清楚で気品漂う美人画で知られる近代日本画の巨匠・鏑木清方(1878-1972)の没後50年を記念する展覧会が東京で開催され、好評を博しました。 同展が2022年 5月 27日(金)から7月10日(日)まで、京都国立近代美術館において、開催されています。

「西の松園、東の清方」と言われ、京都画壇で活躍した上村松園と並び称された美人画家の巨匠・鏑木清方(1878-1972)。
清方が名声を得た傑作《築地明石町》は、1975年以来、長らく行方不明となっていたのですが、2018年に《新富町》《浜町河岸》とともに見つかり、東京の地名が作品名となった、幻の美人画三部作の再発見は美術界を賑わせました。

展覧会風景 photo by ©cinefil

《築地明石町》の公開は京都では95年ぶり、三部作揃っての公開は、関西初となります。
本展は、109件の日本画作品が一堂に会する大回顧展で、京都では45年ぶりの大規模な鏑木清方展となります。

「需(もと)められて画く場合、いはゆる美人画が多いけれども、自分の興味を置くところは生活にある。それも中層以下の階級の生活に最も惹かるる」
「そぞろごと」1935年『鏑木清方文集一』

「美人画」だけにとどまらない、清方の美意識が感じられます。                 清方が真に描きたかったという「市井の人々の暮らし」を、ご鑑賞ください。            これまでの清方展には出なかった作品も多数紹介されています。                是非、この機会に「清方の美学」が感じられる「没後50年 鏑木清方展」へお運びください。    それでは、シネフィルでも清方作品を観ていきましょう。

東京会場では「生活をえがく」「物語をえがく」「小さくえがく」という作品のテーマ別に構成されていましたが、京都展では年代順になっています。

左 鏑木清方 《雛市》 1901(明治34)年 公益財団法人 北野美術館、通期展示
photo by ©cinefil

東京日本橋の雛市を描いた清方23歳の初期作品。
明治時代の人々の暮らしぶりが生き生きと描かれていて、清方の風俗への興味がうかがえます。

左 鏑木清方 《一葉女史の墓》 
1902(明治35)年  鎌倉市鏑木清方記念美術館、5月27日~6月12日展示 photo by ©cinefil

泉鏡花の『一葉の墓』を読み、その墓を訪ねた清方は、線香の煙の向こうに樋口一葉の名作『たけくらべ』のヒロイン・美登利の幻を見たと語っています。
この出来事に着想を得て、《一葉女史の墓》が描かれ、「生活をえがく」、「物語をえがく」の初期作品となったのです。 

鏑木清方 《道成寺(山づくし)鷺娘》
 1920(大正9)年、福富太郎コレクション資料室、5月27日~7月3日展示
絹本彩色・屏風(二曲一双) photo by ©cinefilte

歌舞伎舞踊の名作「京鹿の子娘道成寺」(きょうかのこむすめどうじょうじ)【左隻】と「鷲娘」(わしむすめ)【右隻】に取材しています。
恋の妄執にとらわれた異界のふたり、清姫の化身である白拍子(しらびょうし)花子は激しく、鷲の化身である鷲娘はしっとりと表現されています。

鏑木清方 《泉》 1922(大正11)年 公益財団法人 二階堂美術館、通期展示

雄大な自然の中で水を汲む女性の後ろ姿が描かれ、生活感だけでなく、その人の人生までも想像させられます。
「自分の感興は形よりも季節を人間に感じて、季節と人間との間に、自然と融合されて来た何かの美しい感覚によって大抵の場合は絵を作っている」
「春への連想」 1936年 『鏑木清方文集四』

鏑木清方 《朝涼》
 1925(大正14)年 鎌倉市鏑木清方記念美術館、6月21日~7月10日展示

「かおりの高い絵を作りたい、作りたいより自ら生まれるやうになりたい」
「かをり」 1934年 『鏑木清方文集八』 

鏑木清方 《築地明石町》 1927(昭和2)年 東京国立近代美術館、通期展示

《築地明石町》は、清方が描く美人画の中でも最高峰と称賛されています。
1927年の帝展で帝国美術院賞を受賞しました。
描かれているのは、外国人居留地だった明石町に佇む薄緑色の単衣に黒の羽織の女性。
優美で品格ある凛とした中に、どこか儚げな感じがします。透明感のある美しい肌、髪は夜会巻きにしています。
清方にとって思い出深い明治30年代半ばの明石町の光景と物憂げな表情で振り返る女性に、明治回顧の心情が託されているようです。

鏑木清方 《新富町》 1930(昭和5)年 東京国立近代美術館、通期展示

1878年(明治11)に新築された新富座の前を、蛇の目傘をさして急いで通り過ぎる新富芸者が描かれています。
有数の花街であった新富町ですが、清方が通っていた小学校があり、自分にとって思い出深い場所を描いたようです。

鏑木清方 《浜町河岸》 1930(昭和5)年 東京国立近代美術館、通期展示

《浜町河岸》は、浜町に日本舞踊の二代目藤間勘右衛門の家があり、浜町藤間流の日本舞踊の稽古から帰る町娘が描かれた作品。
帰る道すがら、何気なく踊りの仕草を復習する様子が描かれ、日常の何気ない庶民の生活のワンシーンが切り取られています。

鏑木清方 《三遊亭円朝像》 重要文化財

1930(昭和5)年 東京国立近代美術館、6月28日~7月10日展示
清方は戯作者でもあり、毎日新聞の前身にあたる東京日日新聞の創刊に関わった父・條野採菊の影響で幼いころから文学、芝居、歌舞伎、落語に親しみ、挿絵画家として、小説や物語を描くようになりました。
本作は父の仕事の関係で幼少のころから親しんだ明治の大噺家・三遊亭円朝を記憶と実物の小物を頼りにえがいた肖像画です。

鏑木清方 《鰯》 1937(昭和12)年頃 東京国立近代美術館、通期展示

鰯(いわし)を売り歩く少年を若妻が呼び止める夕暮れ時。
すだれ越しに家の奥の台所まで見通せます。
季節感や町のざわめき、明治の人々の日常生活の空気感や話し声までもが伝わってくるようです。
「昔親しんだ日常生活から得た云はば風物詩を造型化したもので、この制作態度はよくも悪くも私の本質となった。」(『続こしかたの記』)と、清方は綴っています。
まさに清方の真骨頂といえる作品です。

鏑木清方 《朝夕安居(朝)》
1948(昭和23)年  鎌倉市鏑木清方記念美術館、5月27日~6月9日展示

清方は大正時代後半に「卓上芸術」(清方の造語)なるものを確立しました。
「卓上芸術」とは、展覧会で見せる会場芸術、床の間で愛でる「床の間芸術」とは別の、卓上に広げ、手元で間近に鑑賞する小画面の作品を指しました。
画巻、画帖、色紙などに、細部まで表現を凝らし、筆の赴くまま即興的な筆技で描いています。

女性の美しさを繊細に描き出した清方は、それだけにとどまらず、風俗画として庶民の暮らしぶりを生き生きと描き出しました。
生涯をかけ、情熱を注いで描いた清方の美学が集結した「没後50年 鏑木清方展」を是非、新緑の風薫る京都でご堪能ください。

展覧会グッズ photo by ©cinefil

展覧会概要

展覧会名「没後50年 鏑木清方展」 
会 場 京都国立近代美術館(岡崎公園内)
会 期 2022年5月27日(金)~7月10日(日)
開館時間 9時30分~18時(金曜は20時 まで)
※入館は閉館の30分前まで。
休 館 日 月曜日
入 場 料 一 般|1,800円(1,600円)
大学生|1,100円(900円)
高校生|600円(400円)
※いずれも税込 ※( )内は前売および20名以上の団体(団体鑑賞の場合は事前に美術館にお問い合せください)
※中学生以下、心身に障がいのある方と付添者1名、母子家庭・
父子家庭の世帯員の方無料(入館の際に証明できるものをご提示)
※本料金でコレクション展もご覧いただけます。
主 催 京都国立近代美術館、毎日新聞社、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿
協 賛 DNP大日本印刷
お問合わせ 075-761-4111(代表)
公式サイト https://kiyokata2022.jp/
公式 Twitter  @kiyokata_2022

シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「没後50年 鏑木清方展」@京都シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、招待券をお送り致します。この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
★応募締め切りは2022年6月13日 月曜日 24:00
記載内容
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