富士山麓の織物産地である山梨県富士吉田市を舞台に、テキスタイルを活用した機屋展示・アート展のハイブリッド展「FUJI TEXTILE WEEK 2021(フジ テキスタイル ウィーク)」が開催中です(機屋展示は12月12日に終了)。

富士吉田市は、緑豊かな景観と富士山から流れ落ちる清涼な渓流の水の恵みによって、1000年以上続く織物の町として栄えてきました。しかし、近代化の流れとともに、日本のテキスタイルをとりまく産業は海外の産業スケールに押され、最盛期に6000軒以上あった機屋は現在200軒程に減っています。
そんななか、富士吉田市のテキスタイル産業シーンにはここ10年で多様な変化が起きています。地方創生への眼差しが増え、産業の再生を図るプロジェクトも立ち上がり、若い世代のクリエイターが移住してきました。そして地域と産業の再生と活性化の試みの成果として「FUJI TEXTILE WEEK 2021」が始まりました。

「織りと気配」を共通のテーマとして、アート展「Textile&Art展」と機屋展示「WARP&WEFT」で構成されており、中心市街地の空き店舗や蔵、旧銀行の建物などを舞台にした10組のアーティストによるアート作品展示と16の機屋による機屋展示が展開されています。

会場外観:製氷工場をギャラリーにリノベーションした「FUJIHIMURO」 左:会場入口 右:建物外観
photo©️saitomoichi

製氷工場をギャラリーにリノベーションした「FUJIHIMURO」では、4部屋に別れて今井俊介、児玉麻緒、高須賀活良、maison2,3(メゾン トゥ コンマ スリー)の作品が展示されています。

今井は機屋と共同で作品のイメージを模索する新たなコミュニケーションを展開しています。リアルなテキスタイルとその一部を絵画にすることで、テキスタイルと絵画の関係性を構築しています。

展示風景:テキスタイルの一部の絵画 今井俊介《Untitled》
photo©️saitomoichi

展示風景:実物のテキスタイル 今井俊介《Untitled》
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児玉麻緒は絵画と織物の共通点に関心を寄せ、富士吉田で地域と深く関りながら織物業を営む宮下織物、舟久保織物と共に自身の作品を素材とした新しい光の布の制作に臨みました。

展示風景 児玉麻緒《在る織る》
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maison2,3は恒久的なサステナブルデザインを探究し続けているユニットで、廃棄されたTシャツを素材にして木目込み技法のパッチワークで大きい地球を作りました。床は円形に鏡面となっており、この地球を揺らして動かすことができます。

展示風景 maison2,3《EYE》
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高須賀活良は織物製造で用いられる紋紙をモチーフに、人の記憶から溢れた情報を記録するモノの存在や、モノを媒介に人類が受け継ぐ知をテーマとした《Memory》を展示しています。商店街の元喫茶店だった空間にも別の作品があります。

展示風景 高須賀活良《Memory》
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町並みの裏に建つ「蔵の家」には、群裕美のインスタレーション作品と髙畠依子の絵画作品があります。
郡裕美は3階建ての蔵を使って、太古から未来へつづく織物の記憶を光と音で紡ぎ出すインスタレーションを展示しています。Bernhard Galとのコラボレーション作品です。幻想的な青い光に満たされた空間は、階ごとに異なる織物の時間層を体験できます。

1階展示風景 郡裕美 Yumi Kori collabpration with Bernhard Gal 《TSUMUGU》
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2階では蚕が桑を食む音に包まれます。

2階展示風景 郡裕美 Yumi Kori collabpration with Bernhard Gal 《TSUMUGU》
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髙畠依子は「キャンバスは織物」「キャンバスは白い」「空白のキャンバス」をテーマに制作しました。絵画の支持体であるキャンバスを富士吉田にある織物工房と共に制作し、富士山の溶岩鍾乳洞からインスピレーション得たという漆喰が垂れたような積み重なったような白い作品を蔵の各所に展示しています。

展示風景 髙畠依子《CAVE》
photo©️saitomoichi

展示風景 髙畠依子《CAVE》
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旧スルガ銀行支店の建物では大巻伸嗣と西尾美也の作品を体験できます。
1階ホール全体を使っているのは大巻伸嗣による下から吹き上げる制御された気流によって絶え間なく揺らぎ、変化し続ける布の作品《トキノカゲ》の富士吉田バージョンです。スケルトンになった内部空間に浮遊する布と外の商店街の風景を重ねてみることで、存在と時間の揺らぐ瞑想的な空間ができています。

展示風景 大巻伸嗣 《トキノカゲ》
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夜になると日中とは異なる外部風景が重なり、表情を大きく変えます。是非、その違いを時間をかけて体験して欲しいです。

展示風景(夜景) 大巻伸嗣 《トキノカゲ》
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旧スルガ銀行支店の屋上には、西尾美也の作品が広がります。これはモグラたたきのモグラのように穴から顔を出して富士山を眺めるというインスタレーションです。作家は富士吉田が「裏地の生産地」であることから服の裏地を縫い合わせて巨大な布を作りました。鑑賞者は色々な穴から見える景色の変化と、衣服の持つ「表と裏」の関係性を体験します。

展示風景 西尾美也 《裏地 / 裏富士》
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手塚愛子は、商店街にある数年前に閉店した元洋品店を白いギャラリー空間に改修して会場としています。この場所で洋品店を営んでいた100歳近い女性の人生と織物を解きほぐした作品を合わせてインスタレーションしています。

展示風景 手塚愛子《Loosening Fabric #6 100年―記憶の縫合》
photo©️saitomoichi

部分拡大写真 手塚愛子《Loosening Fabric #6 100年―記憶の縫合》
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商店街の空き地に佇む巨大な球体は奥中章人の作品です。ホログラム加工をしたポリフィルムを素材としており、光や風で表情が変化し続けます。内部に入ると、その変化は船酔いをするような感覚を生みます。こちらも大巻伸嗣の作品同様、日中と日が落ちた後の様子を楽しめます。この日は快晴でしたが、雨天時に内部に入ると雨の音が反響して面白い体験ができるとのことです。

展示風景 奥中章人《inter world/sphere》
photo©️saitomoichi

展示風景(夜景) 奥中章人《inter world/sphere》
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高須賀活良のもう一つの展示は商店街の元喫茶店だった空間を使っています。《スピーシーズ》は人主体の視点から離れ、動植物が複雑に関わり合う世界と生物のもつ狡猾で底知れない力を、人が消費する衣服に植え付けた無数の種(ひっつき虫)で表現した作品です。

展示風景 高須賀活良 《スピーシーズ》
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展示風景 高須賀活良 《スピーシーズ》 右はひっつき虫に赤い糸が巻きつけてある様子の拡大写真
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下は機屋展示の様子で、裏地のサンプルが並んでいます。富士吉田市のある郡内地域は、その昔、江戸で流通する粋な裏地のほとんどを作っていたとのことです。

機屋展示の展示風景
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富士吉田の地で産業として発展した織物が、時代を経て新たにアートの視点を取り入れた展開を見せています。「FUJI TEXTILE WEEK 2021」を通して富士吉田のアイデンティティーとテキスタイルの新たな魅力、可能性を発見しに行きましょう。

概要

アート展会期:開催中~2022年1月9日(機屋展示は12月12日に終了しました)
会場:山梨県富士吉田市下吉田本町通り周辺および地域の機織工場
開館時間:10:00~16:00 
     ※12月16日以降はツアー開催のみ・要予約(①10:00~12:00 ②13:00~15:00)
     ※ご予約なしでのご観覧はできませんので、ご注意ください。 
予約先=SARUYA HOSTEL(0555-75-2214)https://saruya-hostel.com/ja/ またはPeatix
休館日:12/20-22 ・12月27日~1月5日
料金:無料
主催:FUJI TEXTILE WEEK 実行委員会
協力:エヌ・アンド・エー株式会社 / 株式会社ロフトワーク / FabCafe LLP. / 株式会社ワンオー / 株式会社渡東 / 白百合醸造株式会社 / 本町二丁目商店街 / 本町三丁目商栄会 / 本町大好きおかみさん会
後援:山梨県富士吉田市
公式サイト:http://fujitextileweek.com