《いちご泥棒》デザイン: ウィリアム・モリス Photo ⓒBrain Trust Inc. 1883年 木版、色刷り、インディゴ抜染、木綿(内装用ファブリック)92.5 x 98 cm モリス商会

このたび、奈良県立美術館にて6月26 日より、「特別展 ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡」が開催されます。
ウィリアム・モリス(William Morris 1834 - 1896)は、詩人、デザイナー、思想家、社会運動家としてそれぞれの分野で豊かな才能を発揮し、19世紀イギリスを代表する偉人として知られています。
「モダン・デザインの父」とも呼ばれ、優雅に広がる自然の草花をモチーフにしたモリス独特のデザインは、「生活のなかに美を」という自身の考え方を体現し、今も人々の居住空間を心地よく彩っています。

19世紀の英国では、ジョン・ラスキンとロセッティやミレイなどの若き芸術家たちの情熱により「ラファエル前派」という自然に忠実であった時代に立ち返ることを理念にした同盟が結成され、印象派とも並ぶほどの美術革新が成し遂げられました。
モリスはラスキンから学んだ手仕事を大切にする考え方を受け継ぎ、のちの「アーツ・アンド・クラフツ運動」(美術工芸運動)の先駆けとなったのです。
生活と芸術を一致させようとしたモリスの思想は各国にも大きな刺激を与え、アール・ヌーヴォー、ウィーン分離派などにその影響が見られます。

モリスは、1859年、結婚後に新しい住まい「レッド・ハウス」を建設し、自身の目指す快適な生活空間に、木版による美しい壁紙など内装を手がけました。
そして1861年には、家具、ステンドグラス、陶製タイル、壁紙などあらゆる種類の装飾芸術を扱う会社、「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立しました。
産業革命によって大量生産によるものがあふれた時代に、丁寧な手仕事を愛し、自然の美を讃えたデザインを生み出したのです。

本展では、これまで顧みられることのなかったモリスの幼少期や学生時代から、晩年に至るまで、デザイナーとしてのモリスの生涯を紐解きます。
モリスの制作活動は「住まい」「学び」「働いた場所」など、その時々の環境と深いつながりをもちました。
本展ではモリス自身および彼の仲間たちによるデザイン・工芸作品 80 点に、写真家・織作峰子氏が撮影したモリスにちなむ風景を組み合わせ、そのデザインの軌跡をたどります。

それでは、シネフィルでもいくつかの作品を紹介致します。
19世紀イギリスにタイムスリップして、優雅な草花や果実、鳥などをモチーフにしたウィリアム・モリスの世界をご堪能ください。

《柘榴あるいは果実》デザイン: ウィリアム・モリス Photo ⓒBrain Trust Inc. 1866年頃
木版、色刷り(壁紙)75 x 56.5 cm モリス・マーシャル・フォークナー商会

1861 年、仲間たちとステンドグラス、家具などを制作するモリス・マーシャル・フォークナー商会を設立し、本格的に装飾美術に取り組み始めました。
これはモリスの初期作品に属する壁紙のデザインです。

《るりはこべ》デザイン: ウィリアム・モリス Photo ⓒBrain Trust Inc. 1876年
木版、色刷り(壁紙)84.5 x 55.5 cm モリス商会

『地上楽園』(1868-70)で詩人としても名声を得る一方、1875 年に単独経営によるモリス商会へ改組してから、活動は一層活発になります。
この作品のように、モチーフを反復させる壁紙のパターン・デザインにも洗練に磨きがかかり、円熟味を増してきます。

《いちご泥棒》デザイン: ウィリアム・モリス Photo ⓒBrain Trust Inc. 1883年
木版、色刷り、インディゴ抜染、木綿(内装用ファブリック)92.5 x 98 cm モリス商会

単独経営のモリス商会になってからは染色にも力を入れます。これは藍(インディゴ抜染法)に赤と黄を組み合わせた色鮮やかな労作で、モリス商会のプリント木綿の中でも高い人気を得ました。

ウィリアム・モリス著『世界のかなたの森』 ウィリアム・モリス
Photo ⓒBrain Trust Inc.1894年 21 x 14.8 cm ケルムスコット・プレス

1891 年、書物の私家版印刷工房ケルムスコット・プレスを作り、装丁にこだわりぬいて「書物の芸術」を追究していきます。モリスは『世界のかなたの森』をはじめ、多くのファンタジー小説を手がけ「モダン・ファンタジーの父」とも目されています。

《卓上ランプ》 デザイン: ウィリアム・アーサー・スミス・ベンソン ランプシェード:ジェームズ・パウエル Photo ⓒBrain Trust Inc. 20世紀初頭 銅、真鍮、オパルセントガラス 高さ42.5 x 幅28cm (ランプシェード部分直径10cm) W・A・S・ベンソン社

19 世紀後半のイギリスで興り、モリスが先導した「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、芸術的な職人の手仕事で日常生活に美的な豊かさともたらそうとしたもので、本展にはこうしたモリスの仲間たちの作品も出品しています。
この作品のオパルセントガラス(乳白色ガラス)はフランスのガラス工芸の巨匠ルネ・ラリックも使っています。

織作峰子(撮影) 《赤煉瓦の館》 Photo ⓒMineko Orisaku, ⓒBrain Trust Inc.
Thanks to the National Trust Red House, Bexley, London タイプCプリント 55.5×84.1cm

写真家・織作峰子氏が撮影したモリスにちなんだ風景の一つで「レッド・ハウス」の外観。レッド・ハウスはモリスが 20 代後半を過ごした自宅兼工房で、内装にはモリスも参加しました。デザイナーとしてのモリスの原点と言える場所で、今も保存されています。

植物や鳥など自然のモチーフを優美に繊細にデザインし、創り出されたモリスのデザインは今なお、人々を魅了し、日常生活に美をもたらしています。   (美学美術史学科専攻 米澤美也子)

展覧会概要

展覧会名 特別展 ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡
主催・会場 奈良県立美術館 〒630-8213 奈良県奈良市登大路町 10-6
TEL 0742-23-3968/FAX 0742-22-7032/テレフォンサービス 0742-23-1700
公式ホームページ http://www.pref.nara.jp/11842.htm
ツイッターアカウント @ArtmuseumN フェイスブック @narakenmuseum
会期 2021 年 6 月 26 日[土]─8 月 29 日[日]
開館時間 9 .時~17 時(入館は閉館の 30 分前まで)
休館日 毎週月曜(8 月 9 日は開館)と 8 月 10 日[火]は休館
観覧料 一般=1,200 円、大・高生=1,000 円、中・小生=800 円
*新型コロナウイルス感染症拡大防止のため団体料金の設定はございません。
*身体障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と介助の方 1 人、外国人観光客(長期滞在者、留学生を含む)と付添の観光ボランティアガイドの方1人は無料でご覧いただけます。
交通アクセス 近鉄 奈良駅から 徒歩約5分
       JR 奈良駅からバス「県庁前」下車すぐ

「特別展 ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡」@奈良シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「特別展 ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡」@奈良シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。
☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年7月12日 月曜日 24:00
1、氏名
2、年齢
3、当選プレゼント送り先住所(応募者の電話番号、郵便番号、建物名、部屋番号も明記)
  建物名、部屋番号のご明記がない場合、郵便が差し戻されることが多いため、当選無効となります。
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また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。