VR映画の上映・コンペティションを行う日本初の国際映画祭「Beyond the Frame Festival(ビヨンド・ザ・フレーム・フェスティバル)」が2月21日(日)に最終日を迎えました。

イベント最終日となる昨日2月21日(日)はクロージングセレモニーをオンラインにて実施しました。ショーケース形式で選出された全18作品から3つのアワードが決定。
グランプリには、ある夏の午後、親戚一同がおばあちゃんの家に集まり、彼女とのひと時を過ごす家族の物語「HOME」とインドネシアの首都ジャカルタのとある路地で暮らす、ジャワ人の家庭を描いたアニメーション作品「Replacements/諸行無常」が受賞しました。
また、VRの特性を活かしながら、 最も優れたストーリーを持つ作品に与えられる賞VR Story Awardには、1935年に広島からカナダに渡った沖田米三が、戦争や強制収容所での体験を乗り越えて生きていく姿を、彼の孫である監督が制作した「The Book of Distance」。
VRの特性を活かしながら、最も優れた体験を提供する作品に与えられる賞VR experience Awardには母の胎内で紡がれる、親子の物語をアニメーションで表現した「MOWB」が受賞しました。

審査員を務めた園子温は「VRの可能性を感じさせてくれた」、大宮エリーは「映画では得られない感動、VRだからこそ、心の奥まで染みこむ不思議な体験をさせてくれた」、福田淳は「VR映画祭というと、アニメばかりになると思っていたら、実写が思いのほか多くて、新しい映像体験になったと思う」と総評しました。今回、映画祭アンバサダーを務めたコムアイも「もともとVRに懐疑的だった自分の世界が開けた気がする」とVRの可能性に触れ、それぞれの感性を刺激された様子。さらに園は「映画監督の人はVRを否定するひとが多いかもしれない。(VRは)映画を破壊する恐れもある。どんどんVRが進化して、映画よりもさらに新しい表現のジャンルとして確立していくのはいいと思いました。僕らがやってきたこととは違うことが今から始まる。映画は四角いスクリーンを見ている、二次元なので、不自由さからは脱出できませんから、肉体の限界を超えるところにVRのすごさがあると思います」と映画監督ならではの視点でも意見を述べ、イベントの最後には、それぞれ制作してみたい作品にも触れ、園子温は「新幹線に6時間乗っているやつとかさりげないVRを観てみたい気がする」と言いつつ、最後は「まずは世界一素敵な恋人を作るところからはじめたいです(笑)」とVRを使った作品創造に意欲を見せました。

イベント終盤では、グランプリを受賞した「HOME」の監督HSU Chih-Yenが、映画にも出演していた自身の子供として登場し、VRゴーグルポーズを決めたフォトセッションが実現。オンライン開催だからこそ登場した、小さなサプライズゲストの登場に出演者一度和みながら、第一回を迎えた映画祭が閉幕しました。
尚、本イベントを含めた全8回のイベントは、YouTubeにてアーカイブを3か月間配信します。

Beyond the Frame Festival
(ビヨンド・ザ・フレーム・フェスティバル)

Beyond the Frame Festival 2021 クロージングセレモニー 
2月21日(日)19:00~20:30 *オンライン
登壇者 :
KOM_I(歌手・アーティスト)*映画祭アンバサダー
園子温(映画監督、脚本家)*審査員
大宮エリー(作家、画家)*審査員
福田淳(ブランド・コンサルタント、株式会社スピーディ 社長)*審査員
ナビゲーター:届木ウカ(Vtuber)

グランプリ

「HOME」
監督:HSU Chih-Yen(台湾)

「Replacements/諸行無常」
監督:Jonathan Hagard(日本、インドネシア、ドイツ)

VR Story Award

「The Book of Distance」
監督:Randall Okita(カナダ)プロデューサー: National Film Board of Canada

VR Experience Award

「MOWB」
監督:ゆはら かずき (日本)

コメント(抜粋)

【園子温】
どの作品も素晴らしい作品ばかりでした。VRという作品の可能性を感じさせてくれた。何本かに選ぶことが難しかったし、(選ばなければならないことが)残念なところでもありました。
「The Book of Distance」触って考える作品では、とても秀でていました。本当の父のように触って感じることができました。いままでおもしろいとおもったことがあまりなかったのですが、今回触るということに「こういうことなんだな」と実感できました。
「MOWB」本当に感動しました。自分のお母さんとか妻とか子供とかと繰り返し見たいです。非常に涙が出そうなくらいでした。
「HOME」VRはアニメしかおもしろいものがないのでは、と思っていたのですが、実写の方法を勉強させていただいたし、実写でやることに考えさせられました。普通の映画ではできないし、VRだからこそできるシチュエーションでした。
「Replacements/諸行無常」シンプルなアニメで、自分の周りの路地もどんどん変わっていった。自分の田舎の路地の変化もぜひ作ってほしいなと思いました。一番大好きな作品で、この映画に出会えたことがよかったと思っています。
どんどんできないことを拡張していくことをしてほしいと思います。さらにVRが進化すると、さらに閉じることもできると思います。例えば、世界一いい女を作ってしまったら、もう二度と現実には戻ってこない世界も絶対にやってくる。いかに閉じたVRとは別に開かれたVRを作っていくのかという課題があると思います。まずは世界一素敵な恋人を作るところからはじめたいです(笑)

【大宮エリ―】
自分がすごく勉強になったなと思う審査でした。創作をしているんですが、たくさんのインスピレーションをもらって、1本1本が、かけがえのないものになりました。いちファンとしてたくさんの人に観てもらいたいと思いました。映画では得られないような感動、VRだからこそ、もっと心の奥まで染み込んだ、不思議な体験をしてもらったなと思いましたし、めちゃくちゃ感動して涙が出ました。”あれは、なんだったんだろう”と思いながら、すごいインパクトと経験をさせてもらったなと思いました。園さんが(アワード作品を)4つにしようと言ってくれて、とてもよかったと思いました。これから監督たちがどんな作品を作るのか追いかけていきたいなと思います。
(今回映画を観て)VR映画が技術の進歩で失われたあったかさを描いている気がしました。大事なメッセージが多かったので、時代の進歩で失われていくものをVRが補完していくのではないかと思います。映画祭がメジャーになっていくのを希望しています。

【福田淳】
VR映画祭の審査基準がないのに、審査員が示し合わせたわけではなく、静かなドラマ性が強いものが入ったのがおもしろいと思いました。一回みたら、その場所から離れられないような感覚がありました。VR映画祭というと、アニメばかりになると思っていたら、実写が思いのほか多くて、新しい映像体験になると思う。(グランプリ2作品について)どちらが優れている、ではなく、それぞれの良さがでていたので、園監督の提案で2作品のグランプリにできてよかったです。
映像エンターテインメントに興味を持っている人が明日からNo.1をとれるジャンルだと思いますので、来年からはもっといろんな人が世界中から挑戦してくれるといいんじゃないかなと思いました。

【コムアイ】

今回受賞された皆さん、おめでとうございます。VRに懐疑的だった人間で、自分のためになり、自分の世界が開けて、すごく嬉しかったです。作品をみていて、これは、もっと早く出会いたかった、もっとおもしろさを伝えたいなと思ったので、アンバサダーのお仕事をいただけて嬉しかったです。
議論が交わされて、日本の作品がもっと豊かになっていくといいなと思いました。日本のVRの作品を作る人たちに刺激になったことがいいと思いますし、どうやったら面白い作品が作れるのかという議論ができたことが私自身嬉しかったです。

【twitter】@btffjphttps://twitter.com/btffjp

【Facebook】https://www.facebook.com/btffjp