色づく秋の京都で、慈しみ伝えられてきた住友家の宝物と出会う。

京都市左京区の東南、如意ケ嶽ふもとの静かな地域「鹿ケ谷」にある泉屋博古館は秋一色に包まれています。いま、この泉屋博古館では秋季企画展「伝世の茶道具-珠玉の住友コレクション」が開催されています。数々の研ぎ澄まされた茶道具のひとつひとつから、大切に受け継がれてきた時間をも感じるようでした。今回拝見できる貴重なお道具を抜粋してご紹介していきましょう。

■住友コレクションの茶道具を収集した人物たち

住友コレクションの茶道具を収集した人物には、裏千家八代 又玄斎一燈好みの道具を集めた五代住友家当主友昌(1705-1758)、小堀遠州遺愛の茶碗「小井戸茶碗 銘 六地蔵」を収集した十二代友親(1843-1890)、後陽成天皇命銘の茶入「唐物文琳茶入 銘 若草」や後水尾天皇ゆかりの「青磁福寿文香炉」などを収集した十五代友純(号 春翠:1864-1926)が挙げられます。

重要文化財 上畳本三十六歌仙絵切「藤原兼輔」 鎌倉時代・13世紀 泉屋博古館蔵

重要文化財、またその等級の茶道具が惜しみなく会場内に展示されています。歌仙絵の「藤原兼輔」は平安中期の歌人で紫式部の曽祖父。ここでは子を思う親心のせつなさをしみじみ詠んだ和歌が添えられています。

紅葉呉器茶碗  朝鮮時代・16世紀 泉屋博古館東京蔵

茶会で席主は招くお客人をイメージし、道具、抹茶、菓子などの銘や茶会の趣旨を思い描き組み立てて、もてなします。歴代の人々をもてなした数々の道具から、過ぎてきた濃厚な時間が窺えます。

唐物文琳茶入 銘 若草  南宋~元時代・13~14世紀 泉屋博古館東京蔵

この唐物文琳茶入、銘は「若草」。江戸時代、寛永文化の立役者である後水尾天皇の父、後陽成天皇ゆかりの唐物茶入れ。肩から胴へと緩やかに膨らみ「林檎」の異名である「文琳」の名にふさわしい

青磁福寿文香炉  元時代・14世紀 泉屋博古館東京蔵

茶道具には人と人とを繋ぐ様々な物語が込められています。泉屋博古館に継承され た茶道具は歴代の茶人による箱書や好みの裂による仕覆など、大切に受け継がれた思いを垣間見ることができます。

唐物写十九種茶入(野々村仁清)仕覆  江戸時代前期・17世紀 泉屋博古館東京蔵

野々村仁清作の茶入れと、美しい織の仕覆が並ぶ展示は圧巻で「溜息」です。 

唐物写十九種茶入 展示の様子 Ⓒ椿シャタル

小堀遠州愛玩の小井戸茶碗の代表作「小井戸茶碗 銘 六地蔵」が主役となった茶会が大正8年(1919)に行われました。小川治兵衛の作庭も美しい大阪、茶臼山にある住友本邸、好日庵での「十二代友親30年忌の先考追善茶会」。遠州が京都・伏見六地蔵で見出したことに由来するこの小井戸茶碗「六地蔵」は友親が収集しますが、使うことなくこの世を去ります。友親の追福供養のための茶会の主役はこれの他にはないと考えられ、そこで披露されることになりました。これは住友春翠の最も有名な茶会ともいわれています。

小井戸茶碗 銘 六地蔵  朝鮮時代・16世紀 泉屋博古館東京蔵

好日庵での「十二代友親30年忌の先考追善茶会」で「六地蔵」にふさわしいものをと揃えられた瀬戸肩衝茶入「真如堂」も並び展示されています。内覧会のおり、素敵な羽織をお召の袋師の三浦和子先生をお見掛けしました。所蔵作品の袋や仕覆の修復を数多く手掛けていらっしゃる三浦先生ですが
今回、この「小井戸茶碗 六地蔵」の袋、そして「真如堂茶入」の仕覆2点などの修復を手掛けられました。新刊図録『泉屋博古 茶道具』では「修復した袋を通じて、当時の茶人たちの美意識を感じ取っていただけたらと思う」と記されています。

瀬戸肩衝茶入 銘 真如堂 江戸時代前期・17世紀 (中央)
小井戸茶碗 銘 六地蔵 朝鮮時代・16世紀
祥瑞共蓋水指 明時代・17世紀   Ⓒ椿シャタル

「茶杓は”茶人の刀”あるいは”茶人の魂”とも表現され、取り合わせの要となる茶道具」と竹芸家 池田瓢阿さんはおっしゃいます。江戸、明治、大正時代の時代に沿ったコレクションが展示されています。また茶杓の鑑賞用語の説明がパネル展示され、あらためて茶杓の奥深さを感じます。

展示の様子 Ⓒ椿シャタル

茶杓 銘 さされいし 裏千家十一代玄々斎精中 江戸時代・慶応元年(1865)
一行書「懈怠比丘不期明日」 裏千家十一代玄々斎精中 江戸時代後期・19世紀
玄々斎好鯱釜写 大西浄寿 江戸時代後期・19世紀 Ⓒ椿シャタル

一行書「日々是好日」 千宗旦 江戸時代前期・17世紀
展示風景 Ⓒ椿シャタル

一行書「日々是好日」は「碧巌録」にみえる雲門文偃の句。その日その日がすべてみな最良のかけがえのない一日であると説く。茶席の掛物の定番ともいえる一行。住友家の茶臼山邸の好日庵には、この書を用いた軒額がかがられています。十五代友純、住友春翠の別号「好日庵」の原点ともいえる書です。

白鶴香合 野々村仁清 江戸時代前期・17世紀 泉屋博古館東京蔵 Ⓒ椿シャタル

今回、会場で一番に目に入ってくるのが、愛くるしい表情で出迎えてくれる白鶴。江戸時代前期ろくろの名手として京焼における色絵の大成者、型押しの名手として知られ、「仁清」の印を御室焼に捺すことで仁清ブランドを確立した陶工、野々村仁清の名品。もう少しするとやって来る寿ぎの季を待っているかのようにも見えました。鹿ケ谷の深まりゆく秋の日差しを感じながら、ゆく人、むかえた人をもて成した伝世の茶道具と、ゆっくりと語らってみてはいかがでしょう。

展覧会概要

展覧会名: 伝世の茶道具 ー珠玉の住友コレクションー
会期:2021年11月6日(土)~12月12日(日)月曜休館
会場:泉屋博古館(京都・鹿ヶ谷)
開館時間:午前10時 ~ 午後5時(入館は午後4時30分まで)
入館料:一般800円 高大生600円 中学生以下無料
(本展覧会の入場料で青銅器館もご覧いただけます)
20名以上は団体割引20%、障がい者手帳ご呈示の方は無料
主催:公益財団法人泉屋博古館、日本経済新聞社、京都新聞

泉屋博古館

〒 606-8431 京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
TEL:075-771-6411
FAX:075-771-6099
https://sen-oku.or.jp/program/20211106_chadougu/

「伝世の茶道具 ー珠玉の住友コレクションー」展                @京都シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「伝世の茶道具 ー珠玉の住友コレクションー」展@京都 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上10組20名様に、招待券(12月12日まで利用可能)をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。転売業者などに転売されませんようにお願い致します。
応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年11月20日 (土曜日)24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選賞品の送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  ※建物名、部屋番号の明記がない場合、郵便が差し戻される事が多く当選無効となります。
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