華やかで夢があふれるデザインで、ウィーンと京都で活躍したデザイナー・上野リチの世界初となる大規模な回顧展「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」が、2021年11月16日(火)から 2022年1月16日(日)まで、京都国立近代美術館にて開催されています。

本展では、上野リチの国内最大規模の作品群を所蔵する京都国立近代美術館をはじめ、国内外の機関からリチと関連作家の作品が一堂に会します。
テキスタイルや七宝、彫刻など、色彩豊かで魅力あふれる「リチのデザイン世界」を是非この機会にお愉しみください。
それでは、シネフィルでも展覧会の構成に沿っていくつかの作品を観ていきましょう。

展覧会風景  photo by © cinefil

プロローグ 京都に生きたウィーン人

フェリーツェ・[リチ]・リックスは1893年、当時オーストリア・ハンガリー帝国の首都であったウィーンでユダヤ系の実業家の家に4人娘の長女として生まれました。
ここではウィーンと京都の2つの街を生きたリチのポートレートやスケッチブックが紹介されています。

「ポートレート:上野リチ・リックス」1930年代、京都国立近代美術館蔵

第Ⅰ章 ウィーン時代 —— ファンタジーの誕生

1912年リチはウィーン工芸学校に入学し、そこでテキスタイル、七宝、彫刻を学ぶと同時に、建築家ヨーゼフ・ホフマンのクラスに入り研鑽を積みました。
ウィーン工芸学校卒業後は、ホフマンが1903年に設立したウィーン工房の一員となり、テキスタイル部門とファッション部門を中心にさまざまデザイン分野で精力的な制作活動を行います。
徐々に、より柔らかで自在な描線と多彩な色調で花や鳥などのモティーフを表したリチ独自のデザイン世界が花開いていきます。

上野リチ・リックス《ウィーン工房テキスタイル・デザイン:夏の風》1922年、クーパー・ヒューイット スミソニアン・デザインミュージアム、ニューヨーク
Museum Purchase from Smithsonian Collections Acquisition and Decorative Arts Association Acquisition Funds. Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum, Smithsonian Institution.
Photo credit: Matt Flynn© Cooper Hewitt, Smithsonian Design Museum

上野リチ・リックス《ウィーン工房壁紙:そらまめ》1928年、京都国立近代美術館蔵

展覧会風景  photo by © cinefil

第Ⅱ章 日本との出会い —— 新たな人生、新たなファンタジー

1900年前後のウィーンで新しい芸術を模索する人々の間では、日本の美術・工芸品が注目されていました。なかでも日本の染型紙がデザイン分野で熱心に参照されたことは、よく知られています。
こうしたなかで、リチも自然と日本に対する関心を育んだのでしょう。
1924年、リチはホフマンの建築設計事務所に在籍する日本人建築家・上野伊三郎と出会い、翌年結婚します。
二人は伊三郎の郷里京都へ移り、建築事務所を設立して個人住宅や商業店舗の設計内装デザインを手掛ける一方、リチは定期的にウィーンを訪れ、引き続きウィーン工房の一員として、退職する1930年まで活動を続けました。

上野リチ・リックス《イースター用ボンボン容れのデザイン(2)》1925-35年頃、京都国立近代美術館蔵

上野リチ・リックス《クラブみち代 内装デザイン(1)》1950年代、京都国立近代美術館蔵

第Ⅲ章 京都時代 —— ファンタジーの再生

1930年にウィーン工房を退職したリチは、1935年に京都市染織試験場の技術嘱託となり、翌年からは群馬県工芸所の仕事と掛け持ちしながらも1944年まで、主に日本占領下の外地へと輸出されるプリント布地や刺繍製品などのデザインを手がけました。
戦時下で外国人として日本に暮らすリチでしたが、明るい絵柄で色彩豊かなデザインを生み出しました。
戦後、新しい時代の要請に応えるべきデザインを模索する京都の繊維会社や七宝製作所と協働しながら、リチと伊三郎は京都市立美術大学(現:京都市立芸術大学)の教員としてデザイン基礎教育の充実化に携わり、退職後もインターナショナルデザイン研究所を開設して人材の育成に尽力しました。

上野リチ・リックス《七宝飾箱:馬のサーカスⅠ》1950年頃[再製作:1987年]、京都国立近代美術館蔵

上野リチ・リックス《プリント服地デザイン[象と子ども]》1943年、京都国立近代美術蔵

エピローグ 受け継がれ愛されるファンタジー

1967年、リチは自宅で74歳の人生を閉じました。
しかし彼女のデザインは村野藤吾や教え子たちによって、様々な場所で生かされました。
本展の最後では、都ホテルやプリンスホテルそしてカフェ・レストランで室内装飾に用いられたクロスやタイルなど、彼女の没後も我々の身近にあったリチ・リスペクト・デザインが紹介されています。

上野リチ・リックス《日生劇場旧レストラン「アクトレス」壁画(部分)》1963年、京都市立芸術大学芸術資料館蔵

建築家・村野藤吾に依頼され、教え子たちと制作した東京日比谷にある日生劇場の旧レストラン「アクトレス」の壁画は彼女の晩年の代表作です。アルミ箔に覆われた壁や天井一面に軽やかかつ色鮮やかに鳥が舞い花が咲き乱れる様は、まさにリチが提唱した「ファンタジー」が具現した空間そのものでした。

展覧会風景 photo by © cinefil

ウィーンで生まれ、ウィーン工芸学校を経て、ウィーン工房で活躍していたリチが、上野伊三郎氏と出会い、結婚することにより、異国の地・日本の京都で更にその才能を発揮し、活躍の場を広げました。
華やかで、明るい色彩、リチ独自の自由な発想で花や鳥、動物などをモティーフにしたデザインは、まさにファンタジーの世界です。

展覧会概要

【展覧会名】上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー
【会 期】2021年11月16日(火)~ 2022年1月16日(日)
【休 館 日】月曜日および12月28日(火)~1月3日(月)※ただし1月10日(月・祝)は開館
【開館時間】午前9時30分~午後5時[金・土曜日は午後8時まで](入館は閉館の30分前まで)
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。
来館前に最新情報をご確認ください。
【会 場】京都国立近代美術館(〒606-8344 京都市左京区岡崎円勝寺町26-1)
【主 催】京都国立近代美術館、朝日新聞社、関西テレビ放送
【後 援】オーストリア大使館/オーストリア文化フォーラム
【協 賛】ダイキン工業、竹中工務店
【特別協力】MAK-オーストリア応用芸術博物館/現代美術館、ウィーン
【特設サイト】

【問合せ】京都国立近代美術館 075-761-4111(代表)
*本展は2022年2月18日(金)~ 5月15日(日)三菱一号館美術館(東京・丸の内)へ巡回します
【観覧料金】一般 1,700円 (1,500円) 大学生 1,100円(900円) 
高校生 600円(400円) ( )内は団体料金
※中学生以下、母子家庭・父子家庭の世帯員の方、心身に障がいのある方とその付添者1名は無料。(入館の際に証明できるものをご提示下さい)
※団体料金は20名以上。
※本料金で京都国立近代美術館コレクション展もご覧いただけます。
公式インスタグラムでは詳しい展覧会情報を配信しています。

https://www.instagram.com/lizzi_ten/(@lizzi_ten)

「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」@京都シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」@京都 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送り致します。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年12月6日 月曜日 24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
4、ご連絡先メールアドレス、電話番号
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9、よくご利用になるWEBマガジン、WEBサイト、アプリを教えて下さい。
10、シネフィルへのご意見、ご感想、などのご要望も、お寄せ下さい。
また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。