新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言、まん延防止重点対応の映画館休業・時短営業要請により、十分な配給や興行ができなかった映画を集めて再上映する「COME BACK映画祭ーコロナ禍で影響を受けた映画たちー」が、12月4日(土)から19日(日)までの16日間、池袋のMixalive TOKYO地下2階のHall Mixaで開催中。
誰もが知っているあの名作から、なかなかお目にかかれない掘り出しものまで、宝探しのような映画体験をお届け!

「COME BACK映画祭ーコロナ禍で影響を受けた映画たちー」とは、文化庁の文化芸術活動支援事業「ARTS for the future!」の一環として開催。上映される映画は全部で59本。
コロナ禍を理由として、
①上映中止となった作品、
②上映が中断された作品、
③座席制限などで十分な配給・興行ができなかった作品、
④コロナ禍において撮影に支障をきたし、完成が遅延した作品
のいずれかに該当する映画が一挙に上映され、誰もが知っているあの名作から、なかなかお目にかかれない掘り出しものまで、ジャンルレスに映画を楽しむことができる。

この度、「COME BACK映画祭―コロナ禍で影響を受けた映画たち―」の開催を記念し、12月5日(日)に映画『DIVOC-12』(21)の上映が行われ、舞台挨拶に上田慎一郎監督が登壇し、「映画は心のワクチン」とコロナ禍で確かめた熱い想いを明かした。

「COME BACK映画祭―コロナ禍で影響を受けた映画たち―」
 開催記念トークイベント 概要
【日程】12月5日(日)
【会場】Hall Mixa(ホールミクサ)(豊島区東池袋1-14-3 Mixalive TOKYO B2F)
【登壇】 上田慎一郎監督 / 沖田遊戯(MC)

『DIVOC-12』は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めることを目的として製作されたソニー・ピクチャーズによるオムニバス映画。『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎、『新聞記者』(19)の藤井道人、『幼な子われらに生まれ』(17)の三島有紀子らが中心となり、新人を含めた9名の監督が参加。上田監督チームは“感触”、藤井監督チームは“成長への気づき”、三島監督チームは“共有”をテーマに掲げ、12の物語を紡いだ。上田監督チームは、それぞれが肌触りの異なるジャンル映画に挑戦。そのなかで上田監督は、映画館を舞台にユメミ(松本穂香)という女性が語りだす、波乱万丈の半生を描く『ユメミの半生』を撮りあげた。

上田慎一郎監督

MCを務めた映画系YouTuberの沖田遊戯は「コメディでありながら、これからの世代にバトンタッチしていくというメッセージ性を強く感じた。映画館に対する愛を感じた」と完成作の感想を上田監督に伝えた。上田監督は本作を手掛けるにあたって、室内スタジオに大型LEDディスプレイを設置して、天候や時間に関係なく撮影が進められる「バーチャルプロダクション」という新しい技術を使っていることを明かし、「本作の撮影では、基本的にロケ地には行っていないです。巨大なLEDの前で全員が芝居をしている。LEDにロケ地のCGセットを映写して、その前で役者が芝居をする。それを同時に撮影する」と現場の状況を語っていたが、国内でバーチャルプロダクションを使った撮影は本作が初めてだという。

映画の内容は、ユメミの半生を通して映画の歴史をたどる物語。バーチャルプロダクションを使用した理由について、上田監督は「当初は使う予定ではなかった。コロナ禍で一度撮影が延期になった。そんな時に『バーチャルプロダクションを見学しませんか』という話があって見に行って、これでやろうと決めた」と口火を切り、「ロケ地もたくさん必要になる作品なので、“どうやって撮るんだ”という問題もあった。バーチャルプロダクションを使えば、コロナ禍においてロケ地移動もなく撮影できる」とコメント。さらに「最新技術に挑戦することも大事だと思った。いままでの映画史を語りつつ、本作が映画の未来につながる一歩になればと思い、まだ(国内では)誰も使っていないその技術を使おうと思った」と力強く語る。

コロナ禍では、エンタテインメントの力について思いを巡らせることも多かったという上田監督。エンタメは「心の栄養分なんだと思った」としみじみ。「映画制作ができなくなったり、映画館が止まってしまったりして、失って初めて気づくことも多かった。映画って、観る食べ物。映画館に1か月も行っていないと、ちょっと心の栄養分が足りていないなという感じになってくる。クリエイターにとっては映画を作ること、映画好きにとっては観ることが必要」と熱弁し、「僕にとっては三大欲求のもうひとつに入れてもいいくらい」とにっこり。「物語を作っている人は古代からいる。おそらく本能的に、物語やエンタテインメントは人間を救ってきたと思う。大げさではなく、三大欲求と同じくらい大事なものなんだと思う」と映画やエンタメは自身にとって欠かせないものだと改めて実感したという。

左より上田慎一郎監督、沖田遊戯

お笑い芸人としても活動している沖田は、地下ライブを行っていても以前よりお客さんが増えたと話す。「エンタメをほっしすぎて、お客さんが地下ライブにも来ている」と笑い、「“エンタメに触れたい”という想いを感じる」と観客の気持ちに寄り添うと、上田監督も「観る側も、作る側も前のめり」と同調。本作の制作過程でも「初めてのことに挑戦してやろう、やりきってやろうと思っていた」そうで、「コロナ禍で延期になったり中止になったりする映画があるなかで、“作る”という場を与えてもらえて、自分たちも救われた。やっぱり“作りたくなるものなんだ”とも思った」とものづくりをしながら、自身も背中を押されたと話す。

最新技術を使用することも含め、撮影が「とても楽しかった」と充実感をにじませた上田監督は、「この映画を観て、もっと映画を好きになったり、もっと知りたいと思ったり、作りたいと思ってもらえたらいいなと思って作った」と本作に込めた想いを吐露。この日は、そんな上田監督に対して観客から質問を受け付けるひと幕も。「伝えたかったメッセージは?」と聞かれると、上田監督は「最初は映画史125年を10分で駆け抜けるような物語を作ろうというところから始まった。“この物語で伝えるべきことはこれなのかな”と、脚本を書き直しながら自分が知っていく感じです。なにを伝えたいかということはとても難しいけれど、それは受け取ったみなさんが感じたことが正解なんじゃないかと思う。またお客さんに語ってもらうことで、映画がより豊かになっていくはず」と観客の反応が映画を豊かにし、それを感じることが自身にとっても喜びだと語っていた。

最後に上田監督は「僕にとっては、映画はワクチンのようなもの。心のワクチン」と告白。「映画館にワクチンを打ちにきているんです。人によって効く薬、効かない薬があるように、人によって効用が違うという感じもある。映画やエンタテインメントは心を整えたり、柔らかにしてくれたりする。フィクションではあるけれど、現実を変える力を持っているものだと信じている」と心を込め、会場から拍手を浴びていた。

COME BACK映画祭 ―コロナ禍で影響を受けた映画たち―
12月4日(土)~12月19日(日)の16日間、Hall Mixaにて開催中!