8月14日(金)より新宿武蔵野館/YEBISU GARDEN CINEMA にて全国公開予定の映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』。この度、新場面写真解禁と共に同時期に公開され注目を集める共産圏映画に迫った特集を紹介。

若き英国人記者の主人公:ガレス・ジョーンズを演じたのは、次期ジェームズ・ボンド役とも噂される実力派イケメン英国俳優のジェームズ・ノートン。ニューヨーク・タイムズのモスクワ支局に勤める女性記者:エイダ・ブルックスを近年では『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』や『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』にも出演し、硬軟を演じられる女優として日本でも話題のヴァネッサ・ カービー。さらにニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長であり、ピューリッツァー賞も受賞した:ウォルター・デュランティを演じたのは数々のハリウッド大作に出演する演技派俳優であるピーター・サースガード。本作の監督を務めたのは、米アカデミー賞ノミネート経験もあり、世界的に活躍するアグニェシュカ・ホランド(『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』、『太陽と月に背いて』、 『ソハの地下水道』)。彼女の息もつかせぬサスペンスフルな語り口、陰影豊かなビジュアルで、秘密主義の独裁国家に潜入した実在のイギリス人ジャーナリストの闘いを描出。無力な存在でありながら命の危険も顧みず、眩しいほどまっすぐに真実を追い求めたジョーンズの不屈のドラマに心揺さぶられずにはいられない。

世界で新型コロナウイルスが蔓延する今、国の対策や対処方法、国外への情報発信など様々な分野から、国民の政治を見る目が厳しくなっているといえる。例えば「ロックダウン」も、「自粛を促す日本」と「証明書なく外出したら罰金」を科すという、 他国とを比較すると、大きな差が生じていることがわかる。そんな現代に、映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』は一党独裁の権力がもたらした悲惨な史実を突きつける、冷戦時代に逆戻りするかのように、“もうひとつの大国” が台頭してきたことによって、コロナウイルスを巡る、そしてテクノロジーの覇権やデータ抜き取りに関する応酬・・・世界は新たなフェーズに突入しているのかも知れない。そしてその影響が映画にも顕れているのは、民主主義の国家であっても「独裁者」「独裁政権」の色が濃く出ていることに危機感を抱く人が少なくないからではないだろうか。

この夏、共産圏の権力暴走を題材にした映画が、次々と公開される。その中から見えてくる、今の時代に観るべき映画に迫っていこう。

Photo by Robert Palka ©︎ 2019 Film Produkcja All rights reserved

本作における当時の時代背景と、フェイクニュース

1922 年、ロシア革命が起こり新しい国家体制になり、初代最高指導者としてレーニンが誕生。共産党の体制で国家をつくりあげ、いわばカリスマ的存在でもあったレーニンは、次の後継者としてスターリンにバトンタッチする。世界恐慌が吹き荒れる中、なぜソ連だけが繁栄しているのかーー?その疑問を1人の英国人記者、ガレス・ジョーンズが暴こうとする物語となっているのが本作だ。

肥沃な大地だといわれていた凍てつくウクライナに主人公・ジョーンズはソ連の監視下を滑り抜け潜入、人々が餓えに苦しむ姿を目の当たりにする。路肩には死体が転がり、痩せた子供たちが獲物を狙っている戦慄の光景・・・。
それは・・・スターリン政権がウクライナで生産された穀物などの食糧を搾取していたのだ。ジョーンズは“偽りの反映”を告発するために各所に呼びかけるも、なぜかこの衝撃的なニュースは信憑性がないといわれ取り扱ってもらうことができず、現代でも知らない人が多くいる。なぜなのかーー?その理由は、スターリンの徹底した国外への情報流出管理と、当時の時代背景にある。ナチスドイツが台頭してきた当時、イギリスはソ連と組むべきだと考えていた。ヒトラーに対抗させるための西側諸国の思惑。 劇中で描かれているとおり、ニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長でさえも、人々が餓えている事実に目を瞑っていたのだから。 そのような状況をソ連国外に漏れ伝わらないよう、スターリン体制は国際的な世論や評価を操作するような情報、つまり今でいうフェイクニュースを意図的に流したり、情報操作を徹底していた。

Photo by Robert Palka ©︎ 2019 Film Produkcja All rights reserved

この夏公開される共産圏映画の共通点とは?

本作の他に、共産圏を題材とした映画がこの夏公開される。
1つ目は8月7日に公開の『ジョーンの秘密』。これはイギリス映画で元KGB(ソ連崩壊まで存在したソビエト社会主義共和国連邦の情報機関・秘密警察)のスパイだった、英国人物理学者の物語で、本作の後日談という形になっている。第二次世界大戦に突入していく時期、1939年の独ソ不可侵条約が結ばれ、天敵だと思われていたヒトラーとスターリンが一時的に手を組んだ。しかし1941年にドイツがソ連に侵攻し、あっけなく協定は崩れてしまい、そこでイギリスとソ連は同盟国となる。そういった混乱の時期にあっても、イギリスのインテリと呼ばれている人々に、ソ連がいかに人気であったかということがよくわかってくる。

© TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018

そして左派が大勢である国の1つ、毛沢東が率いて中華人民共和国を題材にした8月1日公開の『死霊魂』。ワン・ビン監督が文化大革命前の中国史の闇といわれている「反右派闘争」に迫った 8 時間を超えるドキュメンタリー大作だ。
反右派闘争は1950年代後半~1960年代前半の時期の話で、本作で描かれたホロドモールと非常に似ている部分があり、反乱分子、反革命分子のレッテルを張られた人たちが大量に収容所に送られて、そこに大飢饉が重なる。起こった事実、現象自体が本作と似ており、人が極限状態になるとどうなってしまうのかという、衝撃的なシーンも同じく共通して出てくる。

日本公開の新作で、なぜこんなにも共産圏を題材にした映画が多いのか。それは今の時代を鑑みながら、イデオロギーが右でも左でも関係なく、大きな権力が暴走すれば同じ悪い結果になってしまう、ということを今の日本にも突き付けているからではないだろうか。そんなソビエト連邦がひた隠しにした歴史の闇を照らし出す衝撃作『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』。
想像を絶する世の中に生きる我々こそ、いったん立ち止まり、ニューノーマルな未来を作り上げるためにも、本作をぜひ劇場で目撃してほしい。

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』予告編

8月14日(金)公開『赤い闇』予告編

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◾️STORY

1933年、ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズには、大いなる疑問があった。世界恐慌の嵐が吹き荒れるなか、なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのか。その謎を解くために単身モスクワを訪れたジョーンズは、外国人記者を監視する当局の目をかいくぐり、すべての答えが隠されているウクライナ行きの汽車に乗り込む。やがて凍てつくウクライナの地を踏んだジョーンズが目の当たりにしたのは、想像を絶する悪夢のような光景だった......。

監督:アグニェシュカ・ホランド
脚本:アンドレア・チャルーパ
出演:ジェームズ・ノートン、ヴァネッサ・カービー、ピーター・サースガード
配給:ハピネット
配給協力:ギグリーボックス
© FILM PRODUKCJA – PARKHURST – KINOROB - JONES BOY FILM - KRAKOW FESTIVAL OFFICE - STUDIO PRODUKCYJNE ORKA - KINO ŚWIAT - SILESIA FILM INSTITUTE IN KATOWICE

8/14(金)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開