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日本・カザフスタン合作映画『オルジャスの白い馬』が、2020年1月18日(土)に新宿シネマカリテほか全国順次公開となります。

主演を務めるのは、若手実力派俳優である森山未來と、『アイカ(原題)』で2018年カンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞に輝いたサマル・イェスリャーモワ。アジアを代表する若手国際派俳優ふたりによるダブル主演となる。
森山にとって初の海外主演作となる本作で、全編カザフ語で演じ乗馬もこなす熱演を披露、愛する人に真実を語れない不器用な男を演じている。監督・脚本は、竹葉リサ監督とカザフスタン人のエルラン・ヌルムハンベトフ監督が共同で担当した。

カザフ語で“強い男”の意味である“カイラット”にちなんだ名前であるカイラート親子による普遍的な父と子のドラマと、それを包み込むカザフの果てしない空と大地や光を美しく捉えた圧倒的な映像美はこの作品の見どころの一つ。カザフスタンの大草原を舞台に、突然父を亡くしてしまった少年オルジャスと、その前に突然現れた不器用だが正義感の強い男カイラートとのふれあいを描くヒューマンドラマだ。

現在開催中の第32回東京国際映画祭において特別招待作品として出品され、10月30日に本作が日本初上映されたのに合わせて、原案に加えてカザフ側のキャストやスタッフを取りまとめたエルラン・ヌルムハンベトフ監督が来日。竹葉監督ともに映画上映後にQ&Aに臨みました。
ジャパンプレミアとなったこの上映チケットは完売となり、監督に活発な質問が向けられる中、両監督から日本とカザフスタンという異なる視点から興味深い回答が次々と飛び出しました。
つきましては、詳細をレポートにてご報告いたします。

【第32回東京国際映画祭 特別招待作品 『オルジャスの白い馬』】Q&A 概要
【日時】10月30日(水)22:00~22:30(映画上映後)
【場所】TOHOシネマズ 六本木 SCREEN1
【登壇】竹葉リサ監督、エルラン・ヌルムハンベトフ監督

ふたりによる共同監督である本作における役割分担について、竹葉監督は「最初は、エルランがカザフ人出演者のディレクション、私は日本人出演者つまり森山さんのディレクションということになってましたが、撮影期間がとてもタイトで現場が想像以上に混とんとしていました。そこで私はコンテュニティに意識することに集中しました。エルランはもともと役者でもあり俳優とのコミュニケーションにとても長けていて、最終的にはそういう分担に変わっていきました」と説明。
ヌルムハンベトフ監督は、「ひとことで説明するのは難しいですが、いい映画を作るために必要なことに一緒に取り組んだだけなんです」とはにかみながらつけ加える。

少年オルジャスが見る夢とも幻想ともとれる印象的なラストシーンについては、竹葉監督は「子供ならではの鋭い感性を観客の方に追体験してほしいとエルランと話し合い、脚本を開発していく中で着地したものです」と説明。

ヌルムハンベトフ監督は、「私はアンドリュー・ワイエス(アメリカン・リアリズムの代表的画家)にとても影響を受けているんです。彼の代表作である「クリスティーナの世界」で、女の人が何を見ているのか分からないような、そこにあるのは将来の夢なのか幸福なのか、現実なのか…。観客にゆだねるという言い方が正しいんだと思いますが、ワイエスの作品のように色んなものが交錯する中で、何がそこにあるのかを追い求めたかったんです」と語る。

劇中、オルジャスが度々窓から外の様子を見たり、繰り返し夢を見るという行為に象徴される演出は“大人の世界への憧れ”なのかという質問に対して、ヌルムハンベトフ監督は、「個別の場面それぞれに単独の意味があるわけではありません。それだけではなく映画全体の、その他の自然や馬といった色んなものをトータルに捉えて、オルジャス少年が見ているひとつの情景として感じてもらえたらと思っています。この映画を観た100人から100人違う感想が出てくる映画になってくれればいいなと思っています」と細部について監督自身が解釈を語るべきではないというスタンスを明かす。

森山を起用した理由について、竹葉監督は、「実の父であるカイラートがオルジャスにとっての“闖入者(ちんにゅうしゃ)”として戻ってくるという違和感を持たせるために、あえてカザフスタン人ではない俳優に演じさせてみてはいいのではないかという理由がありました。森山さんぐらい一流の俳優であればカザフスタン人を演じられるし、これまで難易度の高い役を何度も演じてきているので、外国人というチャレンジングな役にぜひ挑戦してほしかったんです」と語る。

ヌルムハンベトフ監督は、森山という異国の俳優との協業について、「現代は、世界中の距離だけでなく人の距離も縮まってきている時代です。カザフスタン人達の中にひとり森山さんが入ってくることは、異質であるかもしれないけど、彼という存在が時間や距離を超越し、思ってもみなかった新しいものをもたらしてくれるのではないかと期待していました。彼がこの映画で表現したかったこと、できなかったかもしれないものも含めてです」と語った。

カザフスタン人の出演者達について、竹葉監督は「カザフスタンの俳優は、大学院などで“スタニスラフスキー・システム”(ロシア独自の演技理論)を学んできた一流中の一流の方ばかりです。カザフの撮影現場ではカメラマンが決めるカットやアングルが一番優先で、日本では当たり前のカット割りや導線などを確認する段取りもなく、役者はその都度対応することが求められます。私がこの現場で感じたのは、日本で俳優が求められることよりもカザフの役者が監督から求められる要求度が圧倒的に高いということです」と驚きをもって振り返る。

ヌルムハンベトフ監督は、「この映画にとって俳優はもちろんですが、大きな役割をもって出てもらっているのは実は大自然でした。それに動物だったり物語だったりが加わっていきます。その大自然という役者に、人間という役者さんがどう合わせてくれるのかという観点でキャスティングをしました。カザフスタンという大きな国の大自然の中で生きている人たちを撮りたかったので、その自然と調和できるかどうかが重要でした」と回答。ユニークな回答ながら、圧倒的な大自然の中で人々の暮らしや生き様が見事に溶け込んでいる本作の魅力の理由を語った。

森山未來が初の海外作品の主演に挑んだ
『オルジャスの白い馬』予告

森山未來が初の海外作品の主演に挑んだ『オルジャスの白い馬』予告

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【STORY】
少年の心に吹き込んだ、疾風のような出会い。
夏の牧草地、草の匂いが混じった乾いた風、馬のいななく声。広大な空に抱かれた草原の小さな家に、少年オルジャスは家族とともに住んでいる。ある日、馬飼いの父親が、市場に行ったきり戻らない。雷鳴が轟く夕刻に警察が母を呼び出す。不穏な空気とともに一家の日常は急展開を迎える。時を同じくして、一人の男が家を訪ねてくる…。

2019/日本・カザフスタン/カザフ語・ロシア語/81分/カラー/DCP/Dolby SRD(5.1ch)/シネスコ/英題:Horse Thieves

監督・脚本:竹葉リサ、エルラン・ヌルムハンベトフ

プロデューサー:市山尚三、木ノ内輝、キム・ユリア 
撮影監督:アジズ・ジャンバキエフ 
音楽:アクマラル・ジカエバ 
編集:ヌルスルタン・ヌスカベコフ、リク・ケイアン 
音響:アンドレイ・ヴラズネフ 
美術:サーシャ・ゲイ

出演:森山未來、サマル・イェスリャーモワ、マディ・メナイダロフ、ドゥリガ・アクモルダ

配給:エイベックス・ピクチャーズ 
配給協力・宣伝:プレイタイム
©『オルジャスの白い馬』製作委員会

2020年1月18日(土)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー