東日本大震災後、東北を拠点に人々の日々の営みや刻一刻と変化する風景を記録してきた映像作家 の小森はるか。画家で作家の瀬尾夏美と小森によるアートユニット「小森はるか+瀬尾夏美」の最新映画『二重のまち/交代地のうたを編む』公開にあわせて、東京、愛知、大阪、京都にて「映像作家・小森はるか作品集 2011——2020」と題した特集上映を開催します。劇場初上映作品を含む全9作 品〈7プログラム〉を一挙上映。
特集上映「映像作家・小森はるか作品集 2011-2020」
いまここに見えないものを/思い浮かべる/余白を/写す
すでに劇場公開され、高い評価をえている『息の跡』(2016年)、『空に聞く』(2018年)に加えて、小森と瀬尾が陸前高田市で瓦礫撤去のボランティアに参加した際に出会った、りんご農家を営むご夫婦との記録『米崎町りんご農家の記録』(2013年)、仙台在住の美術家・青野文昭さんの制作分風景を追ったドキュメンタリー『かげを拾う』 (2021年)など、劇場初上映作品を含む全9作品〈7プログラム〉を一挙上映。
ポスターヴィジュアルは、『息の跡』『空に聞く』などこれまでの小森はるか監督作品のほか、パク・チャヌク監督『お嬢さん』、ワン・ビン 監督『死霊魂』などの宣伝美術を手がけてきたデザイナーの成瀬慧さん。
【上映作品 全 9 作】
the place named/砂粒をひろう——Kさんの話していたこととさみしさについて*/米崎町りんご 農家の記録/波のした、土のうえ*/息の跡/砂連尾理 ダンス公演「猿とモルターレ」映像記録/ 根をほぐす/空に聞く/かげを拾う(*=「小森はるか+瀬尾夏美」制作作品)
Aプログラム
the place named
2012年/36分/
監督・脚本・撮影:小森はるか 録音:鈴尾啓太、菅野慧 舞台演出・脚本:原麻理子 舞台戯曲:「わが町」ソーントン・ワイルダー 作、額田やえ子 訳 出演:原麻理子、遠藤麻衣、栗原たづ、西山朱子、花戸祐介、深堀 見帆、宮永聡
ソーントン・ワイルダーの戯曲「わが町」をもとに、田舎町で暮らす少女の一日と「わが町」第3幕を稽古する劇団員たちが交互に描かれる。死者が生者の世界について語る台詞を練習する声が、田舎町の日常に重なり、演じる役者自身にも投影される。脚本段階から出演者とともに制作。
砂粒をひろう——Kさんの話していたこととさみしさについて
[劇場初上映]
2013年/23分/
制作:小森はるか+瀬尾夏美 テキスト:瀬尾夏美 撮影・編集:小森はるか
2011年4月、大津波から間もない陸前高田のまちで出会ったKさん。小森と瀬尾は、その後約一年間、彼女の言葉とその傍らにあった風景を記録していた。小森の映像が当時の状況や語りをありのまま に伝え、瀬尾のテキストとドローイングはその場の会話や時間を咀嚼するなかで生まれてくる。二つの視点をダブルスクリーンで投影したインスタレーション作品を、シングル版に編集し上映する。
Bプログラム
米崎町りんご農家の記録
[劇場初上映]
2013年/42分/
撮影・編集:小森はるか ※「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の参加者として制作・発表
陸前高田市で瓦礫撤去のボランティア活動に参加した際に小森と瀬尾が出会った、りんご農家のご夫婦との記録。おふたりは津波の被害を受けた家の修復を待ちながら、家の脇に残った納屋を仮住まいし、裏山のりんご畑を守りながら暮らしを続けていた。つぎ木や摘花作業の様子を小森のキャメラが丁寧に写す。
根をほぐす
[劇場初上映]
2018年/18分/
撮影・編集:小森はるか ※「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の参加者として制作・発表
『息の跡』の主人公である陸前高田で種苗店を営む佐藤貞一さんが、2016年に高台へ店を新設するため、 震災後に続けてきた店舗を自らの手で解体していく様を記録した短編。『息の跡』のエンドクレジットに挿入された場面の素材より再編集をした。
Cプログラム
波のした、土のうえ
2014年/68分/
制作:小森はるか+瀬尾夏美 出演:阿部裕美、鈴木正春、紺野勝代、瀬尾夏美
テキスト:瀬尾夏美 撮影・編集:小森はるか
2014年、陸前高田ではいよいよ復興工事が本格化。風景が塗り替えられる前に、まちの人たちと一緒にかつての町跡を歩き、この場所でこそ思い出される記憶や、いま抱えている感情などについて、話を聞かせてもらう。そこから瀬尾が物語を書き、ご本人とともに訂正や書き換えを行なったうえで朗読をしてもらい、小森がその声を頼りにしながら、この町の風景や時間を重ねるようにして映像を編んでいく。
Dプログラム
息の跡
2016年/93分/
製作:カサマフィルム+小森はるか
監督・撮影・編集:小森はるか
編集:秦岳志 整音:川上拓也 特別協力:瀬尾夏美 プロデューサー:長倉徳生、秦岳志
陸前高田の荒涼とした大地に、ぽつんとたたずむ一軒の種苗店「佐藤たね屋」。津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一さんは、その跡地に自力でプレハブを建て、営業を再開した。また佐藤さんは、みずからの体験を独習した英語で綴り自費出版していた。記憶と記録のあわい。かすかな痕跡とぬくもりを映画は写す。
Eプログラム
砂連尾理 ダンス公演「猿とモルターレ」映像記録
[劇場初上映]
2017 年/110 分/
制作:「猿とモルターレ」アーカイブ・プロジェクト
振付・演出:砂連尾理
出演:垣尾優、伴戸千 雅子、磯島未来、砂連尾理、藤原康弘(照明)、西川文章(音)、追手門学院高校演劇部ほか市民ワークショップ参加者
テキスト:瀬尾夏美「二重のまち」
ドラマ・ティーチャー:いしいみちこ マネージメント:内山幸子
撮影:小森はるか、酒井耕 編集:小森はるか、中村大地
振付家・ダンサーの砂連尾理が震災後に避難所生活する人びととの交流を通じて、非常に困難な状況 を経験した人びとの「命懸けの跳躍(=サルト・モルターレ)」を考察し、未来に向けて生きる私たちのサルト・モルターレを模索したパフォーマンス作品「猿とモルターレ」。2017 年 3 月に大阪・茨木市市民総合センターで上演された公演の記録。
Fプログラム
空に聞く
2018年/73分/
監督・撮影・編集:小森はるか
撮影・編集・録音・整音:福原悠介
特別協力:瀬尾夏美
企画:愛知 芸術文化センター
制作:愛知県美術館 エグゼクティブ・プロデューサー:越後谷卓司
東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。 地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。
Gプログラム
かげを拾う
[劇場初上映]
2021 年/70 分(予定)/
製作:せんだいメディアテーク
撮影・編集:小森はるか
録音:福原悠介
仙台在住の美術作家・青野文昭さんの制作風景を追ったドキュメンタリー。せんだいメディアテーク での個展にむけて青野さんが取り組んでいた、仙台市八木山と岩手県宮古市を舞台とした新作制作の中で、「拾う」「なおす」行為にキャメラを向けた。「青野文昭 ものの, ねむり, 越路山, こえ」の関連企画として本作を上映。
プロフィール
小森はるか(こもり・はるか)
1989年静岡県生まれ。映像作家。映画美学校12期フィクション初等科修了。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業、同大学院修士課程修了。
2011年に、ボランティアとして 東北沿岸地域を訪れたことをきっかけに、画家で作家の瀬尾夏美と共にアートユニット 「小森はるか+瀬尾夏美」での活動を開始。翌2012年、岩手県陸前高田市に拠点を移し、人々の語り、暮らし、風景の記録をテーマに制作を続ける。2015年、仙台に拠点を移し、東北で活動する仲間とともに記録を受け渡すための表現をつくる組織「一般社団法人NOOK」を設立。2015年、長編映画第一作となる『息の跡』が山形国際ドキュメンタリー 映画祭2015で上映され、2017年に劇場公開。2018
年に製作した『空に聞く』は、あい ちトリエンナーレ2019、山形国際ドキュメンタリー映画祭2019、第12回恵比寿映像祭で 上映され、2020年に劇場公開。2021年、「小森はるか+瀬尾夏美」の最新映画『二重の まち/交代地のうたを編む』を劇場公開。
特集上映「映像作家・小森はるか作品集 2011-2020」
【開催地域/劇場/時期】
東京 ポレポレ東中野
3月6日(土)から3月19日(金)まで開催
愛知 名古屋シネマテーク
3月20日(土)から3月26日(金)まで開催
大阪 シネ・ヌーヴォ
4月3日(土)から開催
京都 出町座
4月2日(金)から開催
企画:東風+ポレポレ東中野
配給:東風
協力:瀬尾夏美、砂連尾理、カサマフィルム、愛知県美術館、せんだいメディアテーク
3月11にちをわすれないためにセンター
◆小森はるか+瀬尾夏美 『二重のまち/交代地のうたを編む』
『二重のまち/交代地のうたを編む』予告篇
出演:古田春花 米川幸リオン 坂井遥香 三浦碧至
監督:小森はるか + 瀬尾夏美
撮影・編集:小森はるか 福原悠介 録音・整音:福原悠介
作中テキスト:瀬尾夏美 ワークショップ企画・制作:瀬尾夏美 小森はるか スチール:森田具海
配給:東風
(C) KOMORI Haruka + SEO Natsumi
2019 年|79 分|日本|DCP|
英題:Double layered town/Making a song to replace our positions