17日(金)より渋谷ユーロスペースほかにて全国公開され、満席続出のヒットスタートとなった『由宇子の天秤』。
二日目の本日18日(土)に主演・瀧内公美、共演の河合優実、梅田誠弘、光石研、春本雄二郎監督の舞台挨拶を渋谷ユーロスペースにて実施し、本作を絶賛する笠井信輔アナが司会を務めました。

以下レポートとなります

監督との出会いはユーロスペース

満席の場内を目にした、正義に邁進する主人公の由宇子を演じる瀧内公美(以下・瀧内)は「足元の悪い中2時間半という長尺の映画を見に来ていただき本当にありがとうございます」と感謝の言葉を観客に伝えた。
春本雄二郎監督(以下・春本)は本作を自分で資金を集めて制作した。その思いについて問われた春本は「10年以上商業システムの中で、映画やドラマなど助監督を務めていたが、忖度しなければ作品を作れないという経験をして、自分が作るときはそういう体制ではやりたくないという一心から、口出しされないシステムで撮ろうと思い、資金を貯め前作を作った。今回は2作目で新たなステップです」と力強く語った。次に笠井信輔アナ(以下・笠井アナ)が「報道現場にいたので由宇子の葛藤はよくわかった」と主人公への共感を示すと、瀧内は「真実を伝えることが正義と思っているが正義感が強すぎるがゆえに、矛盾していき負荷がかかり葛藤していく。ただ、彼女に出会った人はみんな心を開き真実を伝えようとするんですよね。 嫌な部分も誠実な部分もあり、そのバランスに気を付けた」と演技する上で心掛けた点を語った。春本監督との出会いはこの ユーロスペースだと言い、「監督の初監督作『かぞくへ』を見て大号泣して、ご一緒したいと思い、劇場でプロフィールを渡し声をかけたんです」と自ら監督へアプローチしたことを打ち明けた。

ベテラン俳優・光石研の意気込み「監督やスタッフの熱意に答えたかった」

由宇子の父親で、過ちを犯す政志を演じた光石は「監督が身を削るように最小限のスタッフで作っていて、僕ら俳優陣もその熱意に答えなければとずっと思っていた」とスタッフの想いや熱意に寄り添 ったことを明かした。政志の経営する塾の生徒・萌を演じた河合優実(以下・河合)は撮影当時18歳だった。この映画に参加した経験について「2年前と今では見えている世界が全然違う。あれからいろんな現場に行ったが、あの頃の真っさらな状態でこんな骨太な作品に出演できて幸運でした」と振り返った。萌の父親で、危うい面もありながら娘を思いやる一面もある哲也を演じた梅田誠弘(以下・梅田)は、春本監督の前作『かぞくへ』に引き続き、2作連続での出演となった。梅田は「父親になった経験はないが、父親に見えるようにしないといけないので、娘との関係性をしっかり見せないと、と思った」と複雑な役柄を演じる上での心構えを語った。

自分自身が当事者になったとき、カメラを向けられるのか

笠井アナから「善悪がはっきりしない、見ているほうが天秤かけながら見ないといけない」と観客の心を揺さぶる構造の物語であることを振られ、春本はこの映画の狙いについて次のように語った。 「今は、情報があふれすぎている、超情報化社会です。マスメディアが、本来伝えるべき内容とは違う、食いつきやすい見出しにして伝えてしまうことで、間違った受け取られ方をして、人々が誰かを 断罪するということが起こる。そこを危惧している。人間はシロクロ判断つけられない。自分のすることが正しいと思っているヒロインが、自分自身が当事者になったときに、自分にカメラを向けられ るのかと考えてもらいたかった」また、本作は、いわゆる劇伴のないことも話題となっている。春本は「音楽をつけることは我々の視点を一元化してしまう。こう感じてくださいと、作り手の考え方を押し付ける。想像してもらう楽しみが一番。芝居、演出、脚本で見せ切ることをモットーにしたい」とこだわりを語った。

感涙の瀧内公美「この役に出会えて本当に幸せ」

春本監督のワークショップから参加したという河合は「ワークショップで話したことを基に現場に行き、リハーサルもじっくりしたので、現場で怒られたり、何度もやり直しさせられたりといったことはなかった」とストレスのない現場だったことを語り、瀧内は「最高の現場でした。ほんとに素敵なスタッフで、キャストのみなさんも支えてくださった。光石さんは、お金はあるから何でも食べなさい、と何度もごちそうしてくださった(笑)」とエピソードを明かし、観客の笑いを誘った。最後に春本は「二人の男性がドキュメンタリー監修に関わってくださったが、完成を待たずにお亡くなりになった。お二人が生きたあかしを残すために、映画を広げていきたい。この映画のスタッフは全員プロフェッショナルで、商業システムで作った映画となんら遜色はない。僕は自主映画ではなく独立映画と呼びたい」と 熱く語った。瀧内は声を詰まらせながら「由宇子という役に出会えて本当に幸せ。いろいろありましたが、こんなにマスコミに来ていただいて、作品が大きくなっていったことが嬉しいです。みなさま のお力をお借りして、さらに広げられたらいいなと思っています」 と涙ぐみ、場内は温かい拍手で包まれた。

映画『由宇子の天秤』予告編

映画『由宇子の天秤』予告編

youtu.be

“正しさ”とは何なのか?
ドキュメンタリーディレクターの由宇子は究極の選択を迫られる――

三年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子は、テレビ局の方針と対立を繰返しながらも事件の真相に迫りつつあった。そんな時、 学習塾を経営する父から思いもよらぬ“衝撃的な事実”を聞かされる。大切なものを守りたい、しかしそれは同時に自分の「正義」を揺るがすことになる――。果たして 「“正しさ”とは何なのか?」常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる...。 超情報化社会を生きる私たちが抱える問題や矛盾を真正面から炙り出した衝撃作は、瞬く間に世界の映画祭を席巻!緻密な脚本、迫真の演技、ラストに突きつけられる究極の問いに驚嘆と絶賛の声が止まらない!

主演は、『火口のふたり』(19)で第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞に輝き、本作でスペインのラス・パルマス国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた瀧内公美。脇を固めるのは『佐々木、イン、マイマイン』(20)の河合優実、『かぞくへ』(16)の梅田誠弘、 さらに日本映画界屈指のバイプレイヤー 光石研ら。監督・脚本は、日本の片隅で生きる若者たちの葛藤と不器用な優しさを描いた『かぞくへ』の春本雄二郎。そして、長編アニメーション『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の片渕須直がプロデューサーとして参加している。

瀧内公美 河合優実 梅田誠弘 川瀬陽太 丘みつ子 光石研

脚本・監督・編集:春本雄二郎
プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
キャスティング:藤村駿 ラインプロデューサー:深澤知
撮影:野口健司 照明:根本伸一 録音・整音:小黒健太郎 音響効果:松浦大樹 美術:相馬直樹 装飾:中島明日香 小道具:福田弥生 衣裳:星野和美 ヘアメイク:原田ゆかり
製作:映画「由宇子の天秤」製作委員会
製作協力:高崎フィルム・コミッション
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給:ビターズ・エンド
2020/日本/152
分/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP
©️2020映画工房春組 合同会社

9月17日(金)渋谷ユーロスペース他全国順次ロードショー!