毎年、新しい出会いに満ち映画の未来を照らしてきた映画祭「東京フィルメックス」。
10 月30日(土)に開幕を迎え、【開会式】、オープニング上映作品『偶然と想像』の舞台挨拶及び上映後Q&Aを実施!今年も”ここでしか体験できない”数々の映画への期待にあふれた観客が集まり、拍手に包まれた開幕初日となった。
「第22回東京フィルメックス」新プログラム・ディレクタ―を迎えて開幕!
審査員長・諏訪敦彦監督「新ディレクタ―の元に集められた一つ一つの作品と出会ってゆき刺激的な一週間になればいい」と期待!
場内は満席で初日にふさわしい盛況ぶりを見せる中、新プログラムディレクターに就任した神谷から「パンミックで準備段階から多くの不安がありましたが、様々な人に支えられて初日を迎えられて嬉しい。一本でも多くの映画を観ていただき、”お祭り”を楽しんでいただけたら」という挨拶があり映画祭がスタート。
審査員長の諏訪は「新ディレクタ―の元に集められた10本(コンペティション作品)ということで、一つ一つの作品と出逢っていきたいと思う。刺激的な一週間になればいい」と映画祭への思いを語った。
10月30日(土)<開会式&オープニング上映作品
『偶然と想像』舞台挨拶/上映後Q&A>ご報告
舞台挨拶では、濱口監督に「四股を踏まされた」驚きのエピソードが!
今年のオープニング上映作品は、カンヌ国際映画祭での輝かしい受賞も話題で、世界中から注目を集めている濱口竜介監督作『偶然と想像』。
『偶然と想像』作品概要
「偶然」という共通の主題を持つ、それぞれ異なる3つの短編から成るアンソロジー作品。親友同志の恋バナ、大学教授に教えを乞う生徒、そして 20 年ぶりに再会した友人・・・日常のシチュエーションから一転、3 組の会話はどんどん掘り下げられてゆき、想像しえなかった展開を迎える。第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。
本作は、<偶然>をテーマに3つの物語が織りなされる初の、そして濱口自身が「このスタイルをライフワークとしたい」と語る<短編集>。上映前舞台挨拶が行われ、豪華ゲストが登壇!
第一話「魔法(よりもっと不確か)」で、友人の恋バナを聞く芽衣子役・古川は「(撮影期間は)自分自身が発見することが多く色々教えていただいた。リハーサルの印象が強く、本読みも有名だけれど、広場でリハーサルしたり、無言のジェスチャーをしてみたり。濱口監督は言葉も美しいけれど、同じくらい肌感覚で作れるものを大事にしているんだということを学んだ」と語った。
同じく第一話で芽衣子にのろけ話をするつぐみ役・玄理は本編にある長回しシーンについて尋ねられると「10分くらいの長回しだとここはこう盛り上げようとか考えるけれど、この作品はしてほしくないんだなって思い、本当に台詞のやりとりだけで、工夫しないことを工夫した、ということを一番気をつけた」と撮影を振り返った。
第二話「扉は開けたままで」で、大学教授の瀬川役・渋川は(監督を)”濱ちゃん”と呼び、「2008年に監督の『PASSION』に出演したときは(監督は)学生だったのに、2021年の今、こういう場にいても濱ちゃんが全く変わっていないので良かった」と喜びを語り、同じく第二話で瀬川の授業を受ける学生の佐々木役・甲斐は自分の印象を違う役を演じた感想を聞かれ「やったことのない役柄だった。僕の中に無いものを求められている気がして、演じていくうちに発掘されたんだと思った」と話した。
第三話「もう一度」で20年ぶりに親友と出会う夏子役・占部と夏子と出会うあや役・河井は、渋川と同じく『PASSION』で濱口監督とタッグを組んだ仲。今回の撮影で驚いたことを聞かれると「第三話チームは四股を踏まされていた」という驚きのエピソードが語られた。河井は「監督は変わっていないけれど、(本作では)核心を持っているなと感じた。だから毎朝の四股にも意味があるんだろうなと思った」と監督への信頼を表した。
思いがけず四股話が出てその理由を聞かれた監督は、「友人の砂連尾理さんに、四股は“腰が出来てくる”からいいよと言われて、それならやってみようかと思ったけれど。どういう意味だったのかわからない(笑)」と苦笑い。
短編集を一本にまとめた理由を尋ねられると「時間などの様々な制約がある中で、仕事をしたい役者と自由な仕事ができる場所を持ちたかったから」と理由を明かした。出来上がった作品については「自分の作品の中でも一番風通しの良い作品になった。役者を見る映画です。カメラの後ろで本当に素晴らしいと思いながら観ていた作品を、早く皆さんに観ていただきたい」と、3話の短編集を一緒に作り上げた役者たちに感謝を述べた。
上映後にはQ&Aが実施され、第一話でつぐみが最近気になるという男性役・中島歩と濱口が登壇。Q&Aに先駆けて、本日登壇ができなかった第二話「扉は開けたままで」にて、甲斐翔真演じる大学生・佐々木の同級生・奈緒役を演じた森郁月からメッセージが寄せられた。
「想像もしていなかったことが、偶然によって引き寄せられるということ、この作品のような出来事が人生には起こりえますが、私にとってこの作品と濱口監督との出会いがまさにそうでした」とメッセージを濱口が代読し、濱口もまた森との出会いは同じ気持ちだったと答えた。
登壇した中島のキャスティング理由について、「中島さんは事務所でやっているワークショップに呼んでもらったことがあった。声がいいですよね!顏も良く背も高く凄いスケールがあるというか、でも何かダメなところがありそうという気がした(笑)中島さんの役は最初から当て書きという訳ではないけれど、イメージはあった。俳優の、演技の上手い下手は自分でもよくわからないところがあって、話をしていて一番良いなと思う人を選んでいる」と語ると、中島も「自分もそう思っている。オーディションで演技することもあるけれど、監督やプロデューサーの人と友達になるくらいのつもりでいくこともある。これまでもこの人と一緒にいたら楽しそうだなということから始まっているので、監督にそう言ってもらえて共感できる」と、演技のすばらしさはもちろんだが、まさに、偶然の出会いがあったことが伺えた。
また脚本の着想について濱口は、「家や喫茶店で書くことが多い。他の人の会話の宝庫なので色々聞いている。喋りながらは書きませんが(笑)それで本読みをして、言いづらそうだなというところは、「おかしくないですか?」と確かめながら進める。実際にしゃべってみないとわからいので、本当に違和感があるものは消したりする」と脚本づくりについて明かした。上映前の舞台挨拶でも濱口のリハーサルについて話が出たが、中島も「役の難しさというより、本読みを通して、やったことのない準備の仕方だったためそれがどうなるんだろうというワクワク感はあった。リハを延々繰り返して、台詞が楽な状態で扱える、例えば服を着替えるみたいに無意識に扱えるレベルまでになったから、その場で起きることにリアクションがとれる、それが凄い新鮮だと思った。とても有効な時間だった」と、改めて手ごたえがあったことを振り返った。
◎「第22回東京フィルメックス」開催概要
会期:10月30日(土)~11月7日(日)
会場:有楽町朝日ホール(メイン会場)/ヒューマントラストシネ
マ有楽町(レイトショー会場)
上映プログラム:東京フィルメックス・コンペティション、特別招
待作品、メイド・イン・ジャパン
公式HP: