今年で第三回を迎える東京ドキュメンタリー映画祭2020が、2020年12月5日(土)〜12月11日(金)の7日間、 新宿K’s cinemaにて開催いたします。 開催に先立ちまして、激動の時代を映したラインナップによる予告編<2020年版>を公開されました。

激動の時代に対峙するドキュメンタリーが集結!

『破天荒ボクサー』(2018)、『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』 (2019)、『調査屋マオさんの恋文』(2020)、『出櫃 (カミングアウト) 中国LGBTの叫び』(2021)など、毎年劇場公開 作を多数輩出するコンペティション部門に注目が集まる東京ドキュ メンタリー映画祭2020。

本年は、香港クライシス、コロナ禍の日々、多様な性、原発問題な ど、過去最多となる51作品を上映いたします。

この度の予告編<2020年版>では、激動の時代を映したライン ナップを一部紹介。
沖縄・秋田での米軍基地建設の是非を問う『沖縄と本土一緒に戦う』、道内各地のアイヌの自由を巡る『カムイチェプ サケ漁と先住権』、ハンセン病の差別の歴史を綴る『ハンセン病を生きて』、お笑いコンビ・ウーマンラッシュアワーの村本大輔が自衛隊のミサイル基地建設に揺れる石垣島で行った独演会を映した 『ウーマンラッシュアワー村本大輔がアメリカに行くまでドキュメンタリーvol.10
赤ちゃんになりたい/vol.11嫌われることは無駄じゃない 』など、個人の映像制作が可能になった現在、ドキュメンタリー表現のスタイルは多様化。正統派のテレビ番組や記録映画の手法を使うものから、現代アート、Youtube、MV、SNS、フェイク・ドキュメンタリーを取り入れたものまで、いま国内で撮られている様々な作品が一堂に会します。

東京ドキュメンタリー映画祭2020(第3回)

■会 期:2020年12月5日(土)~12月11日(金) *7日間
■会 場:新宿K’scinema
■主 催:neoneo編集室

「東京ドキュメンタリー映画祭2020」予告編

「東京ドキュメンタリー映画祭2020」予告編

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<特別プログラム>香港クライシス

中文大学・警察と学生の衝突を映した『中大防衛戦』、堀潤(ジャーナリスト)が民主化デモを捉えた『STAND WITH HK』 の2作品を上映。香港の最前線に迫るプログラムが揃いました。

『中大防衛戦』(2020) 關震海 監督コメント
「『6月4日』は過去の悪夢ではない。一連の現実として存在する。
1989年6月4日の『天安門事件』と、その後起きた数千 件の 『小天安門事件』の総計として」中国共産党の元総書記・趙紫陽の政治秘書・鮑彤は2019年6月4日のエッセイにこう書いている。 どう生きるかを選択するのが難しい混乱の時代のさなか、あの日の「二号橋」には、互いに異なった信念や価値観を持つ者同士が、小さな橋の上で、それぞれの信念に従い動いていた。学者や知識人など、平和的手段による解決を望む人々と、暴力的な手段を是認する人々だ。やがて暗い夜は明け、正義は断ち切られ、大学は保護されたが、香港の未来は守られただろうか? 私たちは天安門事件と今回の「二号橋事件」から逃れることはできない。これらの事件はすべてジャーナリストのメモに記録されているのだから。

長編コンペティション(10作品)

『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』
 監督=青山真也 (2020年 /88分)

都営霞ヶ丘アパートは、1964年のオリンピック開発の一環で建てられた。国立競技場に隣接し、住民の平均年齢 は65歳以上となる高齢者団地であった。単身で暮らす者が多く、住民同士で支えあいながら生活していたが、2012年7月、東京都から「移転のお願い」が届く。その背景には皮肉にも、2020東京オリンピックの開催、そして国立競技場の建て替えがあった。本作は移転を強いられた公営住宅の、2014年から2017年の4年間を記録する。

『焼け跡ダイアリー 〜ツインカレンダー双子暦記〜』
 監督=原將人 (2019年/80分)

2年前の本映画祭においてグランプリを受賞した『双子暦記・私小説』の映像作家・原將人の新作はその続編であり、本人のツイッターやニュースでの生々しい記憶が残っている、2018年に見舞われた自宅火災による家屋全焼時の赤裸々な記録でもある。可燃性の高い自作フィルムを救うため火傷を負った監督の執念と、共に歩む家族が描かれ、焼け跡から発掘されたもの全てが映画に姿を変えていくその様は、観る者に強烈な記憶を植え付ける。

『40年 紅どうだん 咲く村で』
 監督=岡崎まゆみ(2019年 /102分)

2011年3月、福島第一原発事故が発生し、日本は原発再稼働か廃炉かで揺れ、原発立地地域は「原発があることの不安と、原発が無くなることの不安」に揺れていた。8年が経ち再稼働もしかたがないと、「現状容認」の空気が時代を覆うが、40年以上原発立地村でひとり闘い続けてきた男性は、今もその姿勢を貫いている。なぜ彼は闘い続けることができるのか?日本有数の原発銀座で「希望の木」を植え続ける男性と母、そして妻の40年の軌跡。

『パンデモニウム DieAter2』
 監督=藤本純矢 (2019年/118分)

摂食障害は現在、推定患者数が20万人を超えるとされる疾患だが、その実態はあまり認知されておらず、誤った情報も多く出回っている。社会が産んだ病ともいわれるこの病について、クラウドファンディングによって企画されたのが本作だ。当事者の姿を通して社会的課題や心境を、直接知ることができる。出演者は皆、日々あなたのそ ばにいる大切な人たちであったかもしれない。撮影は全編iPhoneで行われた。

『きりむすぶ』
 監督=花房慎也 (2020年/104分)

高円寺~阿佐ヶ谷~国分寺、JR中央線沿線の東京の西側で舞台や自主映画で活動する女優ホリ坊、東京に憧れて上京してきたミュージシャンの若者、そして本作の監督である40代で定職についていない花房慎也たちの10年以上に渡る交遊を記録した作品。時には借金をしたり、アルコール依存症になったり、画面に映るのはどうにもならない赤裸々な生活が中心だが、しかし、だからこそ愛おしい人生の軌跡が切り結ばれていることに気づく。

『なれのはて』
 監督=粂田剛 (2020年 /126分)

それぞれの事情で、フィリピンの地に暮らす日本の男たちがいる。日本で事件を起こし逃げてきた男、フィリピン女性にハマり妻子を捨ててきた男、仕事が無くなり半ばヤケになって日本を飛び出した男...。日本を捨て、常夏の国フィリピンで“第二の人生”を送ることを決めた彼らを待ち受けていたのは、どんな運命だったのか?彼らの先の見えない生活は、「生きる」とは何か、「幸福」とは何かといった問いを私たちに突き付ける。

『傍観者あるいは偶然のテロリスト』
 監督=後藤和夫 (2020年 /118分)

20年前の生々しい紛争の記録と、現在のパレスチナ各地を歩く男の姿が交錯する。あれからパレスチナはどう変わったのか。あの時の若者は今何を語るのか。そこに見たのは、今なおも続く占領と抑圧の実態だった。700キロにも及ぶ分離壁がイスラエルとパレスチナを分断する不気味な光景。過去と現在をさまよう主人公。世界は、そして私たちは“傍観者”のままでいいのだろうか。映画の問いかけは、重く私たちに響いてくる。

『私はおぼえている』
 監督=現時点プロジェクト (2020年 /160分)

「現時点プロジェクト」は、市井の人々の生活史を映像で記録する試みで、鳥取県内の高齢者を対象に、人生を振り返ってもらうオーラル・ヒストリーを記録してきた。そうして記録された8人の語りが編集され、映画という形になったのが本作だ。家族との思い出や土地に根差した暮らし方、そして戦争体験といったそれぞれの個人的な記憶が結びつき、いつしか土地の記憶、さらに大きな歴史の物語への広がりが感じられてくる。

『大月語』
 監督=濱田公望 (2020年 /78分)

四国西端で移ろう四季の風景や刻々と変わる海の表情に、言い伝えや祭礼、開拓民の歴史や越境する若者を重ね、さらには、ダンサーや音楽家を近未来から招き、言葉にならない土地の「語(り)」を探す。ウイルスにより人と人との繋がりが危機にさらされる今だが、この土地はそうした流れから捨て置かれたのではないか。そのようにも感じられる大月町の「地底から遠未来」を、無作為にダイブするタイムマシンの感覚で捉えていく映像詩的作品。

『白根紙鳶見聞録 凧ノ国』
 監督=梨本 諦嗚 (2020年/74分)

新潟県新潟市南区には、300年の歴史をもつ白根大凧合戦が存在し、毎年6月に5日間にわたって開催される。この地域における「凧揚げ」は単なる祭りに留まらず、地域の繋がりや歴史を再認識する貴重な機会でもあった。各組の人々が1年間をかけ、素材集めから製作まで自分たちで行い、合戦までを待つ。その様子、ひいては地域に暮らす人たちの生きざまや繋がりの強さ、自然の魅力を3年間に渡って記録した、丹念な取材が光る好篇。

短編コンペティション(11プログラム/30作品)

短編1 「日本とアジア、民主主義の問い」

『パンク・セーブ・ザ・クイーン』 監督=久保田徹 / 2019年 / 20分
『東京2018 プノンペン』 監督=歌川達人 / 2020年 / 32分
『ヤジと民主主義』 監督=長澤祐 / 2020年 / 46分

短編2 「石垣島の基地問題」

『ウーマンラッシュアワー村本大輔がアメリカに行くまでドキュメンタリーvol.10 赤ちゃんになりたい/vol.11 嫌われることは無駄じゃない』 監督=日向史有 / 2020年/ 24分
『沖縄と本土 一緒に闘う』 監督=湯本雅典 / 2020 年/ 60 分

短編3 「原子力と人間」

『被爆死した米兵を追って』 監督=谷井健吾 / 2020年 / 26分
『我が友・原子力〜放射能の世紀』 監督=渡辺謙一 / 2020年 / 57分

短編4 「“当事者たち”の告白」

『あなたの瞳に話せたら』 監督=佐藤そのみ / 2020年 / 29分
『I Am Here ―私たちはともに生きているー』 監督=浅沼智也 / 2020年/ 60分

短編5 「日本発ダイレクトシネマ」

『炉』 監督=荒木悠 / 2019年/ 16分
『有酸素ナンパ』 監督=トモトシ / 2019年/ 31分
『想像』 監督=太田信吾 / 2020年/ 54分

短編6 「障がいと表現、生の軌跡」

『ベジタブル・バスケット』 監督=藏岡登志美 / 2020年 / 7分
『ハンセン病を生きて』 監督=畠山桃子 / 2020年 / 25分
『ピアノが私にくれたもの』 監督=佐々木駿平 / 2019年 / 66分

短編7 「いのちの神秘、からだの不思議」

『Birth―めぐるいのち―』 監督=一色あづる、川崎技花、若見ありさ / 2020年 / 27分
『LOOKING FOR THAT―アレを探して―』 監督=朴基浩 / 2020年 / 63分

短編8 「家族ドキュメント」

『二ヵ月』監督=波田野州平/2020年/ 9分
『Bye Bye Daddy』 監督=松永圭以 / 2016年 / 10分
『Queen Hisako』 監督=松永圭以 / 2018年 / 20分
『プロポーズ』監督=familiafamiliar /2020年/54分

短編9 「自然との共生」

『多摩川の野良猫写真家』 監督=長谷夏帆 / 2020年/ 11分
『私たちの山』 監督=孫天宇 / 2020年 / 21分
『THE LIMIT』 監督=今津秀邦 / 2020年 / 20分
『セーブ・ザ・リーフ〜行動するとき〜』 監督=島崎誉主也 / 2020年 / 50分

短編10 「カメラは踊る」

『時と場の彫刻』 監督=歌川達人 / 2020年 / 8分
『メランコリア』 監督=岩名雅記 / 2020年 / 5分
『大野一雄三部作 光への四つの道』監督=ヴィルジニー・マーシャン/2020年/69分

短編11 「文化映画レボリューション」

『その先に、火を灯して』 監督=上西将寛 / 2020年 / 34分
『剣術 LaVoixDuSabre』監督=ジェレミー・マルセラン/2020年/60分

特集作品、特別作品

【特集 民族映像詩】

『カムイチェプ サケ漁と先住権』
監督=藤野知明 (2020年/93分)

かつてアイヌは自由に鮭をとり主食にしていたが、明治以降は政府に規制されてきた。紋別アイヌの畠山さんは伝統儀礼カムイチェプノミをするため、北海道の行政に無許可で川の鮭を捕ろうとする。役人と警察が思い止まらせようと揉みあうが、彼の意志はかたく、各地のアイヌも支援に駆けつけて
...。ひとり先住民の権利のために闘う畠山さんの姿に、心を動かされずにいられない。

『カナルタ螺旋状の夢』(2020年 /120分)
監督=太田光海

セバスティアンとその家族は、エクアドルのアマゾン熱帯雨林に暮らすシュアール族。口噛み酒を飲み交わし、森で狩猟 採集し、薬草や覚醒植物がもたらすヴィジョンや夢を通じて世界を理解しようとする。監督は1年以上にわたるフィールド ワークで家族と親密な関係を築き、セバスティアンから伝統的実践を教わるなかで、シュアール族が直面する現代的な試練を知るようになる。

『からむしのこえ』(2019年 /91分)
監督=分藤大翼

奥会津の昭和村では、豊かな自然のなかで「からむし」という植物を育て、繊維をとって糸にし、布を織る営みが数百年 ほど受け継がれている。それは新潟県に出荷され、上質な布として越後上布や小千谷縮の材料となる。カメルーンやボ ルネオで研究してきた映像人類学者が、美しい映像でからむし織の工程をつづり、携わる人びとの情感豊かな声に耳を 澄ませていく、静かなる傑作。

人類学者たちのフィールド

『アッバ・オリの1日』 監督=松村圭一郎 /2020年 /36
『プティー ジャライ族の墓放棄祭』 監督=柳沢英輔、ヴィンチェンツォ・デッラ・ラッタ /2014年 /47

『うしろめたさの人類学』の著者である文化人類学者・松村圭一郎が、20年以上通うエチオピアの農村を撮った『アッバ・ オリの1日』。足を悪くした村の長老が、サルや虫や子どもたちに囲まれて過ごす「老いの風景」を映しだす。『プティー』は、 ヴェトナム中部高原のジャライ族が、夜通しで水牛の供犠、ゴングの演奏、精霊の踊りをおこなう祭礼を記録した稀少な民族誌映像。

ヴィジュアル・フォークロアの世界

『デヴォキ〜神に捧げられた女たち〜』 監督=弘理子/2019年/76
『説経浄瑠璃三代目・若松若太夫 一声二節のわざ』監督=遠藤協/2020年/17

『デヴォキ』は、ヒマラヤ山麓のヒンドゥー教徒がさまざまな祈願の代償に、幼い少女を「神の嫁」として寺院に捧げる奇習 を取材。世俗的な結婚が許されず、寺院娼婦など数奇な生を送る女性の姿を描き、ネパール社会のタブーに切りこむ。 『廻り神楽』の監督が三味線の弾き語りの世界に迫る『説経浄瑠璃 三代目・若松若太夫』を併映。北村皆雄が率いる映 像民俗学の拠点の、次世代作家たちを特集する。

ゾミアの秘祭

『ナガのドラム』 監督=井口寛 /2019年 /66
『アルナチャール人類博覧会』 監督=金子遊 /2020年 /15

インドとミャンマーにまたがる山岳地帯に暮らし、独特の歌唱法や華美な民族衣裳で知られるナガ族。彼らが森で巨木を 切り倒して成形し、引き綱で運び、ドラムの完成を祝した祭りをする様を撮った『ナガのドラム』。中印の国境紛争地帯で、 インド観光局がナガ族やモンパ族を集めた文化フェスティバルを催すが、そこに21世紀的な人間動物園のあり方を見る 『アルナチャール人類博覧会』を併映。

特別➀ 香港クライシス

『STAND WITH HK』 監督=堀潤 /2020年 /25
『中大防衛戦』 監督=カン・シンカイ /2020年/86

激動の香港情勢を、香港と日本の独立系ジャーナリストがそれぞれとらえた2作を特別に上映。『中大防衛戦』は、2019年11月12日に名門・中文大学で起きた警察の不法侵入事件の一部始終を、地元の映像作家が記録した作品。催涙弾が乱れ飛ぶ 中、キャンパスに篭城し応戦する学生たちの迫力ある姿を描く。堀潤の新作『STAND WITH HK』は、民主化デモの最前線にカメラを向け、警察の弾圧に向き合う香港の若者たち一人一人の声に丁寧に耳を傾ける。

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2020年12月5日(土)~12月11日(金) 新宿K’scinemaにて開催!