆んなで盛り上がりました。
横浜のカウントダウンの大輪の花火や、旅立ってゆく飛行場の人々など、この映画にはノンフィクションな年末年始の空気が漂っています。
そしてタイトルの「ジャパニーズスタイル」(まさか映画公開前に放送されるTVドラマのタイトルとダダ被るとは思っていなかった笑)ですが、日本の大晦日には厳かな雰囲気がありますよね。「Happy new year」と「大晦日」二つを並べてみても圧倒的に日本は堅苦しくてしょうがない。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

アベラが脚本を好きに書いてみてよ!という流れが生まれた時、僕にはもう駆け引きや我慢をしている時間は残されていませんでした。
僕はアメリカ合衆国ニューヨーク生まれ。だが英語は喋れないし身長も低いし顔も薄い。
そんなコンプレックスを存分に本編へと挿入しました笑。
ある時「袋とじ」を英語で何というのか調べてみた。とある英和辞典に「Japanese Style」とあった。僕はゾクゾクした。日本人の隠蔽体質。限界まで乗っかってやろうと思いました。
「良くも悪くも日本人特有の袋とじがビリビリと破かれ、隠蔽していた真実が曝け出されるような物語」を目指そうと思いました。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

■吉村界人×武田梨奈のお二人が企画の名を連ね、そしてW主演ということなのですが、実際プロデューサーの雨無さんを含め、若い時からのよく知っている方々だと思うのですが、そういうメンバーと作るという中で、どのように意見をまとめて脚本にしていったのですか?

正直覚えてないですね。ですがカイトが「トゥクトゥクいいよな!」確か武田はんが「スケートリンクいい!」など色々やりたいアイデアを出していって、僕も良いと思う時だけ頷いたり。

自分の意見も歯に衣着せずに述べたと思います。僕はとにかくヒリヒリしている人間を描きたかった。タイムリミットとしての大晦日がそれです。
そうすると骨格がなんとなく見えてくる。大晦日の空港でやるべきことをやり終えていないギリギリの男女が出会い、トゥクトゥクに乗って小旅行をしながら、互いの問題を解決していく。でも1番問題だったのは互いに嘘をついていたことであり、それこそが日本人の欠点である隠蔽体質的な袋とじだった。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

後は「恋愛ものにしたくない」ってのは皆んなの中にもあった気がします。僕自身も男女の友情を信じていないと同時に信じたいタイプなので。
この映画が一線を超えてしまうと性欲に負けたクソみたいな現実に押し潰される想定内の映画になってしまうなと。そこだけは抗いたいなと。ハリウッド映画ならきっと主人公の二人は一線を越えています。
そんな当たり前な幸せなんてぶち壊したい。ただ息をしてカップラーメンを食って凍えてタバコ吸って、そうやって生きていることそのものがどれだけ尊いか。
僕はそんな価値を信じたいのです。ダサくて結構、このままの人生を最高だと笑える人間になりたいのです。

■映画は、アベラ監督らしい切り口でしたが、よりシャープというか疾走感が溢れて気持ちよかったです。トゥクトゥクが登場し、フェルナンデス直行さんの軽妙な雰囲気とあって前半のいい味を出していますよね。その辺りの発想は?

外国の方って人前で鼻歌を大声で歌っても、それがとても良く似合う気がするんです。それに顰めっ面をするのはいつだって日本人で。いいじゃないですか。歌いたい歌を歌って。10人中9人が馬鹿にするようなことを死ぬほど大事にして。自分自身を世界の誰よりも誇りに思って。
「ユーアーダークサイド?辛い顔暗い顔ダメ!運気落ちるよ!」というセリフも書いた。
フェルナンデスくんにはそんな希望を託したんです。彼はアドリブ芝居の天才でもあります。むしろ少し我慢してもらったくらいです。カットした場面には彼の天才的なアドリブがもっとたくさん秘められています。
この役を純粋な日本人が演じていても説得力がない。フェルさんが背負ってきたバックボーンは凄まじい。かつて、彼はそれを笑いながらオーディションで語ってくれた。こんなに強い人がいるのかと、面白い人がいるのだと感動したんです。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

■実際に2019年大晦日にクランクインした現場だったらしいですが、ある意味すごい思い出に残る現場だったと思います。その上、すぐその後コロナになってしまい日本中が止まったわけなので、すごく貴重な時間だったと思うのですが、今思うとどう感じられますか?

幸せでした。この上ない幸せ。
大晦日にクランクインして、本番中にカウントダウンで大輪の花火を拝み、家には戻らずに数人のスタッフたちと横浜のスーパー銭湯に泊まって一杯やりました。マスクなしで大いに笑い合って、アホみたいに雑魚寝して、これ以上の幸せがこの世にあるのかと。
それはコロナによって世界が停止したからこそ、今だからこそより一層思います。幸せだった。

そして今、再び日本人ばかりがいつまでもマスクに囚われている。いい加減にしろよと思いながらも、こんな日本人的性質が自分の五臓六腑に染み渡っているのも同時に感じます。
世界はおそらく元には戻らない。だからこそ、コロナ禍前の無責任な幸せを謳歌できた自分を幸運だなと思います。

■主演の吉村さんに一言

君は自分自身で理解できない無茶苦茶な演出(アベラの演出)じゃないと最高の君の芝居には辿り着けないんだ!早く新作をやろう!僕も成長したはずだ!もっと無茶苦茶やってやる!

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

■同じく武田さんに一言

最高の映画をまた撮ってファンタジア映画祭にまた行きましょう。
最新のアクション映画を逆に今だからこそ撮っても良いと思う。
ともに「キル・ビル」を超えましょう。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

■雨無プロデューサーには?

カンヌ国際映画祭でパルムドールを撮りましょう。いつか。
言霊を信じて、しつこく言い続けることにしてみます。

■タイトル通り、映画では随所に日本らしさが散りばめられています。アベラ監督にとって『ジャパニーズスタイル』とは?

面倒くさいってことですね。こんなタイトルをつけたヤツにも言ってやりたい。あざといんだよ!カッコつけんな!
スタイルに囚われてる時点でキサマは差別主義だ!
スタイルなんか捨てろ!好きか嫌いか!自分の世界を自分中心に生きてみろ!ばかやろー!
フォロワー数も視聴率も観客動員数もクソくらえだバカやろー!こ
の映画を観てくれる全ての皆さんへ。愛しているぞばかやろー!

■実際に公開にあたって、大晦日にカウントダウンイベントも開催されるそうなんですが、どんなイベントになるのでしょうか?

22時からみんなで映画を観て、その後で乾杯してお酒飲んで年越しそばを食べて、笑って泣いて過ぎ去る年月に己のほうれい線を恨んでは大笑いする、そんな素敵な年越しパーティーです。
映画本編に登場した横浜の街角にある「ジャック&ベティ」での開催なので、その辺りのエモさは未曾有の体験になるはずです。
飲みましょう。

■アベラ監督の来年に向けての抱負など、一足先に教えてください。

オリジナル作品を作って、日本の監督全員を怖がらせたい。
NHKドラマにもっといい役で出演して、地下鉄で声かけられたい。
とにかく売れたい!僕はやっと来年で大殺界を抜ける!
今まで馬鹿にしてきた奴らよ!見てろよばかやろー!

すみません。。
でも…
嗚呼…僕は何かやらかしてみたい。そんなひと時を青春時代と呼ぶのだろう。

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

■公開に向けて、一言

この映画が公開できて本当に嬉しいです。
観に来てくださった皆様は日本の映画界を支える美しき背骨です。少しでもワクワクできたとしたら、是非ともSNSで拡散お願いいたします。
エゴサーチで追いかけます。
陳謝。

2022年12月20日 アベラヒデノブ(阿部羅秀伸)

©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会

映画『ジャパニーズスタイル』予告編

映画『ジャパニーズスタイル』予告編

youtu.be

STORY
2019 年の大晦日。「巨大な絵を完成させようとする男」と、「袋とじを綺麗に開ける特技を持つ女」が空港で偶然の 出会いを果たした。二人の男女は、とある事情により、トゥクトゥクに乗って横浜の街をさすらうことに。彼らは その道中で惹かれあっていくが、それと同時に互いの秘められた過去が徐々に明らかになっていく。2020 年まであ と数時間・・・互いにやり残したことを抱える二人は、果たしてどんな新年を迎えるのだろうか?

吉村界人 武田梨奈
三浦貴大 日高七海
佐藤玲 フェルナンデス直行 田中佐季 布施勇弥 みやび 長村航希
山崎潤

プロデューサー:雨無麻友子
脚本:アベラヒデノブ/敦賀零
音楽:茂野雅道
企画:雨無麻友子 アベラヒデノブ 吉村界人 武田梨奈
撮影:栗田東治郎 録音:寒川聖美 助監督:渡邉裕也
制作プロダクション:スタジオねこ

主題歌:貉幼稚園「あてのない旅」(最新アルバム『弾いて叩いて吹いて歌って』)
©2020映画「ジャパニーズスタイル」製作委員会
制作国:日本 制作年:2020年 本編93分

ユーロスペース、シネマ・ロサほか全国公開中!