詩人、作家、そして映画監督としてその名を世界に轟かせたイタリアの異端児ピエル・パオロ・パゾリーニの生誕100年を記念し「パゾリーニ・フィルム・スペシャーレ1&2と題して『テオレマ 4Kスキャン版』『王女メディア』を2022年3月4日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開することが決定、 併せてポスタービジュアルが解禁されました。

1975年にローマ郊外で非業の死を遂げて45年以上の時を経た今もなお、世界中のシネフィルに支持される異才ピエル・ パオロ・パゾリーニ。2022年3月5日に生誕100年を迎えるのを記念し、日本国内においては1970年の劇場初公開以来、 映画祭以外では上映される機会のほとんどなかった2作品が スクリーンに甦る。

ピエル・パオロ・パゾリーニ
Pier Paolo Pasolini
1922年3月5日、ラヴェンナの伯爵家出身で陸軍将校の父カルロ・アルベルトと、フリウリ地方カザルサ生まれで教師の母スザンナ(コルッシ姓)の長男として、イタリアのボローニャに生まれる。父の転任に伴い幼少期は北イタリアを転々とする。母の影響で幼いころから詩を書き始める。39年、飛び級でボローニャ大学文学部に進学。ファシスト青年団GUFの映画上映会でルネ・クレールやルノワール、チャップリンに感銘を受ける。42年7月、20歳の時に、フリウリ地方の方言(フリウリ語)で書かかれた処女詩集『カザルサ詩集』を自費出版。47年、カザルサ近郊の中学校で教師として働き始めると同時に、共産党に入党するが、49年に同性の未成年への猥褻行為で訴えられ(のちに無罪となるが)免職となり、党からも除名される。50年、 母とローマの貧困地区に移り、詩や小説を書き続けながら、教職や新聞・雑誌への寄稿で生活費を捻出する。
55年5月に初の長編小説『生命ある若者』を出版し大いに話題となるが、7月に発禁処分となる(翌年の裁判で発禁は解かれる)。マリオ・ソルダーティ監督作『河の女』(54)の脚本執筆を機に映画界へ進出、以降、 フェデリコ・フェリーニ監督『カリビアの夜』(57)『甘い生活』(60)や、マウロ・ボロニーニ監督『狂った夜』(59)『汚れなき抱擁』(60)『狂った情事』(60)、ベルナルド・ベルトルッチ監督のデビュー作『殺し』(62)など数多くの脚本(共同脚本も含む)を執筆する。61年『アッカトーネ』で映画監督デビュー。翌年にはアンナ・マニャーニを主演に迎えた『マンマ・ローマ』を監督。「マタイによる福音書」を映画化した 『奇跡の丘』(64)はヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、米アカデミー賞でも3部門ノミネートを果たす。その後『アポロンの地獄』(67)や『テオレマ』(68)
『豚小屋』(69)といった衝撃作を放ち、不世出のディーヴァ、マリア・カラスを主演に迎えた『王女メディア』(69)を完成させる。続いて「生の三部作」と呼ばれる、『デカメロン』(71年ベルリン映画祭銀熊賞受賞)、『カンタベリー物語』(72年同映画祭 金熊賞受賞)、『アラビアンナイト』(74年カンヌ映画祭審査員大賞受賞)で高い評価を得る。75年春にマル キ・ド・サドの『ソドムの百二十日』を映画化した『ソドムの市』を撮影。同年11月2日未明、ローマ郊外のオスティア海岸で轢死体となって発見される。享年53歳。その死については諸説あり現在も謎に包まれている。『ソドムの市』は翌76年1月に劇場公開を迎える。死後、未発表の原稿が続々と発見され、イタリアでは98年から2003年にかけてパゾリーニ全集全11巻が刊行された。

“スペシャーレ1” は、現在公開中の映画『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』にも出演しているイギリスの名優テレンス・スタンプ主演の『テオレマ4Kスキャン版』
謎の《訪問者》によって次第に狂わされるブルジョワ一家を描いたパゾリーニ代表作の1本で、公開時は《訪問者》の解釈を巡って大論争を巻き起こした。共演には、当時ジャン=リュック・ゴダールの妻でもあったアンヌ・ヴィアゼムスキー、『家族の肖像』のシルヴァーナ・マンガーノなど。イタリアが生んだ名作曲家、エンニオ・モリコーネが音楽を手掛けている。29回ヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞(ラウラ・ベッティ)と同時に国際カトリック映画事務局賞を受賞したことで、イタリア・カトリック界で物議を醸し、猥褻罪に問われて裁判に発展。その後パゾリーニは無罪となり、裁判沙汰も手伝って映画は大ヒットとなった。今回は2020年に米クライテリオン社によってなされた、オリジナルネガからの4Kスキャンによる修復版での公開となる。

“スペシャーレ2”は、20世紀が誇るディーヴァマリア・カラスとの奇跡のコラボレーションによって生まれた1969年の『王女メディア』
『アポロンの地獄』(67)で初めて古代ギリシャを題材にとったパゾリーニが、エウリピデスのギリシャ悲劇「メディア」を元に再び神話世界を映像化したものだ。一切の映画出演オファーを 断り続けていたマリア・カラスが「この映画だけは断れない」と出演を承諾した唯一の映画主演作となっている。トルコ・カッパドキアの岩窟群やピエロ・トージによる美しい衣装も見どころだ。

併せて2作品のポスタービジュアルも解禁。『テオレマ』はテレンス・スタンプ演じる謎の《訪問者》の妖しい魅力溢れるカットを、『王女メディア』はマリア・カラス演じるメディアの鬼気迫る表情が印象的なカット を使用。「この、聖なるもの。」「あるいは、愛の過剰さについて。」というそれぞれのコピーによってパゾリーニ独特の世界観がさらに際立つポスターが完成した。

『テオレマ 4Kスキャン版』

(c) 1985 - Mondo TV S.p.A.

北イタリアの大都市、ミラノ郊外の大邸宅に暮らす裕福な一家の前に、ある日突然見知らぬ美しい青年が現れる。父親は多くの労働者を抱える大工場の持ち主。その夫に寄りそう美しい妻と無邪気な息子と娘、そして女中。 何の前触れもなく同居を始めたその青年は、それぞれを魅了し、関係を持つことで、ブルジョワの穏やかな日々をかき乱していく。青年の性的魅力と、神聖な不可解さに挑発され、狂わされた家族たちは、青年が去ると同時に崩壊の道を辿っていく...。

原案/監督/脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
撮影:ジュゼッペ・ルッツォリーニ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:テレンス・スタンプ、シルヴァーナ・マンガーノ、アンヌ・ヴィアゼムスキー

1968年/イタリア/ 99分/カラー/ 1:1.85ビスタビジョン
日本初公開:1970年4月11日/日本語字幕:菊地浩司 ※上映は4K素材から制作された2Kマスターとなります。
(c) 1985 - Mondo TV S.p.A.

『王女メディア』

MEDEA (c) 1969 SND (Groupe M6). All Rights Reserved.

イオルコス国王の遺児イアソンは、父の王位を奪った叔父ペリアスに王位返還を求める。叔父から未開の国コルキスにある〈金の羊皮〉を手に入れることを条件に出され旅に出たイアソンは、コルキス国王の娘メディアの心を射止めて〈金の羊皮〉の奪還に成功。しかし祖国に戻ったイアソンは王位返還の約束を反故にされ、メディアと共に隣国コリントスへ。そこで国王に見込まれたイアソンは、メディアを裏切って国王の娘と婚約してしまう。メディアは復讐を誓い...。

監督/脚本:ピエル・パオロ・パゾリーニ
製作:フランコ・ロッセリーニ
撮影:エンニオ・グァルニエリ
衣装:ピエロ・トージ
出演:マリア・カラス、ジュゼッペ・ジェンティーレ、マッシモ・ジロッティ

1969年/イタリア=フランス=西ドイツ/ 111分/カラー/ 1:1.85ビスタビジョン/
日本初公開:1970年7月17日/日本語字幕:関口英子
MEDEA (c) 1969 SND (Groupe M6). All Rights Reserved.

2022年3月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次ロードショー