今回の記事では、”映像配信”の新しい形について書かせて頂こうと思います。
映像作品を制作したものの一般の方に見せる展開が出来ていない、という方には特に有益な情報になると思いますので、是非ご参考までに。

日本における映像作品の配信

私は現在Atemoという会社を経営して映画関連の事業をしていますが、他にもいくつかの会社に席を置いて事業の協力をしています。今回ご紹介するのは、その別会社で立ち上げた映像コンテンツ流通サービス、SAI Distributor(サイディストリビューター)です。

現在、映画やドラマといった映像作品は、NETFLIXやDisney+、Hulu、Amazonプライムビデオといった外資の配信プラットホームや、U-NEXTやDMM.com、GYAO!、ひかりTVなどの日本の配信プラットホームで配信されています。月額の見放題サービスとして台頭しているNETFLIXなどは、プラットホームオリジナルの映画やドラマを制作してそれを呼び水に顧客を囲い込んでいます。

これらのプラットホームで配信される映画やドラマは、いわゆる<商業作品>として劇場上映やTV放映の為に制作された作品がほとんどになっています。
サイディストリビューターは、一般の人が制作した<非商業>の映像作品を、配信プラットホームで一般の人に向けて配信できるというサービスです。

音楽コンテンツでの流通サービス

サイディストリビューターは、既に音楽コンテンツの世界では確立されている流通サービスのビジネスモデルを踏襲したものになります。

音楽の流通サービスとして有名なのは、2006年にアメリカでスタートし2012年から日本でも展開しているTuneCoreです。TuneCoreは、委託料を支払う事で自身の持つ楽曲を世界185ヶ国以上の配信ストアで配信販売できるもので、iTunesやSpotifyといった外資プラットホームを始めAWAやmusic.jp、レコチョクのような日本のプラットホームなども配信先として網羅しています。非商業で自分で趣味として音楽を作っているという人でも、このTuneCoreを使えば世界の有名プラットホームで自分の楽曲が配信できるのです。

TuneCoreはそのビジネスモデルも特徴的で、委託者はシングル¥1,410(税抜)・アルバム¥4,750(税抜)の年間委託料をTuneCoreに支払う事で、プラットホームから分配される収益はそのまま100%委託者へ還元されるという形になっています。

コンテンツ以外の業種でも、流通における卸しはその取引額に応じたマージンを取るのが通常のビジネスモデルだと思いますが、TuneCoreの場合は固定の委託料のみで、楽曲が巨額の売上をあげてもそこからマージンを取る事なく100%委託者に戻しているのが特徴です。

主にはインディーズと呼ばれる音楽制作者たちがこのサービスを利用している訳ですが、TuneCore Japan公式サイトによると赤西仁や錦戸亮、ギターウルフや曽我部恵一といった著名なアーティストまでTuneCoreを利用して配信しているそうです。2019年の振り返りとしてこれまでの収益還元額の推移などもデータが発表されていますのでリンクにてご紹介します。

サイディストリビューターの特徴

サイディストリビューターは、いわば映像版のTuneCoreといった内容のサービスです。

サイディストリビューターでは、AmazonプライムビデオやDMM.com動画、GYAO!ストア、ひかりTVなどのプラットホームで映像作品の配信ができ、かかるコストは固定の委託料のみでプラットホームから分配される収益は100%委託者に還元します。

上記のプラットホームでは従来、商業作品として制作された映像作品の配信がほとんどでした。
本サービスによって日本の映像コンテンツの流通に変化を与え、映像作品を撮りあげたものの発表の仕方に困っているクリエイターや、作品評価を得ることを渇望しているクリエイターに対して、自由に作品を発表し、マネタイズできる環境づくりを目指しています。

サイディストリビューターの詳細についてはサービスの公式サイトを参照して下さい。

頑張り屋さんの女性と、彼女を見守る猫の物語。「Good Night」が配信中

サイディストリビューターのサービス構築にあたって、最初の1本として配信開始した作品「Good Night」をご紹介させて頂きます。

映画「Good Night」より

本作は、フィルムスクール出身のクリエイター達が依吹怜や藏内秀樹といったキャストを迎えて制作した作品。猫と暮らす女性が主人公で、猫から飼い主を見た視点も交えて女性と猫の関係をユーモラスでファンタジックに描いています。

この作品のプロデューサーとは過去に仕事でご一緒した事があり、サイディストリビューターの構想の折にちょうどこの作品と出会い最初の1本として預からせて頂きました。彼らもこの作品の展開方法について考えていたところで、我々もこうしたケースが各所に潜在しているのではないかと気づくきっかけになりました。

「Good Night」はサイディストリビューターを通じて各配信プラットホームで配信開始されていますので、該当のプラットホームを利用されている方は是非ご視聴下さい。代表してAmazonプライムビデオでの作品リンクを下記しておきます。

和田有啓
1983年神奈川県横浜市生まれ。
スポーツ取材の会社からキャリアをスタートさせ、その後、松竹芸能、電通、DLEを経て2017年に独立。フリーランスとして複数の企業と提携し映画の企画/プロデュース/配給/宣伝を行った後、2019年に自身の会社となる株式会社Atemoを設立。2020年春から日本初の会員制映画製作マッチングサイト「Green-light」を運営。