『抵抗(レジスタンス)—死刑囚の手記より』(56)、『スリ』(59)、そして現在新宿シネマカリテ他にて絶賛公開中の『田舎司祭の日記』(51)など、映画史に残る名作を生み出したロベール・ブレッソン監督。そして「罪と罰」、「カラマーゾフの兄弟」などで知られる19世紀を代表するロシアの文豪、ドストエフスキー。
このふたりの強力なコラボが実現した奇跡的な傑作『やさしい女』が 11月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺にてリバイバル公開されることが決定した。

本作は当初4月 29日から公開予定だったが、緊急事態宣言の延長に伴って一旦白紙に。ただ本年はドストエフスキー生誕200年にあたる記念の年ということもあり、この度改めて公開が決定した。さらに公開日の11月 12日はドストエフスキー誕生日(11月11日)の翌日にあたる。

原作はドストエフスキーの短篇のなかでも最高傑作と呼ばれる「やさしい女幻想的な物語」。ブレッソンは原作のプロットを守りながらも、物語の舞台をロシアから現代(60 年代後半)のパリへと移し、大胆な翻案を施しました。また本作はモノクロの厳格な画面作りを続けてきたブレッソンの初カラー作品で、ジャック・ドゥミ監督の『ロシュフォールの恋人たち』(67)などを手掛けたギスラン・クロケによる美しい映像がデジタルリマスターで鮮やかに甦る。

安物のカメラやキリスト像を質に出す、若く美しいがひどく貧しい女と出会った男は、彼女を説き伏せ結婚する。質素ながらも順調そうに見えた結婚生活だったが、妻のまなざしの変化に気づいたとき、夫の胸に嫉妬と不安がよぎる・・・・。衝撃的なオープニングから始まる本作は、一組の夫婦に起こる感情の変化と微妙なすれ違いを丹念に描き、夫婦とは、愛とは何かという根源的な問いを投げかける。

孤独な女を演じるのは、ベルナルド・ベルトルッチ監督『暗殺の森』(70)、『1900 年』(76)で知られるフランスの女優ドミニク・サンダ。ファッション雑誌 VOGUE でモデルをしていたところをブレッソン監督に見出され、本作で映画デビュー。自らも15歳で年上の男と結婚するも数カ月で離婚という経歴を持つサンダは、映画初出演ながら、年上の夫を翻弄しながらも苦悩する女を見事に演じてみる。また極端なまでに台詞を排した男女の視線のドラマともいえ、サンダの視線の鋭さ、恐ろしさが彼女の心境の変化を物語る、まさに 17 歳のドミニク・サンダの輝くような美しさを堪能できる 1 本。

『やさしい女デジタル・リマスター版』は11月12日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他にて全国順次公開

原作:ドストエフスキー「やさしい女幻想的な物語」
監督・脚色・脚本・台詞:ロベール・ブレッソン
撮影:ギスラン・クロケ
出演:ドミニク・サンダ、ギイ・フランジャン、ジャン・ロブレ
原題:Une femme douce
1969年/フランス/カラー/ヴィスタ/DCP/89分
1969年ヴェネチア国際映画祭、ロンドン映画祭、ニューヨーク映画祭招待作品
1969年サンセバスチャン国際映画祭監督賞受賞
配給」マーメイドフィルム/コピアポア・フィルム
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