柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」が、東京国立近代美術館で2022年2月13日まで開催されています(会期中一部展示替えあり)。
柳宗悦らが蒐集した陶磁器、染織、木工、蓑、籠、ざるなどの暮らしの道具類や民画のコレクションや出版物、写真、映像などの同時代資料を含め総点数450点を超える作品と資料を展示しています。

「民藝」とは、「民衆的工芸」を略した言葉で、約100年前に柳が陶芸家の濱田庄司と河井寬次郎とともに作り出した美の概念です。柳らは、それまで見過ごされてきた日常の生活道具の中に潜む美を見出し、工芸を通して生活と社会を美的に変革しようと試みました。

展示風景:左から《鉄絵緑彩松文鉢》唐津 武雄(佐賀県) 江戸時代 18世紀、《東こぎん肩布》青森県南津軽郡 明治時代 19世紀後半、《漆絵箔置柏文秀衡椀》 桃山~江戸時代 17世紀 いずれも日本民藝館蔵
photo©️saitomoichi

展示風景:イギリスのアームチェア 日本民藝館蔵
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見どころが三つ挙げられています。

1. 民藝の歴史的な変化と社会の関係をたどります。

民藝運動はどのような背景のなかで生まれ、変化してきたのでしょうか。関東大震災、鉄道網の発達と観光ブーム、戦争と国家、戦後の高度経済成長―民藝運動の歩みは「近代化」と表裏一体であり、社会の大きな節目と併走するように展開してきました。なぜ今、民藝が注目されるのかをひも解きます。

2. 手を動かす柳宗悦―そのデザイン・編集手法を分析します。

宗教哲学者であり、文筆活動を主体として民藝運動を推しすすめた柳ですが、実はなかなかの画力の持ち主。集めた器物をスケッチし、書体(フォント)を作り、写真のトリミングや配置を決め、あるいは建物や製品の設計図を描き、大津絵などの絵画の表具をしつらえるなど、あらゆる「編集」作業に腕をふるいました。柳がさまざまなメディアを通して、自らの美的感覚をどのように示し、伝えたのか―その「手さばき」を解析します。

3. 衣食住から景観保存まで

ツイードの三つ揃いスーツ、蝶ネクタイに丸眼鏡、ワークウェアとしての作務衣―民藝の人々はみなスタイリッシュでお洒落でした。しゃぶしゃぶにカレー、地方のお土産菓子など、食文化にも民藝は関わっています。民家の特徴を取り入れた建築にウィンザーチェア、日本・朝鮮・西洋折衷のインテリアデザインは良く知られるところですが、鳥取砂丘の景観保存にも民藝が関わっていたこと、ご存じでしたか?

展示風景:左から《スリップウェア角皿》イギリス  18世紀後半~19世紀前半、河井寬次郎作の《鉛釉象嵌鉢》 1930年、《焼締黒流茶壺》信楽(滋賀県) 江戸時代 19世紀、河井寬次郎作の《鉛釉白流蓋付壺》 1930年 いずれも日本民藝館蔵
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展示は6章構成

展示は6章構成で概ね時代ごとに区切られており、「民藝運動」がどのように展開し広まっていったのかを概観できるものになっています。

「第1章:「民藝」前夜―あつめる、つなぐ(1910年代~1920年代初頭)」では、民藝運動が始まる以前の『白樺』同人たちの交流と活動の様子が展示されています。人とモノが集まる「場」づくりから民藝運動は始動しました。

「第2章:移動する身体―「民藝」の発見(1910年代後半~1920年代)」では、民藝運動の最初期の活動の様子が見られます。大正から昭和初期にかけて、鉄道を中心とする交通網の発達とともに旅行ブームが起こります。柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎ら創設メンバーは、国内外を精力的に移動し、各地の民藝を発掘・蒐集していきます。この「移動」による日本各地の「民藝」の発見の過程が旅の軌跡とともに示されます。

「第3章:「民」なる趣味―都市/郷土(1920年代~1930年代)」では、日本の近代化の矛盾が露呈してきた大正末から昭和の初期にかけて、「都市」と対を成す概念として、「郷土」への関心が高まりました。民藝運動が各地の伝統的な生活文化を再評価する動きが活発化します。また、それらの伝統文化にならいながら、新作民芸の創造と生活の芸術化という理想を追い求めていく様子を示します。

「第4章:民藝は「編集」する(1930年代~1940年代)」では、「民藝樹」に図示されるように、出版、美術館、ショップという三本柱をいかに活用したかという観点から、民藝運動のメディア戦略を考察します。柳は、雑誌の挿絵、作品図版のトリミング、展覧会の陳列方法など、メディアを駆使して物の見方を示す、優れた「編集者」でもありました。この章では「柳の眼」を具体的に読み解いていきます。

展示風景:《柳宗悦 金田勝造宛書簡[砂糖挟み指示書]》 1932年 個人蔵
金工職人の金田勝造と柳宗悦との協働作業の様子を伝える資料。砂糖挟みのプロトタイプに対する修正希望が図示されている。次の写真に砂糖挟みの完成品がある。
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展示風景:上左:《柳宗悦 金田勝造宛葉書[本立指示書]》 1932年 個人蔵、上右:《本立[考案:柳宗悦]》金田勝造 島根県 1932年頃、日本民藝館蔵、下:《砂糖挟み[考案:柳宗悦]》金田勝造 島根県 1932年 鳥取民藝美術館蔵
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展示風景:第4章「民藝は『編集』する」のエリア
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展示パネル:民藝樹 『月刊民藝』創刊号 1939年4月 より
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展示風景:雑誌『工藝』 国立新美術館蔵
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展示風景:雑誌『工藝』を一年分12冊を納める帙10点の一部。 国立新美術館蔵
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展示風景:獅子飾付椅子と拭漆机など。
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第5章「ローカル/ナショナル/インターナショナル(1930年代-1940年代)」では、「古作」の民藝品の蒐集からはじまった民藝運動が時代を経るにつれ拡大し、1930年代から1940年代になると、その時代に流通していた「現行品」の調査が進んだことを示しています。

その調査の総括といえるのが、芹沢銈介と協働でつくった《日本民藝地図(現在之日本民藝)》(日本民藝館蔵)です。六曲一双と四曲一隻からなる全長13メートル超の巨大日本地図に、和紙、民窯、竹細工、染織など25種類の絵記号を使って500件を超える産地が記録されています。

展示風景:《日本民藝地図(現在之日本民藝)》芹沢銈介 1941年 日本民藝館蔵
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展示風景:左から《藁沓》山形県 1940年頃、《藁手袋》山形県 1940年頃、《雪兜》山形県 1940年 いずれも日本民藝館蔵、写真パネル:雪兜を着用する柳宗悦 東北工藝調査後、日本民藝館にて 1940年頃 写真提供:日本民藝館
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展示風景:左と中央:《竹製椅子[デザイン:河井寬次郎]》日本竹製寝台製作所(京都府) 1940年頃、右:《竹製子供椅子[デザイン:河井寬次郎]》日本竹製寝台製作所(京都府) 1940年頃、いずれも河井寬次郎記念館蔵
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「第6章:戦後をデザインする―衣食住から景観保存まで(1950年代~1970年代)」では、第二次世界大戦後の民藝運動が、日本の国際文化交流に寄与する様子が見て取れます。また、民藝からインダストリアル・デザインに展開する道筋や、建築保存・景観保存といった領域にも広がっていく様子が示されています。

展示風景:芹沢銈介《柳宗悦像》 1962年頃 東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館蔵 前期展示:2021年10月26日〜12月19日
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民藝の作品の造形的な魅力とともに素材や質感を堪能しながら、民藝運動の背景や歴史を概観できる充実した展示です。
ぜひ、時間を十分に取って観にいきましょう。
今後の民藝の展開にも期待してしまいます。

展覧会概要

会期:開催中〜2022年2月13日(日)*会期中展示替えあり
会場:東京国立近代美術館
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
時間:10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
   ※金・土曜日は20:00まで(最終入場時間 19:30)
休館日:月曜日、年末年始(12月28日(火)~2022年1月1日(土・祝))、2022年1月11日(火)
   ※ただし2022年1月10日(月・祝)は開館
観覧料:一般 1,800円、大学生:1,200円、高校生:700円
※中学生以下、障害者手帳を提示の方とその付添者1名は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等を要提示
※キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は割引料金。それぞれ入館の際、学生証・職員証を要提示
※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)も観覧できます
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式URL:https://mingei100.jp

cinefil 読者チケットプレゼント

下記の必要事項、読者アンケートをご記入の上、[柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」]プレゼント係宛てにメールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、ご本人様名記名の招待券をお送りいたします。
記名ご本人様のみ有効のこの招待券は、非売品です。
転売業者などに入手されるのを防止するため、ご入場時他に当選者名簿との照会で、公的身分証明書でのご本人確認をお願いすることがあります。

☆応募先メールアドレス  miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年12月12日 24:00 日曜日

記載内容
1、氏名 
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
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