澄んだ青い空に白い雲が浮かび、清々しい緑色の樹々が広がる…と、いった風景画は、まるでその新鮮な空気感までもが伝わってくるようで、私たちの心を癒してくれます。
今回はそんな近代フランス風景画の起源を辿り、2021年11月20日〜2022年1月23日に静岡市美術館で開催される「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」を紹介致します。

シャンパンの生産地としても有名で、繊維産業でも繫栄した、フランス北東部の古都ランス市より、至高の風景画コレクションが来日しました。
戸外制作を行ったバルビゾン派の画家たちや、“空の王者”と賞賛されたウジェーヌ・ブーダン、そしてモネ、ルノワール、ピサロら印象派の珠玉の作品約70点が一堂に会しています。

なかでも木立や水辺を繊細かつ詩情豊かに描き出したカミーユ・コローの作品は、必見です。
本展では、コローの油彩画の傑作 16 点をまとめてご覧いただける大変、貴重な機会です。
是非この機会に、それまでの伝統を打ち破り、アトリエを飛び出して、自然の光や大気の変化を描き出した画家たちによる19 世紀フランス風景画の変革をご覧ください。
それでは、展覧会の構成に沿っていくつかの作品を紹介致します。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《イタリアのダンス》 1865-70 年 油彩/カンヴァス  Inv. 887.3.1 ランス美術館蔵 ©MBA Reims 2019/ photo: C. Devleeschauwer

第1章 コローと 19 世紀風景画の先駆者たち

19 世紀は近代社会の大きな転換期ですが、「風景画」にも大きな変革がもたらされた時代でした。
それまで風景画は、絵画主題として、歴史画よりも下に位置づけられていて、画家たちは“神話”や“古代の場面”の背景として。“風景”を描いていたのです。
こうした中で風景画の地位向上に努めたのが、ピエール=アンリ・ド・ヴァランシエンヌ(1750-1819)で、著書『芸術家のための実用遠近法入門および画学生とくに風景画をめざす学生のための省察と忠告』を著しました。
ヴァランシエンヌのもとで学んだアシル=エトナ・ミシャロン(1796-1822)は、屋内にこもって制作するのではなく、積極的に戸外に出かけて、自然をよく観察して習作を描き、それらをもとにアトリエで完成作を仕上げるようにしたのです。
そしてそのミシャロンの弟子が、繊細かつ抒情的な風景画で現在も高い人気を誇る、カミーユ・コロー(1796-1875)です。
彼は自然が与える瑞々しい印象を画面に記録した最初の画家の一人だと言えるでしょう。
                                
本章では、地中海の光のなかで踊る男女を叙情的に描いた《イタリアのダンス》や、傾いた木々のダイナミックな動きによって優れた対角線構図を用いている《突風》など、コローの傑作 16 点や、ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)の作品が紹介され、フランスにおいて「風景画」というジャンルが確立されていった流れを概観します。

ギュスターヴ・クールベ《レマン湖の岸辺(急流)》 1875年頃 油彩/カンヴァス Inv. 907.19.73 ランス美術館 © MBA Reims 2019 / Photo: C.Devleeschauwer

クールベは手つかずの自然を荒々しいタッチで描き、「写実主義の騎手」ともいわれ、極限まで写実を推し進めました。

第2章 バルビゾン派

「バルビゾン派」とは、19 世紀中頃のフランスの風景画家のグループを指しており、その名称はパリ南東約 60kmのフォンテーヌブローの森に位置する小さな「バルビゾン村」に由来しています。
従来の絵画制作はアトリエで行われていましたが、鉄道の発達やチューブ入り絵具の発明によって戸外での制作が容易になり、以降、風景画家たちは、戸外で直接自然と向き合い、神話や宗教の主題ではなく、羊の群れや森の片隅といった身近な日常の風景を描くようになりました。
本章では、テオドール・ルソー(1812-1867)、シャルル=フランソワ・ドービニー(1817-1878)、ナルシス・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ(1807-1876)、ジュール・デュプレ(1811-1889)、コンスタン・トロワイヨン(1810-1865)、シャルル・ジャック(1813-1894)といった、自然の姿に魅了されたバルビゾン派の画家たちによる作品が紹介されています。

シャルル=フランソワ・ドービニー《風景、雨模様の空》 1865年 油彩/板 Inv. 907.19.79 ランス美術館 © MBA Reims 2019 / Photo: C.Devleeschauwer

バルビゾン派の画家たちは田園での労働や動物との共生、何気ない日々の光景を捉えました。彼らは実地での風景観察を重んじ、例えばドービニーは船の中にアトリエをしつらえ、川の上で制作に励んだといいます。

第3章 画家=版画家の誕生

19 世紀後半の版画制作で、画家たちによって最も広く使用されてきた技法の一つに、銅版画の一種であるエッチングがあります。この技法は銅版画の中でも制作が容易で、画家が自由に素早く描いた線描を活かすことができました。さらにはクリシェ・ヴェール(デッサン、版画、写真を融合した新しい技法)も誕生します。
こうして版画に高い関心を持った画家が増え、画家でありながら版画も積極的に制作する芸術家(画家=版画家)の活躍が顕著になりました。
本章では、そのような芸術家たち、ドービニーやヨハン・バルトルト・ヨンキント(1819-1891)などによる版画作品が紹介されています。

第4章 ウジェーヌ・ブーダン

ウジェーヌ・ブーダン(1824-1898)は、生涯の多くをフランスのノルマンディー地方で過ごし、海景を数多く描きました。
彼は空と海辺の大気の効果に対する鋭い観察眼を持ち、カミーユ・コローから“空の王者”と称されました。一方ブーダンがコローから学んだことは、平行に層を積み重ねていく画面構成や、灰色を基調とする色彩です。
時間や天候による空と海の移り変わり、そして船が停泊する港や動物が集う水辺などの情景を、粗い筆触で捉えて描き出しました。
このようにブーダンは、大気の効果を十分に観察して素早く力強いタッチで描くことで、光と瞬間の表現を追求する戸外制作の先駆者の一人となりました。印象派の画家クロード・モネ(1840-1926)に自然に直接学ぶことを教え、彼を戸外制作へと導いたことでも知られています。
本章では、ランス美術館が所蔵するブーダンの傑作 7 点が紹介されています。

ウジェーヌ・ブーダン 《水飲み場の牛の群れ》 1880-95 年 油彩/カンヴァス
Inv. 907.19.33 ランス美術館蔵 ©MBA Reims 2019/ photo: C. Devleeschauwer

第5章 印象主義の展開

印象派の画家たちは、前章までに見てきた画家たちとの交流によって戸外に行き、目の前で刻々と変化していく自然を体験し、大気と光の効果を描きだそうと制作を行いました。
例えば、画業を通じて多くの風景画を描いたピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)は、バルビゾン派の画家たちと同じようにフォンテーヌブローの森で、またブーダンと同じようにノルマンディー沿岸で、制作を行いました。さらにクロード・モネは、ブーダンやヨンキント、ドービニーに教えられながら画家になるための修業を積み、戸外制作を行ったのです。

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《風景》 1890 年頃 油彩/板に裏打ちされたカンヴァス Inv. 949.1.61 ランス美術館蔵 ©MBA Reims 2019/ photo: C. Devleeschauwer

日常生活の中の美しい女性像を描いた作品が有名なルノワールですが、風景画も多く、本作も戸外に出て、美しい緑の樹々を描いています。

1874 年、モネ、ルノワール、ピサロ、シスレーをはじめとする新進気鋭の画家たちは、保守的な官展に対抗して、グループ展を開催しました。
このグループ展は、後に「印象派展」と呼ばれることになり、メンバーの入れ替わりはありましたが、1886 年まで全8回にわたり開催されました。
印象派の画家たちが目指したのは、純色の小さなタッチを並べる手法により、色とりどりに移ろいゆく自然を活写することでした。
即興性が際立つ彼らの作品は当初スケッチのようだと批判されましたが、次第に人気を博すようになり、後に作風や制作方法は多様化し、画家たちは各々に個性を開花させていきました。
本章では、モネ、ピサロ、ルノワールといった印象派の画家たちの作品が紹介されています。
彼らがどのように大気の変化や光を捉え、「風景画」として提示していったのかをご覧いただけます。

クロード・モネ 《ベリールの岩礁》 1886 年 油彩/カンヴァス
Inv. 907.19.191 ランス美術館蔵 ©MBA Reims 2019/ photo: C. Devleeschauwer

「光の画家」とも呼ばれたモネは、移ろいゆく自然の光のもと、《睡蓮》の連作など自然の風景を描き、印象派の中心的画家となりました。
本作は純粋な眼で、光を受けて輝く岩礁や水面を表現しています。

ランス美術館がリニューアル休館中のため実現した、フランス風景画の名品の数々。
是非、静岡市美術館でご堪能ください。
本展は、戸外での作品制作によって自然の光や大気感までも表現する「風景画」が確立され、「印象派」に至るまでの変遷を辿る、珠玉の風景画コレクションとなっています。
19世紀フランス風景画の変革によってもたらされた爽やかな新しい風を感じてください。

展覧会概要

展覧会名 ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ
会場 静岡市美術館
会期 2021年11月20日(土)〜2022年1月23日(日)
開館時間 10:00〜19:00(展示室への入場は閉館の30分前まで)
休館日 毎週月曜日、年末年始[12月27日(月)–1月1日(土・祝)]
※1月3日(月)・1月10日(月・祝)は開館、1月4日(火)・1月11日(火)は休館
 
観覧料 一般 1300円(1100円) 大高生・70歳以上 900円(700円) 中学生以下 無料  
   ( )内は前売および20名以上の団体
ご来館の際は、最新の開館状況および注意事項を美術館ホームページまたはお電話にて必ずご確認ください。
静岡市美術館ホームページ www.shizubi.jp
主催 静岡市、静岡市美術館 指定管理者(公財)静岡市文化振興財団、テレビ静岡、中日新聞東海本社
後援 静岡市教育委員会、静岡県教育委員会、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力 日本航空
企画・監修 ランス美術館 Exposition produite et gérée par le Musée des Beaux-Arts de la VILLE DE REIMS EN FRANCE.
企画協力:ブレーントラスト
特別協賛:セキスイハイム東海

「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」@静岡 シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」@静岡 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年11月30日 月曜日 24:00
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3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
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また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。下記の必要事項、をご記入の上、プレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上3組6名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。

☆応募先メールアドレス info@miramiru.tokyo
*応募締め切りは2021年5月3日 月曜日 24:00

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  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
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