フランス映画界を代表する女性監督アニエス・ヴァルダの作品を特集する「アニエス・ヴァルダ傑作セレクション」が、岩波ホールにて 7 月 18 日(土)より開催されます。上映作品は、『落穂拾い』(00)、『ダゲール街の人々』(75)、『アニエスによるヴァルダ』(19)、『ジャック・ドゥミの少年期』(91)の 4 作品。会期中に、オンライントークイベントの開催も決定しました。

コロナ禍で長らく休館を余儀なくされ、緊急事態宣言解除後に再開された神保町のミニシアター岩波ホールで、現在“岩波ホールセレクション”と銘打って、過去に上映されたヒット作を中心とした特集上映が行われている。7月18日(土)からは、ホールとの縁が深い、 昨年90歳で亡くなったフランス人女性監督アニエス・ヴァルダの特集が始まる。

【アニエス・ヴァルダ】
1928年5月30日、ベルギー生まれ。戦火を逃れ南仏セートに移住し、思春期を過ごす。その後パリで学び、職業写真家として活躍。
54年、アラン・レネの勧めにより『ラ・ポワント・クールト』を26歳の若さで初監督。1961年に『5時から7時までのクレオ』を 発表した翌年、ジャック・ドゥミと結婚、90年ドゥミの死去まで添い遂げた。『幸福』(64)でベルリン国際映画祭銀熊賞を、『冬の旅』(85)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。
仏人アーティストJRとの共同監督作『顔たち、ところどころ』(17)ではカンヌ国際映 画祭ルイユ・ドール(最優秀ドキュメンタリー賞)を受賞した。15年にカンヌ国際映画祭名誉パルムドールを、17年にアカデミー賞 名誉賞を受賞。2019年3月29日、パリの自宅にて死去。享年90歳。

「アニエス・ヴァルダ 傑作セレクション」上映作品】

18 年ぶりに再公開となる『落穂拾い』など全4作品

過去に上映されたヒット作を中心とした特集上映が行われている岩波ホールで、7月18日(土)からは、昨年90歳で亡くなったフランス人女性監督アニエス・ヴァルダの特集が始まる。上映されるのは『ダゲール街の人々』(‘75) 、『ジャック・ドゥミの少年期』 (‘91)、『落穂拾い』(‘00)、遺作『アニエスによるヴァルダ』(‘19)の4作品。

「アニエス・ヴァルダ 傑作セレクション」予告

18 年ぶりに再公開となる『落穂拾い』など4作品-「アニエス・ヴァルダ 傑作セレクション」予告

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今回の再公開に寄せて、ヴァルダ監督の長女で、自らもヴァルダが遺した製作会社の代表を務め、映画製作、配給に携わるロザリー・ヴァルダからメッセージ動画が届いた。 撮影場所は、今回の再公開の一作『ダゲール街の人々』で馴染み深いパリ14区のダゲール街86番地にある、ヴァルダ監督の自宅でもあった製作会社シネタマリスだ。

今回上映される4作品についてメッセージを寄せたロザリー・ヴァルダ。『落穂拾い』について、「美しく心温まるこの作品は、捨てられた品や食べ物を再利用する“収集家”の世界を学びます。自身も拾うことが好きなアニエスだからこそ描けた、飾らない表現で優しく描いたドキュメンタリーです」と語っている。

ロザリー・ヴァルダ メッセージ動画

ロザリー・ヴァルダ メッセージ動画/特集「アニエス・ヴァルダ傑作セレクション」

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日本では18年ぶりの再公開となる『落穂拾い』(‘00)は、ヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞や、フランス映画批評家協会賞の最優秀映画批評家賞を受賞するなど、ドキュメンタリー映画作家としてのヴァルダ監督の代表作の一本で、 監督本人が、“ものを拾う人々”に出会うため、フランス中を旅するドキュメンタリーだ。パリの市場で通路に落ちているものを拾う人々を偶然見かけ、いろいろな市場で人々を観察しているうち、ミレーの名画「落穂拾い」を連想し、「田舎ではまだ(収穫が終わった後に、採り損ねた穂を拾う)“落穂拾い”をしているのだろうか?」という思いに駆られ、ヴァルダ自身が軽量カメラをもって旅することになる一種のロードムービー。
行く先々で人々に出会い、彼らが語る人生と暮らしの知恵に耳を傾ける。20年前の作品ながら食糧の大量廃棄、現代の物質文明に警鐘を鳴らすテーマも含んでいた本作だが、コロナ禍を経験した今だからこそ、観る者に新たな疑問や問題点を提示し、解決方法を示唆してくれる作品と言える。 ドキュメンタリー映画としての素晴らしさのみならず、今改めて気づくその意義深さから、配給会社であるザジフィルムズが今回のために12年ぶりに再契約をし、上映の運びとなった。

作品紹介

『落穂拾い』

(c) ciné tamaris 2000

ある日、ヴァルダ監督はパリの市場で、道路に落ちているものを拾う人たちを見ていて映画の着 想を得た。その後、いろいろな市場で人々の拾い集める動作を観察しているうちにミレーの名画 『落穂拾い』を連想し、田舎ではまだ落穂拾いをしているのだろうかという疑問にかられた。こ うして、ハンディカメラを手に、フランス各地の“現代の落穂拾い”を探す、彼女の旅は始まる。

監督・脚本・語り:アニエス・ヴァルダ
撮影:ディディエ・ルジェ、ステファーヌ・クロズ|編集:アニエス・ヴァルダ、ロラン・ピノ
2000年/フランス/82分/カラー/原 題:Les Glaneurs et la Glaneuse
(c) ciné tamaris 2000

『アニエスによるヴァルダ』*遺作

(c) 2019 Cine Tamaris–Arte France–HBB26–Scarlett Production–MK2 films

長編劇映画監督デビュー作『ラ・ポワント・クールト』から、世界各国の数々の映画賞に輝いた前作『顔たち、ところどころ』まで、ヴァルダが60余年の自身のキャリアを振り返る、集大成的作品。飽くことのない好奇心と情熱をもって、死の直前まで創作活動を止めることのなかった彼女の、これは遺言状ではなく未来へのメッセージ。<第69回ベルリン国際映画祭 正式出品作品>

監督:アニエス・ヴァルダ
製作:ロザリー・ヴァルダ
2019年/フランス/119分/カラー/5.1ch/1:1.85/原題:Varda par Agnès|日本語字幕:井村千瑞
(c) 2019 Cine Tamaris–Arte France–HBB26–Scarlett Production–MK2 films

『ダゲール街の人々』

(c) 1994 AGNES VARDA ET ENFANTS

自身が50年以上居を構えていたパリ14区、モンパルナスの一角にあるダゲール通り。“銀板写真”を発明した19世紀の発明家の名を冠した通りには肉屋、香水屋...、様々な商店が立ち並ぶ。
その下町の風景をこよなく愛したヴァルダが75年に完成させたドキュメンタリー作家としての代表作。人間に対する温かな眼差しと冷徹な観察眼を併せ持ったヴァルダの真骨頂。

監督:アニエス・ヴァルダ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー、ヌーリス・アヴィヴ
1975年/フランス/79分/カラー/モノラル/スタンダード/原題:Daguerréotypes|日本語字幕:横井和子
(c) 1994 AGNES VARDA ET ENFANTS

『ジャック・ドゥミの少年期』

(c) ciné tamaris 1990

「わたしは残しておきたい。輝くばかりのジャックの少年期と夢見るようなあのまなざしを。」 “ジャコ”は友人から映写機を借りたことで、映画に夢中になっていく。ある日、街の映画館に 「白雪姫」がやってきた。少年の日の夢だけを信じて貫いたひとりの男が、死を目前にして目の前にいる...。生涯の伴侶であるドゥミの創造の源泉を、最愛の妻ヴァルダがフィルムに焼き付けた優しく切ない名作。

監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジャック・ドゥミ、フィリップ・マロン、ローラン・モニエ
1991年/フランス/カラー&モノクロ/120分/ビスタ 原題:Jacquot de Nantes
(c) ciné tamaris 1990

配給:ザジフィルムズ

オンライントークイベント開催決定!
小泉今日子、渡辺真起子、井浦新、斎藤工が、オンライン登壇!

配給元のザジフィルムズは、小規模独立系映画配給会社が集まって4月に立ち上げた“Help!The
映画配給会社プロジェクト”の発起人の一社。このプロジェクトでは配信プラ ットフォーム《アップリンククラウド》を利用しての“映画会社別見放題パック”を展開する一方、現在は横浜のミニシアター、ジャック&ベティで配給会社社長がオンライン登壇して観客やオンライン視聴者と交流するトークイベントも開催し、今まで黒子だった映画配給会社の可視化を目指して活動している。

その“Help! The映画配給会社プロジュクト”が、今度は“ミニシアターパーク”とコラボイベントをスタートすることになった。
“ミニシアターパーク”は、俳優 井浦新の呼びかけに、同じく俳優の斎藤工、渡辺真起子が応える形で始めたキャンペーン。厳しい状況に晒されている各地のミニシアターを助けるために、映画の撮影と同じように、俳優たちが集合と解散を繰り返しながらアイデアを出し合い、映画館を応援して行こう、というもの。
今回、その両者がコラボし、岩波ホールで7月23日(木・祝)と8月2日(日)の2日間、オンライントークイベントを開催することになった。題して“わたしとヴァルダと映画館vol.1&vol2”。
7月23日(木・祝)は小泉今日子、渡辺真起子、8月2日(日)には井浦新、斎藤工のオンライン登壇が決定している。

左より小泉今日子、渡辺真起子

左より井浦新、斎藤工

さらに、ヴァルダ好き、ミニシアター好きに呼びかけ、スケジュールが合う俳優が加わる可能性も。各日、前半は上映中の『落穂拾い』を中心にアニエス・ヴァルダ監督について思い思いに語ってもらい、後半は岩波ホール岩波律子支配人が場内から参加し、50年以上の歴史を誇る岩波ホールについて、ミニシアターについて、俳優たちとトークを繰り広げる予定だ。

本来、満席で220名が入場できる岩波ホールは、現在ソーシャルディスタンスを守っての60席限定。“ミニシアターパーク”は、空け ている席をオンラインでトークを視聴するバーチャルな観客に有料で販売し場内を満席にする、という試みを行っており、今回も160名限定でチケット(1,000円)を販売する。詳細は、ザジフィルムズ公式https://note.com/zaziefilms/n/n980ce97b4968にて。

7/18(土)より、岩波ホールにて 3週間限定公開!