1977年から40年以上にわたり、国内外に自主映画を紹介してきた、「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」。そのPFFが、新たなる映画賞「大島渚賞」を創設しました。

大島渚賞とは
大島渚賞は、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若くて新しい才能に対して贈られる賞です。対象は、劇場公開作品を持つ監督です。かつて、大島渚監督が高い志を持って世界に挑戦していったように、それに続く次世代の監督を、期待と称賛を込めて顕彰します。

先日すでに「シネフィル」でご紹介した「第1回大島渚賞」は、審査員長である坂本龍一氏(音楽家)、審査員の黒沢 清氏(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)の討議により、ハンガリーの巨匠タル・ベーラの愛弟子で、独自の映画言語で『鉱ARAGANE』、『セノーテ』など、次々に新たな作品を生み出している小田 香(おだ・かおり/32歳)監督に決定しました。
そして、3月19日(木)に、丸ビルホールにて執り行われた授賞式が開催されました。

小田香監督映画『セノーテ』場面写真
(C)Oda Kaori

■日時3月19日(木)
■会場:丸ビルホール
■登壇者 受賞監督・小田香、審査員長・坂本龍一(音楽家)、審査員・黒沢清(映画監督)、小山明子(女優、大島渚監督夫人)、矢内 廣(一般社団法人PFF 理事長、ぴあ㈱代表取締役社長)

以下、審査員、受賞者のコメントとなります。

●審査員長・坂本龍一氏(音楽家)コメント
大島渚賞なるすばらしい賞の審査委員長を僕のようなものが務めていいものかと、いまだに思ってますが、拝命しましたので、真摯に選びました。
大島渚という映画人は、常に国家や権力、あるいは歴史、国境というものに翻弄されてきた人々についていつも描いてきた。あるいは常識というものに立ち向かってきた。
そのすばらしい監督の名を冠した賞にふさわしい人はだれか。いまの日本で考えると小田香さんしかいないと私は思いました。
それから大島渚さんは、社会の常識に常に抗ってきた、映画人であり思想家であったと僕は思っている。(小田監督の)新作『セノーテ』は、マヤ文明の洞窟湖に潜って撮影している。みなさんご存知だと思うのですがマヤ文明は500年ぐらい前にヨーロッパの侵略者によって壊滅させられ、いまは末裔が細々と生きている。そのことについて(『セノーテ』は)直接的に表現してませんが、そのマヤのひとたちの苦渋の500年の苦難の声が(画面から)じわっと伝わってくる。これは完全に大島渚さんの思想と通底していると僕は感動しています。
大島渚賞はこれから世界へはばたく映画人を選出する主旨なのですが、小田香さんはすでに世界に羽ばたいていまして、もう日本という狭い場所でじたばたしていない。
前作の『鉱 ARAGANE』もすばらしいのですが、『セノーテ』はその数十倍もすばらしいので、みなさんに観てほしい。

審査員長・坂本龍一氏

●大島 渚監督夫人・小山明子(女優)コメント
第1回の大島渚賞に小田香さんというすばらしい女性が選ばれて、大島はさぞかし満足して、すごく喜んでいると思います。
わたくしもなにか記念品を差し上げたくて、大島が懐中時計を愛用していたので、(それにちなんで)こちらで一生懸命選びまして、お名前を彫らせていただいて、お贈りしたいと思います。第1回にふさわしい作品だと思います。ほんとうにおめでとうございました。

大島 渚監督夫人・小山明子さん

●審査員・黒沢 清氏(映画監督)コメント
小田さんの作品を初めて拝見させていただきまして、なるほどなと思いました。当初から、大島渚の名のつく賞にふさわしい監督は、いまの日本の若い人たちから見い出すことは大変困難な作業だろうと思っていました。誰にあげればいいのか、戸惑いながら、審査員を引き受けたんですけど、小田さんの作品に出合うことができまして、これ以外にはないと思いました。
大変、重たい賞ではありますけど、さらにすばらしい作品を作っていただければと思います。

審査員・黒沢 清氏

●受賞者・小田 香監督コメント
第1回大島渚賞をいただき、大変光栄に思います。大島渚賞に関わるすべてのみなさまに感謝いたします。
去年の春、縁があって、瀬戸内にある(国立療養所)長島愛生園にいく機会がありました。納骨堂や歴史館などに足を運んだんですが、そこで明石海人さんの歌集を手にしました。
大島渚さんの座右の銘であり墓石に刻まれた『深海に生きる魚族のように、自らが燃えなければ、何処にも光はない』の一節を含むものです。

国の愚かな政策、ライ予防法で、ハンセン病の方々は、50年近く(ここで)隔離されました。名前を奪われ、熱にうなされて、神経をおかされ、目に光を失いながら、彼らは自らの命を燃やして歌を詠み、絵筆をもち、音楽を奏でていたことを学びました。

限られた時間の中で、どうしようもない不条理の中で、生きている人間が、それでも光を見い出そうと、己を燃やして表現をする。生きるために表現せざるえない。これから自分が映画とともに生きていくために、困難に立ち向かわないといけないことが多々あると思います。そのときは、大島さんの座右の銘であったり、たしかに生きた人々のことであったり、その瞬間瞬間を思い出したいです。人生をかけて、いま自分は生きて表現できているのかを常に問いかけ、映画の道を歩んでいく所存です。今日はありがとうございました。

第1回大島渚賞 受賞者・小田 香監督

主催者代表 矢内 廣氏(一般社団法人PFF 理事長、ぴあ㈱代表取締役社長)

小田 香監督の恩師である、巨匠タル・ベーラ監督よりお祝いのメッセージが届きました。

タル・ベーラ監督からのメッセージ

来賓の皆様
そして香に

まず何よりお祝いを伝えたいのです。そして実はあなたをとても誇りに思っている、と打ち明けましょう。
あなたに出会う幸運に恵まれたこと、それは私の人生のひとつの贈り物でした。
映画をつくることとは何か、それをあなたはよくわかっていました。
映画とは、ただ物語を語るのではなく、生きることについて考え続けることであり、体験をほかの人たちとわかちあっていくことなのだと、あなたは知っていました。それもとても優しいやり方で。
人々の表情、人間らしさをとらえ、自然を敬愛し、そして未来を信じる。
今までも、これからも変わらずあなたは続けるでしょう。

香、あなたがこれまでつくってきた映画に、あなたの誠実さと強さに、心から感謝したいと思います。
そして、ゴー・アヘッド! わが道を行きなさい。

ビッグハグを送ります。
ータル・ベーラ