大学時代、映画研究会で青春時代を共に過ごした4人の男たちが、当時のヒロインの呼びかけで、20年ぶりに行きつけの居酒屋で再会し、謎のワード「ヤウンペ」を解き明かすべく奔走する様をコミカルに綴った、池内博之・宮川大輔・松尾諭・池田鉄洋・蓮佛美沙子 ほか豪華キャストで贈る、スラップ・スティックコメディ『ヤウンペを探せ!』が11月20日(金)よりシネ・リーブル池袋にて公開中です。

この度、数学教師になるという夢を諦めきれずに湖畔でテント生活を送るタロウを演じた池田鉄洋さんに、自身の学生時代&下積み時代のほろ苦いエピソードや、「コメディ」や「笑い」にこだわる理由、そしていまだ叶わずに追い求め続けているという「ガキの頃からの夢」について、じっくり語ってもらった。

池田鉄洋さんインタビュー

「自分なら20年後に再会してもこんなに和やかに話せない(笑)」

――池田さん扮するタロウ以外の3人は学生時代もご自身で演じていらっしゃいますが、タロウの若い頃だけ別の方が担当されています。もしや池田さんだけスケジュールが合わなかったとか……!?

そうそう、ツッコむべきところはまさにそこなんですよ(笑)! あれは「タロウは昔とずいぶん変わったね」ってことを表現するための仕掛けだったんですけど、「俺が変わったっていう驚きより、お前らの方こそ若い頃から変わってなさすぎ!」「っていうか、さすがにお前らが20代をやるのは無理があるだろう!」ってツッコミたくなりますよね(笑)。私も学生時代は「演劇サークル」にいましたけど、台本を読んだ時「20年後に会ってこんな和やかに話せるわけがねぇだろ!」って、正直思いましたから(笑)。

――それはなぜですか?

いまだにその時に負った、いや、負わせた傷が深すぎて……(笑)。でもタロウたちは映画そっちのけでヒロインだったミサトちゃん(蓮佛美沙子)に執着の矛先が向かっていたからこそ、こうやってまた会って普通に話ができるんだろうけど、それこそ僕が演劇サークルだった当時は、怒鳴り合いをしながら作品を作っていくのが当たり前だったから、相手の気持ちをねぎらうとか、優しさを持って接するなんていうのは二の次、三の次で。それはまぁお互いに酷い扱いをしてましたよね(苦笑)。「俺たちは全員有名になって、思い通りの作品を作れるようになるのが正義だ!」ってずっと信じて疑わなかったんですけど、実は自分一人だけ仲間と全然違う方向に走ってたってことに、ずいぶん後になってから気づいたんです(笑)。

――映画では、20年ぶりに当時行きつけだった居酒屋で再会して盛り上がりますが(笑)。

そうそう。でも同年代でわちゃわちゃ飲んでいるシーンって内輪受けっぽい感じになりがちなんだけど、そこを引き締めてくれたのはやっぱり宮川(大輔)さんだったんじゃないかなぁ。もし役者だけであのシーンをやったら、ちょっと危なかったかもしれない。幸い今回はみんな変な人だったので助かりました(笑)。池内(博之)くんは自分の道を突き進むタイプだし、松尾(諭)くんは妙なこだわりがあって、焼肉の枚数をやたらと気にしたり……。変なメンバーが集まった時特有の高揚感というのか「よくぞここまで変な人を貫いてこられましたね!」みたいな感じがあったんですよね(笑)。いい年して女の子に翻弄されている独身の中年男たちも、ちょっと可愛らしくていいかなって。

Ⓒ2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

自身も「30代半ばまで4畳半で暮らした遅咲き」
「人生すごろく」はまだ途中……

――タロウはまだ夢の途中ですが、池田さんご自身も若い頃はかなりご苦労されたとか。

さすがにタロウみたいなテント暮らしの経験はないけど、30代半ばくらいまでは4畳半一間の生活だったので、そこにいつ立ち返ることになるのかなってことは常に考えているし、実際にそういう生活をしながら演劇をやっている先輩が僕の周りにはまだいらっしゃるので(笑)。いまは家族もいるから「突然何もかも捨てて違う仕事をしたい」みたいな無謀なことはさすがにできなくなったけど、幼少時代の貧乏生活は人生にとってプラスになるはずなので(笑)、正直「まだまだいけるかな」とも思ってるんですよね。たとえどんな失敗をしたとしても「まぁ何とかなるだろう」って(笑)。

――そもそも池田さんは昔からコメディ映画や演劇がお好きだったんですか?

一番影響を受けたのは『裸の銃を持つ男』(1988)みたいなアメリカのギャグ映画なんですが、キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年)の冒頭で猿が殺し合いをしているシーンが、いまだに僕のトラウマなんですよ(笑)。ちょっと遅れて入った大きな映画館の2階席のドアを開けた瞬間、その映像が目に飛び込んできて……。客席やスクリーンの大きさに圧倒されて、それが自分の原体験になっているんですよね。本当は漫画家か映画監督になりたかったんだけど、長編漫画の場合はそれほど量産できないことが分かって、映画も一本撮るのに結構時間がかかるよなぁとか考えているうちに、有名になるための最短距離は演劇なんじゃないかと思って、演劇を選んだ部分もありますね(笑)。

Ⓒ2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

小学生時代はコミュ障まではいかないけど結構つらい時期があって、それこそザ・ドリフターズの「8時だョ!全員集合」とか「オレたちひょうきん族」にさんざん救われてきたから、「いつか自分も笑いに携わりたい」と思うようになったんですよね。以前、志村けんさんとも舞台をご一緒したことがあるんですけど、まさかこんな最期になるなんて……。「あんなコメディの神様みたいな人でも、一人きりで亡くなっていったんだな……」って。

――池田さんご自身は、学生時代に思い描いていた「50歳の自分」とは違うんですか?

僕は昔から大風呂敷を広げるタイプだったから、予定ではもう大河ドラマの主役もやっていたはずなんですが(笑)、最終的なゴールとしては、「映画監督になって、コメディ映画を撮って、日本のみならず世界中で大ヒットさせること」。子ども時代の僕が『ポリスアカデミー』(1988年)の予告編を観ただけで大笑いしていたように、世界各国のどんな文化の人たちのことも笑わせたいなと思っているんです。それこそ学生時代は「これは傑作だ!」って思えるようなエチュードをたれ流していたほどアイデアに溢れていたし、年に2本ぐらいのペースで自分の作品を上演するのが僕の理想とするところなので、とてもじゃないけどまだ夢は叶っていないんですよね。でもまぁ、そうなると今度は役者として出ることができなくなるから、バランスを取るのが難しいんですけどね(笑)。

Ⓒ2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

「誰かを笑わせることの難しさ」と一生かけても向き合い続ける理由

でも改めて考えると、「誰かを笑わせること」って、本当に難しいことなんです。僕がそれを一番実感したのは、コントの舞台のカーテンコール。可笑しな格好でコントをやり切った我々が「本日はありがとうございました!」って、お辞儀して頭を上げた瞬間に客席に灯りが点くんですけど、目の前にある笑顔はせいぜい4割程度(苦笑)。過半数以上は「俺の大事な時間を返せ!」みたいな顔をしてるわけです。お客さんから敵意をむき出しにされて、舞台の怖さを思い知らされました(笑)。もちろん全てのお客さんを笑わせるなんて不可能な話だし、「6割笑わせたら及第点どころか合格だよ!」とは思うんですけど、おこがましくも「世界中の人を笑わせる」のが、ガキの頃からの僕の夢なんですよね。あと、僕のおふくろが亡くなる前、癌が転移して意識が朦朧としていた中でも、綾小路きみまろさんの漫談を聞いて笑ってたんです。それを見て「あぁ、俺はきみまろさんに負けた」って思ったのもありますね。「やっぱり笑いってスゲェなぁ……」って。残念ながら僕は芸人さんのようなスター性や才能を持ち合わせてはいなかったから、喜劇を作る側に回ろうと思ったんですよね。

池田鉄洋さん

――若い頃の苦労は、その後の人生の糧になると思われますか?

若い頃から僕は「自分の力だけでのし上がっていきたい」と思っていて、周りの助けを借りずに一人でもがき続けてきたんです。でもその結果として50歳までにゴールにたどり着けなかったから、いま70歳くらいにゴール設定し直しているところ(笑)。一度は演劇の殿堂と呼ばれる「本多劇場」まで行ったのに、一旦振り出しに戻って「OFF OFFシアター」からまた始めたりしてるから、なかなか大変なんですけどね(笑)。いま思うと、若い頃は本当に自分の力を過大評価していました。自分一人で何でもかんでも背負いすぎちゃって、自分でやったほうが早いし、より良いものが出来るはずだと思いこんでいたんです。だからタロウみたいに仲間がいるのは、正直うらやましすぎますね(笑)。「なんであの頃の自分は、あんなに仲間を大事にしなかったんだろうな」って、いまでは思うから。

「仲間に頼れなかった」自分を変えた意外なきっかけとは?

――何がきっかけで頼れるようになったんですか?

いや、それはもう簡単な話ですよ。「ものを忘れる」とか「つまずく」とか。つまり身近に「老い」が迫ってきたら、周りに頼らざるを得なくなった。「よくできてんなぁ〜」って(笑)。

――身体的な衰えによって、必然的に変わらざるを得なくなったというわけですね(笑)。

そう。仮に人生を修行の場だとすると、「お前は自分の力で何とかするって言ってたくせに、結局自分で悟れなかったね。じゃあもう老いを始めるけどいいか?」って言われてるような感覚なんですよね。「老いを始めたらさすがにお前もわかるっしょ?」みたいな(笑)。「はいはい、もうお前はタイムオーバーね」って言われているような感じがすごくしています(笑)。

――そこからはずいぶんラクになれました?

はい。とてもラクにはなれました。でも、いざラクになったなと思ったら、もうその頃には周りに仲間がいなかった……(苦笑)。だからせめて今近くにいてくれる人に頼ってみようと思って、今ではすっかり頼りっぱなしですね(笑)。

――「当時の自分たちにとっては切実だったはずのことを、もはや誰も覚えていない」というのが、この映画のリアルなところでもありますよね。池田さんご自身は学生時代のアツい思いを、いまも変わらず持ち続けていますか?

当時追い求めていた夢みたいなものはいまも変わらず僕の中にはあるんですけど、その分、犠牲にしてきたものがあまりに多すぎて、「お詫び行脚」をして回りたくなるくらい「申し訳なかったなぁ」っていう気持ちでいっぱいなんですよね(苦笑)。でもきっと今更謝られても皆も困るだろうし、それこそとっくに忘れていることもあるでしょうし(笑)。僕がスタートダッシュをかけていた頃に巻き添えを食らわせてしまった人たちに「あいつはこんな作品を作ったんだからしゃーないや」って思ってもらうためには、あの頃の夢を叶えるしかないんです。

まぁでも一方で「俺は世界中の人を笑わせたいと思っているくせに、果たして自分の人生がちゃんと笑いに満ちていたのか」って思い返してみると、実はそうでもないんだよなぁ……(笑)。でもきっと「だからこそ自分は笑いにすがるんだろうなぁ」「笑いを作りたくなるんだろうなぁ」とも思うんですけどね。

この映画の脚本が実話に基づいているかどうかはわからないんですけど、監督の中にはどこか青春時代の甘酸っぱい思い出を美化したかったところもあるんじゃないかな(笑)。個人的には「皆さんは昔の仲間と集まれますか?」「本当に集まりたいですか?」って、この映画を観て下さる方々に聞いてみたいような気もします。意外と皆さんも昔の仲間と結構派手な喧嘩別れをしてきたんじゃないのかなって、僕は思いますけどね(笑)。

(取材・文・撮影/渡邊玲子)

映画『ヤウンペを探せ!』予告編

映画『ヤウンペを探せ!』予告編60秒

youtu.be

STORY
売れない俳優のキンヤ(池内博之)、さえない中華レストラン店長のジュンペイ(宮川大輔)、教員試験を万年浪人中のタロウ(池田鉄洋)、ラブホオーナーのアッキー(松尾諭)の4人は、かつで大学で一緒に8mm映画を作っていた仲間。
さえない毎日を送っていた4人は、学生時代のいきつけの焼肉屋で、20年前に作った映画のヒロイン・ミサト(蓮佛美沙子)と再会。彼女が欲しがる「ヤウンペ」探しに、奔走することになるが・・・。

池内博之 宮川大輔 松尾諭 池田鉄洋 蓮佛美沙子
川島海荷(友情出演) 桜井ユキ 榊英雄 桂三度
監督:宮脇亮 脚本:髙石明彦、渋谷未来
主題歌:大野莉昂「描きかけの夢」/劇中歌:ソンモ「I'm lovin'you~泣いたらいい~」
制作プロダクション:The icon 
制作:吉本興業 読売テレビ 
配給:吉本興業
製作:「ヤウンペを探せ!」製作委員会
2019/日本/カラー/ビスタ/86分 
Ⓒ2019「ヤウンペを探せ!」製作委員会

■公式HP:https://yaunpe.official-movie.com/
■公式Twitter:https://twitter.com/yaunpe