第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督最新作『読まれなかった小説』が、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか絶賛上映中!

膨大な台詞と豊かな映像により描き出される
「父と息子の軋轢と邂逅」

シナンの夢は作家になること。大学を卒業し、トロイ遺跡近くの故郷へ戻り、処女小説を出版しようと奔走するが、誰にも相手にされない。シナンの父イドリスは引退間際の教師。競馬好きな父とシナンは相容れない。気が進まぬままに教員試験を受けるシナン。父と同じ教師になって、この小さな町で平凡に生きるなんて……。父子の気持ちは交わらぬように見えた。しかし、ふたりを繋いだのは意外にも誰も読まなかったシナンの書いた小説だった――。

【本編映像】は、文学ファンは絶対必見!
チェーホフ、ドストエフスキーの名作に捧げられたオマージュをあなたはいくつ見つけられるか?

★随所に散りばめられた偉大な作家たちの肖像写真
今回解禁された本編映像は、主人公シナンが書店で地元の著名な作家スレイマンと議論をするシーン。その背景にガルシア=マルケス、フランツ・カフカ、ヴァージニア・ウルフら世界の作家の肖像が飾られている。これらはジェイラン監督が撮影場所としてこの書店を見つけた際にすでに飾られていたもの。

©2018 Zeyno Film, Memento Films Production, RFF International, 2006 Production, Detail Film,Sisters and Brother Mitevski, FilmiVast, Chimney, NBC Film

また、シナンの部屋のクローゼットには、アルベール・カミュとエミール・シオランの写真が飾られている。

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★実際に開催された「文学と農村風景」シンポジウム
シナンとスレイマンの会話のなかで、「文学と農村風景」というシンポジウムへひとりの作家が参加を断ったことについて、シナンはスレイマンに意見を求める。実はこのシンポジウムは実際に開催され、くだんの作家は欠席の理由を明らかにしている。

★ガルシア=マルケス『百年の孤独』と蟻
『読まれなかった小説』劇中で、父イドリスが赤ん坊時代に畑仕事の間に籠に入れられ放って置かれた、という話を祖父が語り、まるで死んでいるかのように眠る赤ん坊の顔に蟻がたかっているショットが差し込まれる。このシーンから喚起されるのは、ガブリエル・ガルシア=マルケス著『百年の孤独』のラストでブエンディア一族の末裔の赤ん坊の死体が、予言通り蟻に運ばれていく光景。
劇中では、蟻をモチーフにしたシーンが他にもある。縄を吊った木の下で死体のように横たわっていたイドリスをシナンが確かめに行くと、実際には眠っていたことがわかるが、その顔には蟻がたかっている。この蟻がたかるという発想とガルシア=マルケスの肖像の組み合わせにジェイラン監督の意図を感じずにはいられない。

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★チェーホフ『三人姉妹』の名セリフと母アスマン
『読まれなかった小説』劇中でシナンと母アスマンがイドリスについて語り合うシーンで、アスマンが突如、会話を断ち切るように、「雪が降っている」と言うシーンがあるが、これはアントン・チェーホフ著『三人姉妹』第二幕のマーシャ、ヴェルシーニン、トゥーゼンバフの会話を想起させる。生きている意味を問うマーシャに対して、トゥーゼンバフが「意味ですか……。いま雪が降っています。どんな意味がありますか?」と問い返すシーンは、チェーホフの作品のなかでも有名なセリフだ。

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ジェイラン監督は影響を受けた人物について、「自分が影響を受けたのは、映画ではなく文学。特にチェーホフは私の映画制作に最も大きな影響を与え、私に人生の見方を教えてくれました。彼のすべての小説を何度も読んだほどです」と語っていることからも、その可能性は大いにありそうだ。

★ドストエフスキー『罪と罰』のマルメラードフと父イドリス
フョードル・ドストエフスキー著『罪と罰』に登場する男マルメラードフは、主人公ラスコーリニコフが親密な関係になる娼婦ソーニャの父。給料を飲み代に使ってしまう悪癖のために一家を不幸に陥れるダメ男だが、かの有名な酒場での長広舌「マルメラードフの告白」は、『罪と罰』全体の主題を貫く。
『読まれなかった小説』のイドリスもまた、競馬に給料をつぎ込み、借金を笑って誤魔化す男だが、貧困に喘ぎながらも誇り高いイドリスの態度には、マルメラードフに通じるものがあるのではないだろうか。

参考:『読まれなかった小説』パンフレット内 野谷文昭さん(東京大学名誉教授)寄稿「蟻と再生」

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様々な作品へのオマージュが込められた本作。
他にも文学ファンの心をくすぐるオマージュが随所に隠されているかも?
ぜひ劇場で探してみてください。

『読まれなかった小説』【本編映像】

【本編映像】文学ファンは絶対必見!チェーホフ、ドストエフスキーなど数々の名作に捧げられたオマージュをあなたはいくつ見つけられるか?

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監督・編集:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン(『雪の轍』)
撮影監督:ギョクハン・ティリヤキ  
脚本:アキン・アクス、エブル・ジェイラン、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン

音楽:ミルザ・タヒロヴィッチ
挿入曲:J.S.バッハ「パッサカリア ハ短調BWV582」(編曲:レオポルド・ストコフスキー)

出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル、ムラト・ジェムジル、ベンヌ・ユルドゥルムラー、ハザール・エルグチュルほか

2018/トルコ=フランス=ドイツ=ブルガリア=マケドニア=ボスニア=スウェーデン=カタール/189分/英題:The Wild Pear Tree/原題:Ahlat Ağaci
配給:ビターズ・エンド

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新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか絶賛上映中!