自己紹介と本連載について

こちらにて連載を始めさせて頂く事になりました。最初に自己紹介と本連載について説明致します。
私は現在、Atemoという映画の企画/プロデュース/配給/宣伝を行う会社の代表をしております。また、今年春から日本初の会員制映画製作マッチングサイト「Green-light」を運営しています。
同サイトには製作者会員として、東宝/東映/松竹/日活といった邦画メジャーからワーナーブラザース/ギャガ/東京テアトル/ファントム・フィルム等の外資やインディペンデント系配給会社、TV局、制作プロダクション、ビデオメーカー等に所属する多くの業界プロフェッショナルが利用しています。

2017-18年にはこちらで【脱サラ映画プロデューサーのハリウッド探訪記】を連載させて頂いていたので、ご購読されていた方もいらっしゃるかも知れません。
先の連載はおかげ様で反響が大きく、連載きっかけで生まれたコネクションも数多くありました。当時は海外遊学中の身でしたが、今は映画業界で経営を行うビジネスパーソンとして、日々の奮闘を紹介する事により、読者にとって映画業界で働く事や起業する事が⾝近で魅⼒的なものに感じてもらえる連載にしていきたいと考えています。

アメリカのThe Black Listから着想を得たGreen-light

今回は、Atemoで運営しているGreen-lightについてお話させて頂きます。

Green-lightは、アメリカにある脚本マッチングサイトThe Black Listの仕組みやビジネスモデルを踏襲したものです。
The Black ListもGreen-lightも構造は同じで、脚本家が掲載者として脚本を投稿し、製作者(プロデューサーなど)が閲覧者としてそれらの脚本をファイルとしてダウンロード、閲覧ならびに評価する事ができるWEBサイトです。また、気になる脚本家に対しては製作者からサイト外で自由にコンタクトが取れるものになります。
私はアメリカに滞在していた時にThe Black Listの存在を知り、当時から「これは日本でも応用できる」と考えていました。

The Black Listは、2005年にハリウッド関係者達の投票による未映像化脚本の評価ランキングを関係者間で配布するというアナログ形式から始まり、初年度の作品から「JUNO/ジュノ」が映画化されヒット。その後も「スラムドッグ$ミリオネア」「英国王のスピーチ」「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」など、The Black List掲載作品から多くの映画が生まれています。The Black Listの過去の公式発表によると、これまでに同サイト掲載脚本から400本以上が映画化され、それらの作品の世界興収は合計260億ドルにものぼるそうです。

ローンチから3ヶ月余りで初の映像化作品が始動

Green-lightは昨年より様々な業界関係者の助言を得て制作を進め、今年1月にサービスの情報解禁をして、脚本を閲覧する製作者側の事前会員登録をスタート。4月にサイトローンチとなりました。
サイトローンチ時には、東映で「苦役列車」「サイレント・トーキョー」等を手掛ける川田亮プロデューサー、東京テアトルで「南極料理人」「ディストラクション・ベイビーズ」等を手掛ける西ヶ谷寿一プロデューサーらにGreen-lightへの期待コメントを頂戴し、各映画情報サイト等で記事にして頂きました。

ローンチから間もなく、登録頂いた脚本家会員の中から映像化が進行する事案が出てきました。
それが土井笑生監督作「衝動」です。同作は製作者会員の配給会社を委員会パートナーとして獲得し、ただそれだけでは制作費に不足がありクラウドファンディングの実施を検討しているという状況でした。

Green-light利用者は比較的キャリアの若い方が多い事もあり、兼ねてからクラウドファンディングサイトとの提携は利用者メリットになるのではと考えていました。私も土井監督の状況を聞いて、背中を押された形で提携を模索しました。
ちょうどその頃にMotion Gallery代表の大高氏と繋がる機会があり、Green-lightとの業務提携へと話が進み、Green-light掲載作のクラウドファンディング実施時にはプラットホーム手数料がディスカウントされるという特典を作りました。

映画「衝動」情報解禁、クラウドファンディング開始へ

映画「衝動」はGreen-light初の映像化に加えてこのMotion Gallery特典も利用第一号という形で、去る7月15日に情報解禁となりました。土井監督が元々自身でキャスティングしていた、W主演となる倉悠貴・見上愛もあわせて発表しました。

「衝動」は、東京で違法薬物の運び屋の仕事をする孤独な少年・ハチ(倉悠貴)と、あるトラウマから声を出せなくなった孤独な少女・アイ(見上愛)が、出会い、ぶつかりながら、かけがえのない存在になっていく物語。現代の東京を舞台に、孤独な少年少女が生きる衝動に駆られていく姿を描く、過激な⻘春サスペンス映画です。
ハチ役は、2020年公開予定の池田エライザ初監督映画『夏、至るころ』にて主演での映画デビューを果たした新星・倉悠貴。アイ役は、2019年、デビュー3ヶ月にしてGENERATIONS from EXILE TRIBEのMVにてヒロイン役に抜擢、数々のドラマや映画へ出演を重ねている注目株・見上愛が務めます。

本作の製作や情報解禁に関しては私も一部協力していて、先日土井監督と主演の倉さん、見上さんの顔合わせの場にも立ち会わせて頂きました。本記事の写真はその時のものです。

写真中央が土井笑生監督

Photo by senobi

Green-lightも全てが順調ではなく、アメリカのThe Black Listのような業界スタンダードにはまだまだ程遠い状況です。
ですが「衝動」により”脚本マッチングによる映画製作”は最初の1歩を踏み出しました。Green-lightという仕組みと、土井監督の映画を作りたいという熱量が相乗効果を生み成された快挙です。先の顔合わせでの土井監督の活き活きとした様子を見て、サイト運営者としては感慨深いものがありました。

これから作品の製作を目指すフィルムメイカーの方々は、Green-lightならびにMotion Galleryをうまく活用して頂ければと思うのと、本記事の購読者の皆様には、映画製作の新時代とも言える「衝動」の応援をお願い致します。

https://motion-gallery.net/projects/movie_shodo2020
※クラウドファンディングは2020年8月31日23:59まで実施中

次回予告

不定期の更新となりますが、次回は映画配給についての回にしようと考えています。
雑文でまだまだ構成も手探りな本連載ですが、以後宜しくお願いします。

筆者プロフィール
和田有啓 / Arihiro Wada
1983年神奈川県横浜市生まれ。
スポーツ取材の会社からキャリアをスタートさせ、その後、松竹芸能、電通、DLEを経て2017年に独立。フリーランスとして複数の企業と提携し映画の企画/プロデュース/配給/宣伝を行った後、2019年に自身の会社となる株式会社Atemoを設立。2020年春から日本初の会員制映画製作マッチングサイト「Green-light」を運営。