独創的な絵画表現で人々を魅了してやまない江戸時代の絵師・伊藤若冲(1716~1800)が、300年の時を超え、今また脚光を浴びています。

四季折々の花鳥風月を鮮やかな色彩で細密に描き、鶏や鶴、犬、虎、昆虫などを鋭い観察眼で奇抜に用い、独特の画面構成、絵画技法を駆使した、斬新な「若冲ワールド」は、まさに「超絶技巧」。
見る人すべてを惹きつけ、感動させます。
これこそ、現代が求める日本美術の「粋」でしょう。
                                             このたび、京都・相国寺承天閣美術館において「若冲と近世絵画」展が開催されます。
18世紀の京都では、多くの絵師たちが手腕を振るいましたが、相国寺と深いかかわりのある伊藤若冲や、池大雅、円山応挙など京の絵師たちの絵画が紹介されています。

「ライジング若冲 〜天才 かく覚醒せり〜」というタイトルで、新春のNHKのドラマにもなりましたが、天才絵師・若冲の誕生には、相国寺の大典禅師との友情、池大雅や円山応挙との交流がかかわっていたのです。
本展は、若冲をはじめとする絵師たちの魅力的な世界を実感していただける、またとない機会となることでしょう。
それでは、シネフィルでも展覧会の構成に従っていくつかの作品を紹介させていただきます。

《伊藤若冲像》久保田米僊筆 一幅 絹本著色 明治時代 相国寺蔵

第1章 伊藤若冲と相国寺

京都の錦市場の青物問屋の長男として生まれた伊藤若冲でしたが、世俗的なことには全く興味がなく、鳥の写生など絵画の修行に没頭していました。
やがて若冲40歳の時、家業を弟に譲り、画才を認められた相国寺の梅荘顕常(大典禅師)のもとで、仏画の模写など一心不乱に精進し、遅咲きながら、絵師としてその天才ぶりを発揮していきます。

明和2年(1765)9月29日、50歳の伊藤若冲は相国寺へ《釈迦三尊像》と動植物を精緻に描いた花鳥画《動植綵絵》(全30幅)を寄進しました。
そして同年12月には相国寺と死後の永代供養の契約を交わし、翌明和3年(1766)、相国寺の梅荘顕常の撰文による生前墓を相国寺松鷗庵に建立したのです。

《釈迦三尊像》伊藤若冲筆 三幅 絹本著色 江戸時代 明和二年(1765) 相国寺蔵

釈迦三尊像は、左から文殊菩薩像、釈迦如来像、普賢菩薩像の三尊で、中国の宋のものを若冲が模写しましたが、色鮮やかで精緻に描かれ、荘厳な雰囲気はオリジナルを超えていると言われています。

第2章 天明の大火とその復興

天明の大火(1788年)によって伽藍の大部分が灰燼に帰した相国寺。相国寺の伽藍再建は、当時の絵師達の活躍の場ともなりました。

《相国寺方丈杉戸絵》 原在中筆 鳳凰図 三十六面のうち 板地著色 江戸時代 相国寺蔵

第3章 金閣寺、銀閣寺の障壁画

北山の鹿苑寺(金閣)、東山の慈照寺(銀閣)の襖絵にも18世紀の京の町絵師たちの画技がさえわたります。

重要文化財 《鹿苑寺大書院障壁画》 伊藤若冲筆 菊鶏図襖絵 五十面のうち 紙本墨画 江戸時代 宝暦九年(1759) 鹿苑寺蔵

若冲は色鮮やかな「動植綵絵」の連作と同時に、鹿苑寺大書院障壁画も手がけました。
今までの彩色画から墨を用いて斬新な水墨画の世界を創り出したのです。

《慈照寺境内図》 維明周奎賛 池大雅筆 一幅 紙本淡彩 江戸時代 慈照寺蔵

池大雅(1723-76)は、与謝蕪村とともに、江戸時代中期の日本を代表する文人画家 (南画家)で、書家としても高く評価されていました。
「天衣無縫の旅の画家」とも言われたように、実際に旅して感銘を得た風景を描きました。
中国の山水画を独自に発展させ、清新で穏やか、飾らない作風は本人の性格をも表していたようです。

第4章 十八世紀の京都画壇の名宝

円山応挙(1733 ~95)も慈照寺銀閣へ仏画を奉納するなど、その交流が伺えます。
応挙は、近現代の京都画壇にまでその系統が続く「円山派」の祖であり、常に懐中に写生帖を忍ばせ、写生を重視していたことが特徴です。
応挙画は、こうした写生の技術を基礎とし、日本絵画の伝統的な画題を装飾性豊かに描き出しています。

重要文化財 《七難七福図巻 天災巻》 円山応挙筆 三巻のうち 紙本著色 江戸時代 明和五年(1768) 相国寺蔵

円満院門主祐常は、応挙の主要なパトロンで、代表作の『七難七福図』、『牡丹孔雀図』などは第二次大戦後まで三井寺円満院に伝来したものです。

重要文化財 《牡丹孔雀図》 円山応挙筆 一幅 絹本著色 江戸時代 明和八年(1771) 相国寺蔵 

若冲がその生涯をかけて、相国寺の大典禅師に捧げた《釈迦三尊像》と《動植綵絵》は、色彩豊かで、精密に描かれ、まさに「圧巻」の芸術作品です。
琳派絵画に見られる四季折々の植物の美しさに加え、若冲独特の「生きとし生けるものを愛する」精神で描き、ユーモアセンス溢れる奇想天外な世界を見せてくれます。
これとは対照的に、《鹿苑寺大書院障壁画》はシックなモノトーンの水墨画でまさに日本画の「粋」が感じられます。
「古いけれど新しい」、「伝統的だけれど斬新」。
それが、私たちが若冲に惹かれてやまない理由でしょう。
時空を超え、遥か江戸時代に思いを馳せ、相国寺で、京の絵師たちの作品をご堪能ください。
                          執筆 美学美術史専攻 米澤美也子

展覧会概要

展覧会名 若冲と近世絵画
開催場所 相国寺承天閣美術館
会期
【Ⅰ期】 2021年4月29 日(木・祝)~7月25日(日) 
【Ⅱ期】 2021年8月1日(日)~10月24日(日)
※新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令により5月11日まで休館されておりましたが、5月12日(水)より、再開いたします。
開館時間は、従来通り10時~17時(最終入場は16時30分)で変わりありませんが
混雑時には、展示室内の入場制限を予定しております.
開催時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
拝観料 一般800円 65歳以上・大学生600円  中高生300円  小学生200円

主催 相国寺承天閣美術館  日本経済新聞社 京都新聞
協賛 一般財団法人萬年会 鹿苑寺 慈照寺
協力 MBS
アクセス 京都市営地下鉄 今出川駅下車 3番出口から徒歩8分

相国寺承天閣美術館 photo by © cinefil yonezawa miyako

「若冲と近世絵画」@京都 シネフィルチケットプレゼント

下記の必要事項、をご記入の上、「若冲と近世絵画」@京都 シネフィルチケットプレゼント係宛てに、メールでご応募ください。
抽選の上5組10名様に、招待券をお送りいたします。
この招待券は、非売品です。
転売業者などに転売されませんようによろしくお願い致します。

☆応募先メールアドレス miramiru.next@gmail.com
*応募締め切りは2021年5月24日 月曜日 24:00

1、氏名
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また、抽選結果は、当選者への発送をもってかえさせて頂きます。