11 月 12 日(金)より渋谷ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、キネカ大森、 イオンシネマ他にて全国順次公開となる仲村トオル×杉野希妃×斎藤工×中村ゆり等の出演、鬼才・万田邦敏監督待望の新作となる『愛のまなざしを』。
この度、公開にあたって、今作の脚本を手がけられた万田珠実さんによる集中連載が、「シネフィル」で掲載されることとなりました。
制作の裏側などを交えた、公開までの制作日誌となります。
第六回 撮影6日目
2019年9月7日(土)
前回触れた脚本の変更については、5日目の撮影の合間に、仲村さんと杉野さんに無事了解をいただけました。そのうえ、お二人が思い描くラストシーンについて意見を聞くことができ、一緒に物語を作っている実感を持つことができて、心強く思いました。
さて、撮影6日目はクランク・インと同じハウス・スタジオが現場でした。ただしこの日は地下ではなく、一階を使って貴志と綾子のリビング・ダイニングのシーンを撮ります。リビングを撮影するためには、スタジオに備え付けの調度品のうち、不要な物を大量に地下に運び、地下で診察室を撮る時はその逆になるので、美術部はてんてこ舞い。翌日がこのハウススタジオで撮影という時は、前日の撮影終了後に先発してスタジオに乗り込み、翌朝までに仕込みを終わらせなければならず、撮影期間中に一番労働時間が長く寝不足だったのが、北地那奈さん率いる美術チームでした。
祐樹の誕生日会のシーンでは、誕生日会用の食べ物やケーキの他に、台本には書かれていないプレゼントまでが、ダイニングテーブルに置かれていました。「こっちはお父さんからの電子辞書、こっちは綾子さんからでゲームソフト」という北地さんの説明を聞いて、なるほど美術部さんは、台本を読んでそういうところまで想像力を働かせるのかと感心しました。セッティングの最中には、藤原くんが「ケーキのろうそくは一度に吹き消すのがいいか、何度かに分けたほうがいいか」と、仲村さんに相談しています。家で一人で脚本を書いている身には、実際の映像はこうやって作られていくのかと、発見の連続でした。
実は誕生会の後に、綾子が貴志と祐樹を送り出すシーンがありました。ここの台詞が実際に動いてみると不自然で、段取りがなかなかうまくいきません。監督が仲村さんに「じゃあ祐樹の台詞の前に、貴志が台詞を言って動きましょう」と言うと、「じゃあ僕の台詞はどうなるんですか」と藤原くんが間髪入れずに問い、また、何度やってもしっくりこない台詞には、「気持ち悪いんですけど、大丈夫ですか」ともっともな疑問を監督に投げかけたりして、期待通りに一生懸命に役作りをしてくれました。もっとも監督には「気持ち悪いことは世の中にいっぱいあるんだよ」と、大人の対応であしらわれていましたが。脚本が悪いんです。ごめんなさい。
ですがこのシーンは、結局まるまるカットされてしまいました。ここだけでなく、せっかく撮ったのに泣く泣くカットされたシーンは、全部で30分にも及ぶのです。あー、もったいない!それでも、脚本の時には気付かなかったけれど、実際に撮影してつなげてみると、同じことの繰り返しや物語の展開の少なさが、見ている人の興味をそいでしまうかもしれないとも思え、カットもやむなしと納得せざるを得ませんでした。でもやっぱり…もったいない!
『愛のまなざしを』予告
【STORY】
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求める。いっぽう妻の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく…。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始めるのだった――。
出演:
仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実 万田邦敏
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