2020年中国の武漢市から始まった新型コロナウィルスの感染者への広がりはわずかな時間で拡散し、現在もなお猛威を振るう。世界同時多発に起きた「死へのエピローグ」はグローバリゼーションの時代、起こるべきして起きた事件は人類史の見えない敵、「ウィルス(virus)との戦い」とも言えるだろう。

 矢成光生の絵画はカタストロフィ(catastrophe)をテーマに東日本大震災で起きた放射性物質の脅威や自然現象の脅威、そしてイデオロギーとの対立による様々な地域紛争、こうした拮抗する世界を都市の景観とともに描かれている。その手法は室町時代後期に成立し、江戸時代まで続いて制作された風俗画の一種である、洛中洛外図の屏風絵のように俯瞰的な視点から描かれている。画面全体に覆われた黄色の雲(cloud)が世界各地の都市を覆って、私たちは目に見える世界と目に見えない世界に立ち、世界が存在していることを示唆する。

 矢成光生の絵画は今世界で起きている新型コロナウィルスの脅威を描いているわけではないが、連日報道されている新型コロナウィルスの脅威が、世界同時多発に起きている「死へのエピローグ」のようにも思える。あたかも矢成が描く金雲が新型コロナウィルスとイメージが重なり、世界がパンデミック(感染症)の脅威となっていく様に見えてしまう。絵画の表面は漆(カシュー)と油彩を混ぜ合わせることで起きる現象、ひび割れが、放射能やウィルスのように見え、人がコントロールすることができない、予測不可能な危機と見てとれる。

現在、(4/3)新型コロナウィルスの感染拡大にともない大阪や東京といった大都市では都市への移動自粛規制が行われている中で、自宅からネットを通じて矢成光生の絵画を見てもらえたらさらに矢成光生の絵画はリアリティーを持って見ることができるだろう。

城核003(NIMBY)

カシュ-、油彩、パネル 97×194cm 2019 

城核005 

アクリル、カシュ-、油彩、ベニヤ板 60×75.2cm 2018

Jerusalem(エルサレム) 

カシュ-、油彩、パネル(2点組) 19×66.6cm 2018 

Cube-002(トランプタワー)

カシュ-、油彩、綿布、パネル 24.8×33.9cm 2019

雨傘と涙(香港)

カシュ-、油彩、パネル 14×24cm 2020 

矢成 光生 展

2020年3月30日(月)-4月11日(土)
4月5日(日)休廊 11:00-19:00 最終日17:00

ギャラリーQ
東京都中央区銀座1-14-12楠本第17ビル3F
Tel.03-3535-2524
http://www.galleryq.info