現在、ロングランヒット中の映画『新聞記者』の終戦記念日直前トークイベントが8月8日に丸の内ピカデリーで行われ、石田純一さん(俳優)、前川喜平さん(元文部科学事務次官・現代教育行政研究会代表)、高橋純子さん(朝日新聞 論説委員)、河村光庸(本作プロデューサーの)ら、この激動の時代に高い識者を持つ方々が登壇、「報道メディアのあり方」について語り合いました。
また、この日は客席にはジャーナリストの伊藤詩織さんの姿もあり、サプライズ登壇するひと幕もありました。

『新聞記者』終戦記念日直前トークイベント概要
■日時:8月8日(木)
■場所: 丸の内ピカデリー スクリーン1
■登壇者:
石田純一(俳優)
前川喜平(元文部科学省事務次官・現代教育研究所所長)
河村光庸(本作プロデューサー)
高橋純子(朝日新聞論説委員)※コーディネーター
■特別ゲスト:伊藤詩織(ジャーナリスト)

 6月28日(金)より全国 143 館で公開され、各地で満席が続出する大ヒットスタートを切った本作は、公開6週目を迎え、動員40万人、興収5億円弱(8月8日時点)と興収5億円間近。
そのロングランヒットを記念して、終戦記念日直前トークイベントを8月8日(木)に実施いたしました。ステージに立った石田さんは「ちょうど今でも表現の自由とか、それに対する圧力とかが話題になっている中ですが、よくぞこの映画を作ってくださいました。本当によく出来ている映画だなと思いました」とあいさつ。

石田純一(俳優)

 さらに「日本は政治のことをあまり語らない風土があります。特に芸能人は政治のことを語らなくていい、芸能人は芸能のことだけやっていればいい、という同調圧力があります。だから僕は東京では干されがちなんですよ」と自虐的に語った石田さん。
映画の宣伝の過程でも、テレビでの紹介がなされなかったり、広告出稿を断られたりと、苦戦を強いられましたが、逆にツイッターやSNSなどで映画の応援団が形成されたという経緯があった、ということを踏まえ、「僕が大阪でレギュラー出演している映画番組の中で、この作品の紹介をしようと思ったことがありました。その時は、参議院選挙の直前という時期でしたが、自分のクビをかけても、番組の存続をかけてもこの映画を紹介したいと思いました。さいわいスタッフもやりましょうと言っていただいて、紹介することができたんですが、おかげさまでいい反響をいただきました」と笑顔をみせました。

 続く前川さんも「2年半前に官僚を辞めてから、100%の表現の自由をいただきまして、どこに行っても言いたいことを言わせてもらっています。それまでは38年間、国家公務員だったので、言いたいことはなかなか言えなかった。この映画はフィクションを通じてリアルに迫る。今、われわれが置かれている状況がどういうところにあるのか分からせてくれる映画となっています」と続けました。

前川喜平(元文部科学省事務次官・現代教育研究所所長)

 さらに河村プロデューサーが「この映画は、新聞記者の望月衣塑子さんの本を原案にしていますが、実はもうひとつ。伊藤詩織さんの勇気ある姿に感銘を受けて、日本の政治状況を映画にしたいと思ったということもあります」と明かすと、サプライズゲストとして伊藤さんをステージに招き入れました。

本作の劇中では、伊藤さんが被害を受けた事件をほうふつとさせるようなエピソードが登場するということもあり、本作原作者・望月さんから映画のチケットを渡されたそうですが、「でも最初は観る勇気がなかったんです。わたしのことがどこまで描かれているのか、わたしの悪夢がフラッシュバックしてしまうんじゃないか。どういう気持ちで観にいけばいいのか悩んでしまって。でも、わたしも報道、ジャーナリズムをやっている人間として、こういったことを伝える人間として観たいと思ったので、渋谷に観に行きました」。

伊藤詩織(ジャーナリスト)

 劇場で本作を鑑賞した伊藤さんは、「画面に映る後藤さゆりさんはわたしだなと思って。そういえばこんなことも言われたなとか、いろいろなことを思い返しました。この日の劇場は満席だったんですが、いったいここにいる何人の人が(劇中の)後藤さゆりさんが体験したについて知っていて。どこまでフィクション、もしくはノンフィクションだと思って観てくれているのかなと。すごく不思議な気持ちになって。見終わった後も動けずにボーッとしていたんです。そうしたら出口で女性の方から『(伊藤)詩織さんですか。わたしたちのために声をあげてくれてありがとう』と声をかけていただいて。そこで緊張していた、不思議な気持ちでいたいろいろなものがほぐれて、涙が出てきました。ここにいる人は知っていたんだと。やはり日本のメディアでは、わたしが体験したことについてなかなか話すことが出来なかったんですが、それがこの映画で、フィクションという形で描かれているのを観て、いろいろな気持ちになりました。やはり観ている人には伝わっていたんだなというのがすごくうれしくて。こういったものごとの伝え方、可能性が日本でもあるんだと思いました」と語りました。

 また、この日、司会を務めた朝日新聞 論説委員の高橋さんは「安倍一強体制の中で、望月記者が孤軍奮闘していて、彼女を孤立させないことは大事。ただ、望月さん以外の記者は何をやっているんだ、という状況も分断状況を生んでいて。やはりジャーナリズムというものは、個々の記者の頑張りだけではなく、世論の支えも必要なんです。どれだけ正論を吐こうが、政府に都合の悪いことをいうと『お前らは反日だろう』という抗議が押し寄せる中、それでも奮起して、頑張るためには皆さんに支えてもらわなければなりません。現場では望月さんのほかにも戦っている記者はたくさんいます。個々の記者の戦い方は、望月さんの戦い方とは違うかもしれないけど、そういうことも知っていただき、支えていただけたら」と呼びかけるひと幕もありました。

高橋純子(朝日新聞論説委員)

 その他、ジャーナリズムの役割、戦争とメディアの関係など、トークのテーマは多岐にわたり、集まったお客さまもその話に熱心に耳を傾けていました。
そして最後に「実はいいニュースがあります」と語った河村プロデューサーが「大手芸能プロダクションのトップの方からわたし宛に電話があり、『よくぞこの映画を作ってくれた』とおっしゃってくれました。そしてもう一社、こちらも大手プロダクションの代表者からも電話があり、『よくぞこの映画を作ってくれた』とおっしゃっていただいた。そしてもうひとつ。韓国での公開を行います。日本人と韓国人の文化交流のためということもあります。詳しくはまたべつのところで発表しますが、いいニュースだと思うので、ここでお伝えします」と発表しました。

河村光庸(『新聞記者』プロデューサー)

『新聞記者』予告

シム・ウンギョ×松坂桃李が挑む、これまでの日本映画を覆す衝撃作『新聞記者』予告

youtu.be

[STORY]
東都新聞記者・吉岡(シム・ウンギョン)のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原(松坂桃李)は葛藤していた。
「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。愛する妻の出産が迫ったある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。
真実に迫ろうともがく若き新聞記者。「闇」の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる !

出演:シム・ウンギョン 松坂桃李

本田翼 岡山天音/西田尚美 高橋和也/北村有起哉 田中哲司

監督:藤井道人
脚本:詩森ろば 高石明彦 藤井道人
音楽:岩代太郎

原案:望月衣塑子「新聞記者」(角川新書刊)河村光庸
配給:スターサンズ イオンエンターテイメント

©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

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